ベンガル人とは?インド北部からバングラデシュを中心に暮らす民族

ベンガル人とはどういった人々なのでしょうか?北部インドやバングラデシュなどを中心に、一大勢力とも言える人口規模を抱えるベンガル人について見ていきます。

方言を含むと800種類以上の言語が話されていると言われるインドは、多くの異なる民族が暮らす多民族国家として知られます。

そして、いくつかあるインドの主要民族の1つがベンガル人と呼ばれる人々で、北部インドやその周辺地域を中心に、世界中に数億に上るベンガル人が暮らしています。

この記事では、そのベンガル人について、基本的な知識から有名人までを紹介していきます。

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ベンガル人とは?

ベンガル人とは、南アジアの「ベンガル地方(注)」と呼ばれる、インド北西部の一部の州とバングラデシュが含まれる地域における主要な民族集団。

インド・ヨーロッパ語族のインド・アーリア語派に属するベンガル語を話し、その話者数は2億6500万人近くに上ることから、話者数としては2019年時点で世界7番目に多く、また、民族としてはアラブ人と漢民族に次いで、世界で三番目に多いと推定されています(※ベンガル語の話し言葉は地域によって異なる)

ただし、ベンガル人はベンガル地方にやってきた様々な民族が、何世紀にも渡って混じり合って形成されてきたと考えられているため、その背景にはとても多様性があります。

具体的には、ベンガル地方に初めて定住したのはトラヴィダ系の民族、チベット・ビルマ語派の民族、そしてオーストロアジア語族系の民族で、続いてインド・アーリア系の人々が侵入し、その後、8世紀にはアラブ人やテュルク系民族が侵入。

次第に人々が混じり合って現在のベンガル人になっていったというものです。

(注釈)ベンガル地方とはガンジス川とブラマプトラ川の下流にあるデルタ一帯を占め、インドの西ベンガル州とバングラデシュが含まれる、南アジア北東部の地域のこと。

ベンガル人が信仰する宗教

ベンガル人のコミュニティの多くでは、イスラム教が信仰されています。

例えば、国民の98%がベンガル人となる「ベンガルの国」を意味するバングラデシュでは、全体の約90%がイスラム教徒(ムスリム)です(ただし、インドに暮らすベンガル人コミュニティではヒンドゥー教がより信仰されている)

そして、ベンガル人の間で次に信仰されているのが、インドにおける主要な宗教であるヒンドゥー教で、その次に仏教やキリスト教などが続きます。

ベンガル人が最も多く住む国々

バングラデシュ

バングラデシュはかつて、東ベンガルと呼ばれる英領インドの一部であり、インドから分離独立してからは一時期、東パキスタン(1947〜1971)と呼ばれた、「ベンガル人の国」を意味する南アジアの国です。

バングラデシュはベンガル人の人口比率が世界一高く、バングラデシュの人口約1億6000万人のうち、98%以上がベンガル人です。

インド

インドのベンガル人人口はバングラデシュに続いて世界第2位です。

インドに住む1億人弱のベンガル人の多くは、西ベンガル州とトリプラ州に暮らし、西ベンガル州では住民の90%弱にあたる約8000万人がベンガル語話者。

また、トリプラ州(約250万人)以外にも、アッサム州(約900万人)やジャールカンド州(約300万人)などは、ベンガル人が比較的多く暮らすインドの州となっており、インドに暮らすベンガル人の多くはヒンドゥー教徒であるという特徴を持ちます。

パキスタン

パキスタンは世界3番目のベンガル人人口を抱える国で、約200万人のベンガル人が暮らします。

そのほとんどは1971年以降にバングラデシュから移民した人々で、パキスタンのベンガル人の大多数はカラチに暮らし、200以上のベンガル人コミュニティのうち130以上がカラチにあります。

また、そのほとんどはパキスタンの公用語であるウルドゥー語話者です。

世界中に離散したベンガル人

ベンガル人は上記の国以外にも、世界各国に離散していきました。

その結果、多くの国でベンガル人コミュニティの存在が確認されており、例えば日本にも1万人を超えるベンガル人が暮らしています。

ベンガル人人口が多い国としては、上述した国以外にも以下の国が挙げられます。

  • サウジアラビア(約130万)
  • アラブ首長国連邦(約110万)
  • イギリス(約45万)
  • カタール(約28万)
  • アメリカ(約25万)
  • マレーシア(約22万)
  • クウェート(約20万)
  • イタリア(約13.5万)
  • シンガポール(約10万)

ちなみに、ミャンマーにおいて不法移民とされ、迫害を受けていることで国際的な注目を集めたイスラム系少数民族のロヒンギャは、ベンガル人に近い人々だとされます。

ベンガル人の有名人

ベンガル人をさらに理解していくためにも、歴史的な有名人から女優や歌手までを含めたベンガル人の有名人を紹介しておきます。

ベンガル人の有名人1:ラーム・モーハン・ローイ

インドのヒンドゥー思想家であり、社会活動家として活躍したラーム・モーハン・ローイ(1772年〜1833年)は、インドにおける最初の近代人と評され、「近代インドの父」として歴史に名を残します。

ヒンドゥー社会における慣行で、寡婦が夫の亡骸とともに焼身自殺をする「サティー」の禁止に大きな貢献をし、彼がもたらした思想は、その後のインドを大いに近代化させていきました。

ベンガル人の有名人2:ジャガディッシュ・チャンドラ・ボース

ジャガディッシュ・チャンドラ・ボース(1858〜1937年)は、インドの物理学者でSF作家として知られる歴史的有名人。

インドの無線科学とSFの父と呼ばれます。

また、物理学者としては鉱石ラジオに使用された、天然の方鉛鉱を使用した鉱石検波器を開発したことでも知られます。

ベンガル人の有名人3:ラビンドラナート・タゴール

インドの西ベンガル州にある国立大学「タゴール国際大学」の設立者であるラビンドラナート・タゴール(1861〜1941年)は、詩人、思想家、作曲家として活躍しました。

中でも1913年にはアジア人で初めてノーベル賞の受賞となるノーベル文学賞を受賞しています。

また、インド国歌の作詞と作曲、バングラデシュ国歌の作詞者としても知られます。

ベンガル人の有名人4:ヴィヴェーカーナンダ

ヴィヴェーカーナンダ(1863〜1902)は、近現代インドにおける有名な宗教家の一人で、ヒンドゥー教の出家者、また、ヨガの指導者やヒンドゥーの教えに基づいたカルマやヨガなどを伝道するラーマクリシュナ・ミッションの創始者。

インドがイギリスの植民地だった時代に、インドの根幹を成すヒンドゥー教の教えを通して、民衆の中の民族的自覚を高めてインドナショナリズム高揚を後押しするなど、後のインド独立へも間接的に強い影響を与えました。

また、西洋の知識を得た当時のインド人知識人による、インドの近代化ならびに伝統復興のためのベンガルルネッサンスを代表する人物として知られ、ヒンドゥー教を救済したと言われることもあります。

ベンガル人の有名人5:スバス・チャンドラ・ボース

インドの独立運動家で、マハトマ・ガンディーも加わっていたことで知られるインド国民会議において、1938年から1939年まで議長を務めたのがベンガル人のスバス・チャンドラ・ボース(1897〜1945)。

インド独立運動においての貢献はインド国内で高く評価されています。

インド独立をその目で確認することなく、1945年に搭乗した飛行機の事故によって全身火傷を負い、最終的には亡くなってしまいました。

ベンガル人の有名人6:イスカンダル・ミルザー

インドの西ベンガル州で1899年に誕生したイスカンダル・ミルザー(1899〜1969年)は、イギリス領インド帝国が独立し英連邦王国自治領(ドミニオン)となった1947年8月15日以降の、パキスタンにおけるイギリス国王の代官である「パキスタン総督」の四代目。

また、1956年、パキスタンは英連邦王国自治領から現在の共和制へ以降したため、パキスタンにおいては初代大統領を務めたことでも有名な人物です。

ただし、歴史家には、パキスタンの民主化と政治的安定を弱めた人物と評価されることがあります。

ベンガル人の有名人7:サタジット・レイ

サタジット・レイ(1921〜1992年)は、インドの映像作家であり映画監督として活躍した有名人。

生涯で37本にも上る映画を作成し、インド国内の賞はもちろんのこと、カンヌ国際映画祭やヴェネツィア国際映画際、ベルリン国際映画祭での受賞など、国際的な賞をいくつも受賞してきたベンガル人で、映画界における巨匠の一人として挙げられます。

また、1991年にはアカデミー賞名誉賞も受賞しました。

ベンガル人の有名人8:ムハマド・ユヌス

バングラデシュ生まれの経済学者であり実業家、そして、貧困層を対象にしたマイクロファイナンスを手がけるグラミン銀行の創始者として有名なベンガル人がムハマド・ユヌス(1940年〜)。

グラミン銀行を中心とした社会活動によって、2006年にはノーベル平和賞を受賞し、ベンガル人を代表する世界的な有名人となりました。

ベンガル人の有名人9:スシミタ・セン

スシミタ・セン(1975年〜)は、インドで女優やモデルとして活躍してきた有名な女性。

また、ベンガル人の歴史上、「美」において最大の栄誉を掴んだ人物で、1994年に開催されたミス・インドに輝いた後、同年に開催されたミスユニバースの本選へ出場し、インド人として、また、ベンガル人として、初めてとなる優勝を果たしました。

映画女優としての活躍も目覚ましく、これまで数々の賞を受賞しています。

ベンガル人の有名人10:モナリ・タークル

西ベンガル州の州都であるコルカタで、ベンガル人音楽家家庭に生まれたモナリ・タークル(1985年〜)は、インドの歌手であり、また、女優としても活躍する女性。

2014年にインドにおけるアカデミー賞と呼ばれるフィルムフェア賞で、最優秀女性プレイバックシンガー賞を受賞しました。

彼女の父や姉も、歌手として活躍していることで知られます。

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ベンガル人とは?インド北部からバングラデシュを中心に暮らす民族のまとめ

ベンガル人について、その基本的知識から有名人までを紹介してきました。

インドやバングラデシュを中心に世界中へ散らばるベンガル人は、歴史的に、そして文化的に、非常に豊かで幅広い背景を持った人々で、これまで多くの有名人も輩出してきました。

世界のことって面白いよね!By 世界雑学ノート!

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