ツバル|「観光情報」から温暖化により沈むツバルの「難民状況」まで

ツバルに関して、観光情報から温暖化によって引き起こされている難民問題までをまとめていきます。太平洋に浮かぶツバルについて知りたいなら参考にしてください。

オセアニア地域に属し、太平洋に浮かぶ「ツバル」という国を知っていますか?

いくつかの島が集まって出来た群島国家の一つで、非常に国土が狭いため「ミニ国家」の一つにも数えられます。

そして、あまり有名ではないものの観光地としても知られる一方、近年では、温暖化による海面上昇によって「沈む国」と言われ、ツバルから離れる難民問題などにも注目が集まっています。

この記事では、そのツバルについて、基本的な概要から観光目的で訪れるなら知っておきたい豆知識、そして最後に、ツバル難民に関するいくつかのポイントまでを紹介していこうと思います。

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ツバルとは?

以前は「エリス諸島」と呼ばれていた「ツバル(Tuvalu)」は、太平洋の中西部にあるオセアニア地域に属する国。

9つの小さなサンゴ島から成り、国土の総面積は26㎢北西から南東へ約676㎞の距離にかけて点在しています

以前はギルバート諸島と呼ばれたキリバス共和国と共に、ツバルは「ギルバートおよびエリス諸島」として、1978年にそれぞれが独立するまでイギリスの植民地であった歴史を持ち、現在でもツバルは、イギリス連邦加盟(注1)の加盟国で、イギリス国王を国家元首とする英連邦王国(注2)所属しています。

そして、ツバルの首都はフナフティと呼ばれる総面積およそ2.4㎢の島で、そこには同国唯一の国際空港「フナウティ国際空港」やホテルが集中し、中でも「バイアク」と呼ばれる村(集落)には行政機関が集中するため、ツバルの首都は「バイアク」であると言われることもあります。

ちなみに、国土26㎢の中におよそ1万人ほどの人口しか抱えないツバルは、バチカンの次に人口が少ない独立国であり、ミニ国家の一つでもあるのです。

  • (注釈1)イギリス連邦は、かつてのイギリス帝国(大英帝国)がその前身となって発足し、主にイギリスとその植民地であった独立の主権国家から成る、緩やかな国家連合
  • (注釈2)英連邦王国(えいれんぽうおうこく)は、イギリス連邦の加盟国であって、グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国(英国、イギリス)の王座にある者を自国の国王として戴く主権国家

ツバルの国土

ツバルの島々には、環状に形成されるサンゴ礁である「環礁」と、沿岸がサンゴ礁で形成されている「」の両方がそれぞれ以下のように存在します。

  • 環礁
    • ヌイ環礁
    • ヌクフェタウ環礁
    • ヌクラエラエ環礁
    • フナフティ島
    • ナヌメア島
    • ナヌマンガ島
    • ニウタオ島
    • ニウラキタ島
    • ヴァイツプ島

そして、ツバルの地理的特徴の一つが、これらのほとんどが海抜4~5mの低地にあるという点。

そのため、近年の温暖化による海面上昇によって、ツバル難民問題(※詳しくは後述)が起こっているのです。

また、ツバルには河川が無いため、真水を得るには雨水を貯めるか、井戸を掘るしかありません。

さらに、日中の気温は27~29℃の間と温暖ですが、行える農業は限られており、育つのはココヤシ、パンノキ、パンダーヌス、タロイモ、バナナなど。

それに加えて、ブタやニワトリが飼育され、海鳥、魚、貝などが捕獲されますが、必要な食料の一部は海外からの輸入に頼っています。

ツバル人について

ツバルに住む「ツバル人」は、人種的にはポリネシア人と呼ばれる人々が大半。

彼らはポリネシア語派に含まれるツバル語(同じ言語グループに含まれるサモア語と似通っていると言われる)を話し、また、過去にイギリスの植民地だったこともあり、英語も公用語として広く使われています。

ただし、ツバルを構成する環礁の一つ「ヌイ」には、かつてのギルバート諸島(現在のキリバス)からミクロネシア人が先史時代に住み着いたため、この地域だけはミクロネシア人が住民の大半を占めます。

そして、ツバルの国民の大多数がツバル教会(かつてのエリス島プロテスタント教会)に所属しているキリスト教徒です。

ツバル人の生活

このようなツバルの国民は、現在でこそ生活スタイルがある程度欧米化されて言えるでしょう

しかし、それでも多くの国民は数百人程度の規模の村に住み、菜園の手入れをしながら手製のカヌーで魚を釣る昔ながらの生活を送っています。

また、政府によって初等教育が提供され、ツバル教会との協同で一部の生徒に対しては中等教育を実施。

その中でも特に優秀な生徒に関しては、さらに高等教育や上級の訓練を受けるために海外へ派遣されることもあります。

一方で、医療機関はフナフティ島に集約されていますが、その他の島々にも医療スタッフが派遣されており、診療所に駐在しながら現地の人々の診察などにあたっています。

ツバルの歴史

ツバルへ人類が到達して住み始めたのは、今からおよそ3000年前の紀元前のことで、近隣サモアなどの西ポリネシア地域からカヌーでやってきたと考えられています。

16世紀になるとヨーロッパ人がこの島を発見。スペイン人の探検家「アルバロ・デ・メンダーニャ・デ・ネイラ」によってでした。

しかし確実にヨーロッパの海図に記載されるのは、捕鯨船や商船が行き来するようになる1820年代以降のことで、1860年前後になると、労働力を求めてきた者達によって主にヌクラエラエ島とフナフティ島から、およそ400人余りの人々がペルーやハワイなどへ強制連行されるなどし、この地域の人口は急激に減少しました

そして、ヨーロッパの帝国主義が拡大していくと、ツバルは「ギルバートおよびエリス諸島」の一部を構成する「エリス諸島」と呼ばれ、1892年にイギリスの保護下に入り、1916年には「ギルバート・エリス」と呼ばれてイギリスの植民地となりました

それから少し時が経過した1960年以降、人種間での緊張の高まりと雇用に関する不公平感が、ミクロネシア人が多数派を占めるギルバート諸島と、ポリネシア人が多数派を占めるエリス諸島の間に生じるようになります。

その結果、エリス諸島の住民は1974年の国民投票により分離を要求し、ツバルという名の分離植民地へ移行することになり、1978年には主権国家として独立しました

ちなみに、ツバルという国名は、元々、人が住んでいた「8つ(valu)の島で立ち上がる(tu)」という意味が由来となっているとされています(最も小さいニウラキタ島は、人が住んでいない無人島だった)

ツバルへ観光目的で訪れたいなら事前に知っておきたい8つのこと

ツバルは太平洋に浮かぶ小さな群島国家で、実際に現地を訪れた人もそこまで多くないでしょう。

しかし、実は非常に美しい海に囲まれた国であり、主要な産業の一つが観光業であるなど、観光地としても知られる国だったりします。

そこでここからは、ツバルへ観光目的で行ってみたいと考えている人にとって、事前に知っておくと良さそうな8つのことを紹介していきたいと思います。

ツバル観光情報1:ツバルは観光客がほとんど訪れない国

主要産業が観光業であるツバル、実は、毎年およそ2000人程度しか観光客が訪れない、最も観光客が少ない国の一つだったりするんです。

そのため、観光に必要なインフラは基本的に整っていないと考えておくのがベター。

観光インフォメーションセンターやツアーガイド、そして他の国では一般的な「観光客向けのアクティビティ」などは無いと考えておいた方が良いでしょう。

ツバル観光情報2:ネット環境も期待しない方が◯

宿泊先によっては、プリペイドのインターネットカードを購入することが出来ますが、だからと言って、確実にネットを使える保証はありません。

また、ネットに繋がったとしてもそのスピードは遅いことが大半なので、インターネット利用については期待しない方が良いでしょう。

基本的には、ネットが使えない環境でリラックスするのを前提に訪れた方が良いかと思います。

ツバル観光情報3:お土産専門店もほとんどないので注意

訪れる観光客が少ないツバルには、お土産専門店というのはほとんどありません。

もしも現地の物をお土産として購入したいなら、Women’s Handicraft Centre(ウィメンズハンディクラフトセンター)と呼ばれる場所で、地元の手工芸品を購入するのが良さそうです。

(出典:pinterest

このお店は、飛行機のフライトがある日に開かれる、空港近くにあるお店で、織物の扇子、貝のネックレス、バヌアツ特製のカゴなどが売られています。

また、キリスト教徒が多いバヌアツでは日曜日が教会の礼拝の日にあたり、お土産専門店以外のお店であってもほとんどは閉店しているので、その点もお忘れなく。

ツバル観光情報4:現金を忘れずに

ツバル共和国の現地通貨は、紙幣はオーストラリアドルで、硬貨はエリザベス女王2世と海の生物(カメ、タコ、トビウオ)が刻まれた、オーストラリアドルと等価で発行された独自の硬貨

そして同国にはATMが無く、クレジットカードやキャッシュカードは使用できないため、ホテルやゲストハウスなどで支払うためにも、必ず現金を十分に用意しておくのが鉄則です。

ちなみに、ツバルは小規模のコミュニティで出来た国とも言え、犯罪はほとんどなく治安も良いですが、現金を持ち歩く旅行者という立場上、スリや置き引きなどは注意した方が良いでしょう。

ツバル観光情報5:首都フナフティの散策にはバイクがおすすめ

ツバルへ訪れる場合は必ず首都のフナフティに降り立つことになるはずですが、もしもこの島を周りたいなら、バイクのレンタルがおすすめ。

1日10ドル程度で借りられ、島を自由に周ることが出来ます。

ちなみに、ツバルでバイクを運転している現地住民は大抵、ヘルメットを被っていませんが、非常にゆっくりとしたスピードで走り、交通量がとても少ないので、その点では安全だと言えます(とは言え、十分に注意してください)

また、フナフティから他の島へ行く場合は、旅客フェリーでアクセスすることになります。

ツバル観光情報6:熱中症には注意

ツバルでは、1年を通じて天気にそれほど変化がありません。

いつも暑くて湿度が高い「高温多湿」な国なため、熱中症には注意が必要です。

涼しくて緩めの服装、つばの広い帽子を持参するなどし、また昼間は涼しいところで休憩して、体に熱がこもらないように気をつけましょう。

ツバル観光情報7:ローカルな食事は試しておくべき

ツバルに来たら、ここでしか食べられない地元のローカルフードを試しておくべき。

新鮮な魚、フライドチキン、様々な調理法で作られたココナッツ、パパイヤ、豚肉、タロイモなどを非常にシンプルに料理した食事を楽しめます。

もちろん、それらが「絶品」であるとは言い難いかもしれませんが、他の国ではあまりお目に掛かることはない食事となるはずです。

ちなみに、ツバルの人々と食事をするときは、床に座って手で食べるようにしてください。

ツバル観光情報8:気楽に話してOK!

ツバル人は大抵、コミュニケーションを取るのが大好き。

そして、英語が公用語なので、英語で話かければ気さくに返事を返してくれます。

ただし、

  • talofa(こんにちは)
  • fafetai(ありがとう)
  • fetaui(またね

といった、ベーシックなツバル語の単語を覚えておいた方が、現地の人に歓迎されるはずです。

温暖化によって沈む国とも言われるツバルの難民について

ツバルは小さな島が集まった非常に美しい国である一方、その海抜が4~5mしかないということから、海面上昇に対して脆弱で、近年の温暖化で引き起こされている海面上昇によって、「沈む国」と危惧されています。

そして同時に、ツバル国民の中には環境難民として国を離れ、オーストラリアとニュージーランドに受け入れられてきた人々もいます。

ここからは最後に、沈む国ツバルの温暖化問題と、それによって引き起こされるツバル難民に関する5つの話を簡単に紹介しておきたいと思います。

1mの海面上昇でも深刻な被害を与える

海抜が非常に低いツバルの中でも人口が集中するエリアは、海面が1m上昇しただけでも深刻な被害が生じる可能性があると言われます。

例えば、海面上昇はツバルにある地下水や土壌を汚染して農業に悪影響を与え、食料危機やそれに伴う栄養不足を引き起こす可能性が指摘されています。

完全に沈む可能性も懸念されている

現在の温暖化がこのまま進んだ場合、ツバルは今から30年から50年の間に完全に沈んでしまうかもしれないと言われています。

そして、このツバルの状況は同じような他の国にも当てはまり、今世紀末には複数の国家が消えてなくなる可能性が懸念されているのです。

一部は環境難民として避難したものの生活は大変

すでにツバル人口の5分の1は、元々住んでいた土地から国内のより肥沃で安全な土地へ移ったり、近くのニュージーランドなどに避難し始めています

例えばニュージーランドでは、ツバル人コミュニティの規模が1996年から現在まで、およそ3倍近くになっているとされます。

しかし、合法的に避難したとは言え、国外へ移住したツバル国民の多くは、安定した雇用を得られておらず、生活は困難だと言われます。

より大規模な自然災害が起こった場合には悲惨な結果になる可能性もある

温暖化による海面上昇によって、すでに危機的状況を迎え始めているツバルはまた、万が一、より大きな自然災害(例:ハリケーンなど)に襲われた場合、復旧不可能な被害を被る可能性があります。

ツバルには輸出できる天然資源もほとんどなく、その経済は漁業と観光業、そして、政府の財源としては切手やコインの発行に頼っています。

そのため、大規模な自然災害が起こると主要な産業である漁業や観光業は壊滅的になり、また、切手やコインの発行は、復興の助けになるようなものではないのです。

ツバル政府は過去に新しい土地の購入も検討したが・・・

そこまで大きくない人口規模を抱えるツバルの政府は、1億ドルの準備金を使って、国民のために新しい故郷となる土地の購入を検討したことがあります。

しかし、法的ならびに政治的な障害により、この計画は脅かされています。

具体的に、新しい土地を購入してそこへ国民を移住させることは、

  • ツバルの国家としての主権の維持
  • 漁業権の維持
  • 大きな財政支出を行った後でも、必要な公共サービスを提供し続けられるどうか など

国家としての体制を維持できるかどうかに関して、不明な点が多いのです。

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ツバル|「観光情報」から温暖化によって沈むツバルの「難民状況」のまとめ

オセアニア地域に浮かぶ島国「ツバル」について見てきました。

小さな国「ツバル」は、観光地として知られる一方、近年は環境難民の問題で注目されています。

今後、ツバルはより真剣に国民の移住などを検討していく必要性に迫られることになると言えますが、一つのお手本としては、隣国のキリバスが行っているプログラムを見本にすると良いかもしれません。

それは、国民がいずれ避難しなければならなくなった場合に「人的資本」として外国に迎え入れてもらえるよう、高度な技術を持つ労働者として教育、そして訓練しておくというものです。

世界のことって面白いよね!By 世界雑学ノート!

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