イギリス貴族階級の爵位や、それぞれの爵位を持つ人の名前を挙げながら、同国の貴族システムに関しての理解を深めていきましょう。
イギリス(英国)のニュースを追っている人は、その中で「女王」や「王子」にも、「◯◯公爵」や「◯◯侯爵」と言った称号を耳にすることがあるはずです。
イギリスは貴族階級として知られる人が住んでいる国であり、伝統的なものとして5つの爵位が存在します。
しかしながら、慣れないとどの爵位がどれほどの位を持っており、どういった家柄を反映しているのかさっぱり分からず、また、使い方も混乱してしまうなど、イギリスの貴族階級の爵位システムは少し複雑。
そこで、この記事ではイギリスの貴族階級に存在する爵位について、具体的な人名を挙げながら解説していこうと思います。
イギリス貴族階級にはどんな称号や爵位があるのか?実際の人物の名前も参考例として見ていこう!
イギリスの貴族階級爵位①「公爵」・「公爵夫人」
公爵(こうしゃく:Duke)または公爵夫人(こうしゃくふじん:Duchess)は、英国における5つの貴族階級の中で最も地位の高い階級または爵位。
伝統的には、君主(王や女王)の息子たちが成人すると与えられる爵位でしたが、最近では、結婚するときに与えられるのが一般的です。
例えば、ウィリアム王子がキャサリン妃(当時はキャサリン・エリザベス・”ケイト”・ミドルトン)と結婚したとき、2人にはそれぞれ「ケンブリッジ公爵」、「ケンブリッジ公爵夫人」の爵位が与えられました。
また、ハリー王子がメーガン妃(旧名:レイチェル・メーガン・マークル)と結婚した結果、二人はにはそれぞれ「サセックス公爵」と「サセックス公爵夫人」の爵位が与えられています。
一方で、結婚によって公爵または公爵夫人の爵位が与えられるのはあくまでも最近のトレンドのようなものであり、エリザベス女王の裁量によっては、チャールズ皇太子が王位を継承するまで、ウィリアム王子とヘンリー王子に爵位を与えないことも出来ました。
この爵位を持つ人の名前の例
- ケンブリッジ公爵ウィリアム王子
- ケンブリッジ公爵夫人キャサリン
- サセックス公爵ヘンリー王子
- サセックス公爵夫人メーガン
- ヨーク公爵アンドルー王子
- ヨーク公爵夫人セーラ
イギリスの貴族階級爵位②「侯爵」または「侯爵夫人」
英国の貴族階級の中で2番目に高い地位を有する侯爵(こうしゃく:Marguess)または侯爵夫人(こうしゃくふじん:Marchioness)は、ウェールズやスコットランド、または国境地域で貴族の爵位を有する者たちのために作られたもの。
イギリスでは男爵、伯爵、公爵の次に創設された爵位です。
ちなみに、2017年に日本でも人気となったイギリスのテレビドラマ「ダウントン・アビー」に出てきた三姉妹の次女「イーディス・クローリー」は、侯爵夫人と呼ばれていたことを覚えている人もいるかもしれません。
イーディスは侯爵の称号を持つ男性(親戚から爵位を継いだ)と結婚し、父親からグランサム伯爵夫人の爵位を受け継いだ姉のメアリーよりも、最終的には高い地位を獲得しました。
この爵位を持つ人の名前の例
- ウィンチェスター侯爵ナイジェル・ジョージ・ポーレット
- ソールズベリー侯爵ロバート・マイケル・ジェームズ・ガスコイン=セシル
- レディング侯爵サイモン・チャールズ・ヘンリー・ルーファス・アイザックス
イギリスの貴族階級爵位③「伯爵」または「伯爵夫人」
伯爵(はくしゃく:Earl)または伯爵夫人(はくしゃくふじん:Countess)は、イギリスの貴族階級爵位としては3番目にあたるもの。
生まれた時からの爵位か、父親から受け継いだ爵位かのどちらかで、伯爵の称号を持つ男性と結婚した女性には、伯爵夫人の称号が与えられます。
最も有名な伯爵は、女王の一番下の子供でありウェセックス伯爵の爵位を持つエドワード王子で、彼の妻であるソフィーにも、結婚する際にウェセックス伯爵夫人の爵位が与えられています。
ちなみにエドワード王子はテューダー王家(1485年から1603年のイングランド王国およびアイルランド王国の王朝)以来、結婚時に下位の爵位を継承した初めての王子ですが、ウェセックス伯爵は11世紀のハロルド2世以降途絶えていたため、この決断をした女王は好意的に受け止められているようです。
ただし、エドワード王子の父であるエディンバラ公爵フィリップ王配が亡くなった場合、そのエディンバラ公爵の爵位を継承することが予定されています。
この爵位を持つ人の名前の例
- ウェセックス伯爵エドワード王子
- ウェセックス伯爵夫人ソフィー
- ストックトン伯爵アレクサンダー・マクミラン
- ストックトン伯爵夫人ブリジット
- スノードン伯爵デイヴィッド・アームストロング=ジョーンズ
- スノードン伯爵夫人セレナ・アームストロング=ジョーンズ
イギリスの貴族階級爵位④「子爵」または「子爵夫人」
イギリスの貴族階級爵位のうち、4番目の位であるのが子爵(ししゃく:Viscount)または子爵夫人(ししゃくふじん:Viscountess)で、5つの爵位の中では最も最後に設立されたもの。
この爵位は基本的に、伯爵の子供である場合が多いですが、それとは関係なく与えられることもあります。
例えば、ウェセックス伯爵エドワード王子の長男は現在、子爵の爵位を継いでおり、セヴァーン子爵ジェームズと呼ばれます(※イギリスでは一つの爵位だけでなく伯爵と子爵を持っているなど、複数の爵位を持っている場合があり、セヴァーン子爵ジェームズは父が持つ子爵の爵位を継いでいる)。
一方で、長女のルイーズは爵位を継承しませんでした。
これは、当時のイギリスの特許状(君主、大統領等の国家元首が個人や法人に対して、任務や権限、専売、称号、あるいは地位を授けるために、証書の形で発行する法的手段の一つ)では、長男が爵位を継承するとあったためです。
ただし、この特許状の内容は現在、長女であっても爵位を継承すると変更されています。
この爵位を持つ人の名前の例
- セヴァーン子爵ジェームズ
- ディルホーン子爵ジョン・マニンガム=ブラー
- ブルックバラ子爵アラン・ヘンリー・ブルック
イギリスの貴族階級爵位⑤「男爵」または「男爵夫人」
男爵(だんしゃく:Baron)または男爵夫人(だんしゃくふじん:Baroness)は、英国の貴族階級の中で5番目、つまり最下位の階級で、他のどの爵位よりも所持している人の数が多いです。
国王の領地を管理している人間は、しばしばこの爵位を持った貴族である場合があり、この爵位は通常、世襲されて受け継がれていきます。
また、イギリス王室の中にも、他の爵位と一緒に男爵の爵位を有するものがいます。
例えばチャールズ皇太子は、コーンウォール公爵、ロスシー公爵、チェスター伯爵の爵位と同時に、レンフルー男爵称号を持ち、また、ウィリアム王子はキャリックファーガス男爵の称号を持っています。
この爵位を持つ人の名前の例
- キャリックファーガス男爵ウィリアム
- レンフルー男爵チャールズ
- キリーリー男爵アンドリュー
- オークランド男爵ロバート・イアン・バーナード・イーデン
- アムトヒル男爵デイヴィッド・ホイットニー・アースキン・ラッセル
- ラグラン男爵ジェフリー・サマセット
イギリス貴族階級における「一代貴族」と「卿」の称号そして「王」の立ち位置と役割
イギリスの貴族階級として存在する5つの爵位以外に、次の3つのことを知っておくとさらに理解が深まります。
一代貴族
一代貴族(いちだいきぞく:life pper)は個人に付与された名誉であり、世襲することはできないもの。
一代限りではあるものの貴族のステータスを得ることになり、主に社会で活躍したイギリス人に対して与えられることが一般的です。
また、一代貴族法で制定されており、与えられる爵位は全て男爵または男爵夫人となります。
ちなみに、一代貴族と言っても男爵であることには変わりがなく、男爵の爵位を継承した世襲貴族とは同格です。
現在、この爵位を新しく受ける者は首相によって女王に提案され、新年の叙勲者一覧や、女王の誕生日の叙勲者一覧などで発表されます。
この爵位を持つ人の名前の例
- エルトン・ジョン
- ヘレン・ミレン
- イアン・マッケラン
- デボラ・ブル
- ロバート・メア
- ディー・ドオシー
「卿」または「卿夫人」
男爵、子爵、伯爵、侯爵、つまり、5つの貴族階級爵位のう侯爵を除いた爵位を持つ人へは、卿(きょう:Lord)または卿夫人(きょうふじん:Lady)をつけて呼ぶことが出来ます。
ただし、姓名にではなく、あくまでも爵位名に卿(Lord)を付けて呼ぶのが習わしです。
例えば、初代ウィンチェスター侯爵であるウィリアム・ポーレット(William Paulet)を例に挙げると、
- ウィンチェスター卿(Lord Winchester) → ◯
- ポーレット卿(Lord Paulet) → ×
となります。
イギリスの貴族階級における王または王女の立場
王(King)または王女(Queen)は、貴族階級の者よりも上位に位置する存在で、イギリスにおいては貴族へ爵位を承認して付与する全ての権限を持っています。
そして、イギリス貴族の枠組みの上に存在する王位の継承には、
- ステュアート家の血を引いている者(ハノーファー選帝侯妃ゾフィーの子孫)に限る。
- 継承者は国王の直系子孫。2011年10月28日以降に生まれた者は、性別を問わずに長子先継(第一子→第一子の子孫→第二子→第二子の子孫→……の順)。2011年10月27日以前生まれの者については改正前の男子優先が適用される。
- プロテスタント信仰であること。王位継承後イングランド国教会・スコットランド国教会に帰属すること。
- カトリック信徒、カトリックに転向した者は継承権を喪失する。
- 非嫡出子は継承権が与えられない。
(引用:wikipedia)
の条件が定められており、現在継承順位1位はチャールズ皇太子であり、2位以下は次のような順番になっています。
- ウィリアム王子
- ジョージ王子(ウィリアム王子の息子)
- シャーロト王女(ウィリアム王子の娘)
- ルイ王子(ウィリアム王子の息子)
- ヘンリー王子(ウィリアム王子の弟)
- アンドルー王子(チャールズ皇太子の弟)
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イギリス貴族階級の爵位と名前|称号を有する人々とは一体?のまとめ
伝統的に5つの階級が存在するイギリスの貴族階級を、実際に爵位を有する人々の名前と共に見てきました。
少し複雑なイギリス貴族階級の仕組みを理解するためにも参考にしてください。