チャコリワインという、スペインのバスク地方で生産されている地元のワインを知っていますか?天然の微炭酸でとても美味なワインですよ。
スペイン北西部を旅行していて、大西洋に面した海岸にそびえ立つ石灰岩の崖が見えてきたら、バスク地方にたどり着いた合図。
海沿いにあるおかげで、バスク地方は暑くて乾燥しているスペインの他の地域よりも涼しく、雨も多くて緑豊かです。
さらに、急な丘陵地帯には、水はけを良くするためにテラス状に作られたぶどう園があり、そこではまた、地元の人たちが誇るチャコリワインが製造されています。
このチャコリワインを試したことはありますか?
チャコリワインはバスク地方原産の地元ワインで、世界的に凄く有名という訳ではありませんが、知る人ぞ知る非常に味わい深いワインなんです。
また、バスク地方では漁業が盛んですが、そこで出される新鮮な魚介類の料理や、美味しい魚のシチューと一緒に、このチャコリワインを楽しむのは最高です。
チャコリワインについて気になってきたところで、早速チャコリワインについて詳しく見ていきましょう。
チャコリワインとは?
チャコリ(Txakoli)またはチャコリナ(Txakolina)と呼ばれるこのワインは、ピレネー山脈両麓、大西洋に面し、スペインとフランスの国境線に沿った自治州であるバスク地方で作られているワイン。
バスク地方には、独自の言語や文化を持ち、自分たちはスペイン人でもフランス人でもなく「バスクという民族国家」であると考えてい人々が多くて有名ですが、そんなバスク特有のアイデンティティと一緒に、このチャコリがバスク固有のワインとして古くからこの地域で製造されています。
チャコリワインは非常に飲みやすいワインです。
ドライの辛口ワインで、酸味とミネラル分が高い一方、アルコール度数は低め(9.5-12%)で、微発泡なのが特徴。
そのため、長期間眠らせてから楽しむようなワインではなく、若くて新鮮なうちに飲む(ボトル詰めしてから1年以内)ものです。
また、2メートルほどの高さからグラスに注ぎ、ワインを空気に触れさせ、泡をリリースするのが、伝統的なチャコリのボトルからの出し方。
初めてチャコリを飲む人にはびっくりする方法かも知れません。
チャコリの歴史
チャコリは元々、この地方のワイン生産農家が自家製ワインとして作ってきました。
しかし、交通の便が良くなり他の地域からワインが入手されやすくなった結果、バスク地方のブドウ畑の多くは牧草地へ代わります。
また、当時作られていた赤チャコリワインのためのブドウが、害虫により絶滅の危機に瀕することになります。
このような状況の下、19世紀半ばには一度、チャコリ消滅の危機に直面することになってしまうのです。
それに対して、生産農家の一部がチャコリを残そうと努力し、チャコリの原料となる固有種のブドウを1980年代に復活させ、1989年にはスペイン政府からDO(原産地呼称)認定を受けたことでステータスを獲得。
品質も向上していくと同時に生産地も広がっていくようになりました。
ただし、当時はまだチャコリワインをバスク地方以外で見かけることはありませんでしたが、スペインを訪れたアメリカ人ソムリエ達の間で徐々に評判になっていきます。
その結果、チャコリは生産地以外でも知られるようになり、その人気に答えるためにもチャコリワインは今日、白、赤、ロゼなど様々なスタイルで生産されており、様々なワインリストに載っています。
現在のチャコリワインを作る際に使われているブドウには、2種類の地元固有種が主に使われています。
その2種類とは、軽くてストラス系の白ブドウであるオンダラビ・ズリ(Hondarrabi Zuri )と、皮の色が濃くて酸味の多い赤ブドウである、オンダラビ ・ベルツァ(Hondarrabi Zerratia)。
一方で、オンダラビー・ゼラティーア(Hondarrabi Zerratia)という種類のブドウも、ブレンド目的で比較的良く利用されます。
チャコリの生産地域
チャコリの主な生産地域は、急な斜面にビスケー湾からの潮風が吹きつけ、雨が多くて湿度が高く、霜が降りる寒さになります。
つまり、ブドウを収穫するためには、こまめに世話をしなければならない場所なんです。
ブドウ畑は南東向きの斜面にあり、太陽の光を最大限に吸収しつつ腐敗の原因となる湿気を最小限に抑えるために、トレリス(植物をからませる格子状の細工や垣)で株を持ち上げて栽培します。
また海の近くが最良とされるのは、ブドウの木を乾燥させるために潮風が重要な役割を果たすから。
この風によって気流が生じ、高品質なチャコリワインの原料となるブドウができるのです。
ちなみに、チャコリ(Txhakoli)は、バスク語で「ワインの村」という意味。
このチャコリを作る「ワインの村」として、DO(原産地呼称)認定を受けているのは世界でも3つの地域に限られ、そこで生産されているチャコリのみが、厳密には「チャコリ」ワインになります。
人気リゾート地、サンセバスチャンの近くで生産されているゲタリアーコ・チャコリーナ。ギプスコア県にあるゲタリア周辺の小地域は、最も小規模な生産地でありながら、最大の生産量を誇ります。
そして、ビーズカイコ・チャコリーナは、ビスカヤ県にあるフランク・ゲーリーが設計したグッゲンハイム美術館があることで有名な、ビルバオに近い村で生産されるチャコリ。
最後に、アラバーコー・チャコリーナ(チャコリ・デ・アラバ)は、アラバ県の北西端にある地域で作られています。
現在では他にも2つ、カンタブリアとブルゴス県でチャコリ生産が行われていますが、まだDO認定は受けていません。
バスク地方の名産チャコリワインに関して知っておきたいこと
バスク地方が誇る地元のワイン「チャコリ」について、基本的な知識を紹介してきましたが、ここからはチャコリに関して興味深い話をいくつか紹介していきます。
バスク人とアメリカ人が主な消費者
チャコリは今でこそ少しずつ世界的な認知も高まってきていますが、未だにチャコリを主に飲むのは地元のバスク人とアメリカ人がほとんど。
バスク人にとっては地元のワインであり、昔から親しまれ、「地方の宝石」とも称えられてきました。
一方で、チャコリの歴史でも触れた通り、アメリカ人のソムリエ達がこのチャコリに魅了されてからというもの、夏になると何千ケースものチャコリワインが米国へ輸出され、多くのアメリカ人に楽しまれています。
サイクルがとにかく早い
「若くして新鮮なうちに飲むワイン」だと先述した通り、チャコリの特徴として、とにかくそのサイクルが非常に早い点が挙げられます。
具体的には、チャコリナのブドウは、冬までに収穫されてワインとしてタンクに入れられ、春になると、若いチャコリワインが各ボトルに詰められて販売開始。
そして、夏までには売り切れてしまいます。
この時までチャコリワインを手に入れたラッキーな人たちは、その後すぐに栓を抜いて飲み干し、次の年のチャコリを楽しみに待つのです。
チャコリは元々赤ワインが多かった
チャコリと言えば現在では白ワインが主になりますが、以前は赤ワインが多く作られていました。
当時は、赤ブドウのオンダラビ ・ベルツァ(Hondarrabi Zerratia)を使用してほとんどのワインを作っていたため、結果として赤ワインが主に生産されていたのです。
ところがヨーロッパの他のブドウと同様、アメリカの船でフランスに渡ったブドウネアブラムシという害虫のせいで、このブドウは一度ほぼ絶滅に近い状況にまで陥ってしまいます(この害虫が同ルートで運ばれなくなったのは、ヨーロッパの多くのブドウ種が絶滅してからのこと)。
その後、生産農家の努力もあり、オンダラビ ・ベルツァは復活することになるのですが、その過程で、バスク自治州政府は、近くのワイン産地であるリオハ(Rioja)との競合を避けるために、白ブドウの栽培を勧めます。
また同時に、この地域は大西洋沿いで寒冷であるため、どちらかと言うと本来は赤ワインではなく白ワインの生産に適している地域です。
というのも、赤ワインを作る赤ブドウに必要な色素を強めたり酸味を強めるには、暖かい太陽の光が必要な一方、白ワインに必要な白ブドウには色素も強い酸味も求められないから。
このような理由から、現在ではチャコリと言えば「白ワイン」が主なワインとして定着することになりました。
3つの生産地で作られたチャコリの特徴
最後に、チャコリの生産地である3つの地域で作られるワインの特徴を、それぞれ簡単に紹介しておきます。
チャコリを試す際の参考にしてみてください。
ゲタリア産チャコリ
大西洋岸の街ゲタリア周辺が最大の生産地で、約20軒の生産農家で作られるチャコリワインは、ライトで少し塩辛くてミネラル分が多く、酸味が強めなのが特徴。
また、花、桃、青リンゴ、滝のアロマ、塩レモンと表現して良さそうなフレーバーがあります。
このチャコリワインがライトなのは、通常、アルコール分が12%以下だから。
そして、発泡性の微炭酸ワインであるのも大きな特徴で、これは、醸造所に運んだブドウが冷暗に保たれ、大抵の場合、極めて低い温度で発酵した結果、二酸化炭素のガスを含むことになるからです。
ビスカヤ産チャコリ
(出典:Bizkaia)
ビスカヤ産チャコリは、比較的重みのあるワイン。
ゲタリア産チャコリと同じ種類のブドウに加えて、コニャック(ブランデーの一種)の原料となる種類のブドウを少し混ぜるのがその違いを生み出しています。
一方、酸味は少し弱くて発泡性があり、芝生、花、柑橘類のアロマが香るといった感じです。
アラバ産チャコリ
(出典:mamia)
アラバ産チャコリには、チャコリ生産に主に用いられるブドウ種に加えて、フランス南西部で栽培されているいくつかのブドウも使われます。
その結果、比較的酸味が強い弱発泡性のワインであるのが特徴。
また、花のアロマと塩水、鉱物、りんご、洋梨、ベリーのフレーバーが含まれているといった感じのフレーバーです。
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チャコリワイン|スペインのバスク地方で生産される地元産ワインのまとめ
バスク地方に行く予定がある人は、チャコリと美味しい地元の料理を楽しむためにも、必ずお腹を空かせておきましょう。
どんなシチュエーションでも、食べたいものが見つかるはずです。
例えば、午後からタパス巡りをしている人で溢れかえるカジュアルなピンチョスバー、地元で釣れた魚を出す海辺のカフェ、創作料理を出すミシュランの星付きレストランなど、とにかくいろいろと揃っています。
特にチャコリワインの代表的な白ワインは、シーフードにぴったりなので、新鮮な魚介類をふんだんに使った料理と合わせるのがおすすめです。
バスク地方へ訪れる際には、ぜひ試してみましょう!
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