先進国と発展途上国の違いを見ていきます。国際開発や国際情勢の分野で大切な言葉について、その定義やそれぞれを比較した場合の違いを確認していきましょう。
世界には200近い国々があり、これらの国々はその発展度合いによって、大きくいくつかに分類されますが、その分類を表す最も一般的な言葉が「先進国」と「発展途上国」でしょう。
では、この先進国と発展途上国はそれぞれどのような定義を持ち、また、この2つを比較した場合の違いはどのようなものなのでしょうか?
この記事では、国際開発、国際協力、そして国際情勢といった分野で大切になってくる「先進国」と「発展途上国」の違いを知るためにも、それぞれを定義することから始め、比較していきたいと思います。
また、より詳しく理解していくために、OECDと世界銀行による両者の基準についても触れていきます。
先進国と発展途上国それぞれの定義
それではまず最初に、先進国と発展途上国それぞれの定義を確認することから始めていきましょう。
先進国とは?
先進国とは基本的に、経済そして産業が発展した国のこと。
何をもって先進国というかについては必ずしも定説があるわけではありませんが、先進国とは発展途上国に対して用いらる言葉で、簡単に言うならば、
経済や産業や文化の面において比較的進歩した国
(引用:国際政治経済辞典, p.439)
を指していると考えれば良いでしょう。
ただし、経済産業面の発展と文化面の発展が常に同じように達成されるわけではない点は注意が必要。
経済産業面の発達は世界レベルであるのに文化社会面が比較的未熟な国を区別したい場合は、先進国の代わりに「先進工業国」や「経済先進国」を用いると分かりやすいでしょう。
また先進国は通常、人間開発指数(HDI:各国を人間開発の側面から順位付ける統計指標)で比較的に順位が高くなり、
生活水準 | 国内総生産(GDP) | 児童福祉 |
医療 | 交通機関 | 通信設備 |
教育制度 | 住宅供給 | 生活環境 |
産業化 | インフラ整備 | 技術開発 |
平均寿命 | 一人あたりの所得 |
などの水準が高い国々とされています。
そして先進国の例としては、
アメリカ | 日本 | オーストラリア |
カナダ | フランス | ドイツ |
イタリア | スペイン | ノルウェー |
スウェーデン | デンマーク | スイス |
などが挙げられます。
発展途上国とは?
発展途上国とは、経済や産業の発展途上にあり、人口1人あたりの所得の低い国々。
先進国とよばれる豊かな国に比べて、経済や社会の開発、とりわけ工業化と貧困の克服が差し迫った課題となっている国
(引用:国際政治経済辞典, p.626)
と言うのが、発展途上国という言葉の定義で、かつては先進国に対する形で「後進国」と呼ばれることもありましたが、現在では「低開発国」や開発途上国」と呼ばれるのが一般的です。
産業の開発・発展面では、先進国に頼っている状態にあり、人間開発指数(HDI)による順位は低く、
安全かつ健全とはほど遠い生活環境 | 返済見込みのない国の多額の負債 |
所得分配の不均等 | 高い死亡率そして出生率 |
母子双方の栄養失調による高い乳児死亡率 | 高い失業率そして貧困率 |
といった特徴に加えて、
国内総生産(GDP) | 識字率 | 教育制度水準 |
交通機関 | 通信設備 | 医療 |
生活水準 | 一人あたりの所得 |
などは低い水準にあります。
そして、発展途上国の大多数は、アジア、アフリカ、そしてラテンアメリカ地域に位置しており、過去の歴史の中で植民地または従属国として先進工業国の支配を受けた経験を共有しています。
具体的な発展途上国の例としては、
インド | ネパール | ケニア |
ジンバブエ | スリランカ | インドネシア |
ミャンマー | バングラデシュ | コロンビア |
ボリビア | パラグアイ | イエメン |
などが挙げられます。
先進国と発展途上国の違いを比較
先進国と発展途上国の違い一覧表
先進国と発展途上国の定義を元にして、分かりやすく一覧表の形で違いを表すと以下の様になるでしょう。
比較項目 | 先進国 | 発展途上国 |
定義 | 経済と産業が十分に発展して国民一人あたりの所得が高い国 | 経済と産業が発展途上で国民一人あたりの所得が低い国 |
失業率および貧困率 | 低い | 高い |
(乳児)死亡率 | 低い | 高い |
平均寿命 | 長い | 短い |
生活水準 | 高い | 低い |
識字率 | 高い | 低い |
一人あたりの所得 | 高い | 低い |
所得分配 | 比較的均等 | 不均等 |
産業の開発・発展 | 自力で可能 | 先進国に頼っている |
また、先進国と発展途上国の違いとして、以下のようなポイントも挙げることが出来るでしょう。
- 先進国においてはインフラ整備が整い、安全で健全な生活環境となっているのに対して、発展途上国はこのような環境におかれていない
- 先進国では資源が比較的有効かつ効率的に使われている反面、発展途上国では資源が有効的に活用されていない
- 先進国では出生率が低くなってきているのに対して、発展途上国の多くでは出生率が高くなっている
- 先進国の政治では汚職が少ないのに対して、多くの発展途上国の政治では汚職が常習化している
- 開発援助において、先進国は援助する側なのに対して、発展途上国は援助を受ける側である
OECD(経済開発協力機構)による基準
「先進国」と「発展途上国」の定義や違いについては見てきた通り、客観的に測ることが出来る絶対的な基準というものが無いため、その境界線に関しては必ずしも明確でなく、ある意味では感覚的なところがあります。
しかし、経済協力開発機構(OECD)の開発援助委員会(DAC)は、3年ごとに「政府開発援助(ODA)受け取り国リスト(※DACリストとも呼ばれる)」を発表しており、その第1部に掲載されている国は、ODAの受け取り資格を有することから、現在は一つの基準として、
- DACリストに掲載される国= 発展途上国
という判断をされるのが一般的です。
そして、このDACリスト(2018〜2020年までの基準)に掲載されているのは、
- 世界銀行によって「高所得国」以外に分類される国々
- 2016年時点の一人当たり国民所得(GNI)が12,235米ドル以下の国々
- 国連によって後発開発途上国(Least Developed Countries)に分類される国々
- 一人当たり国民所得(GNI)、人的資源指数(HAI)、経済脆弱性指数(EVI)によって判断される
(参照:JETRO)
のどちらかの基準に当てはまる国々だとされます。
一方で、OECDのDACリストに掲載された国を発展途上国と考えるのに対して、OECDは「先進国クラブ」と呼ばれていることから、OECDに加盟している国(現在35ヵ国)を先進国と呼びそうになりますが、加盟国の中には国際的に先進国として扱われない国も含まれています。
これについてはOECDも、
現在、OECD加盟36カ国は南北アメリカから欧州、アジア・太平洋地域にまで広がっています。その多くは先進国ですが、メキシコやチリ、トルコといった新興国も加盟しています。
(引用:OECD)
という声明を発表しています。
世界銀行による発展途上国の分類
また、中低所得の国々へ開発資金を融資して、該当国の開発を促す役目を負う国際機関「世界銀行」は、発展途上国を以下の様に分類しています。
- 上位中所得国
- GNIが3,996米ドルから12,235米ドルまでの国
- 下位中所得国
- GNIが1,006米ドルから3,955米ドルまでの国
- 低所得国
- GNIが1,005米ドル(約11万円)以下の国
(参照:JETRO)
※GNIとは一人当たり国民所得のこと
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先進国と発展途上国の違いを定義・一覧表・ポイントに分けて解説!のまとめ
先進国と発展途上国の定義や違いから、国際機関による基準についてまで見てきました。
それぞれについては絶対的な定義がなく、また基準も曖昧な点はありますが、国民一人あたりの所得、国の産業化とそれに伴う技術の発展、生活環境、インフラ設備などの点で、先進国は高い水準があるのに対して、発展途上国は低い水準に置かれているという違いがあります。
一方で、OECDや世界銀行は独自の基準を設け、特に発展途上国の定義を明確にしています。
先進国と発展途上国の定義や違いは、国際開発や国際情勢の分野ではとても重要になってくるので、頭に入れておくようにしましょう。