ヒンバ族とは一体どんな民族なのでしょうか?世界一美しいとさえ言われるアフリカの民族について、特徴的なお風呂のことから起源までを見ていきます。
ヒンバ族と言う民族の名前を耳にしたことがあるかもしれません。
日本のテレビ番組「クレイジージャーニー」の中で、世界中の様々な民族を撮影してきた写真家「ヨシダナギ」さんによって紹介されて日本人の中でも有名になった、アフリカに住んでいる民族の一つです。
外見は非常に特徴的で、見た人を魅了する美しさを持っており、一部では「世界一美しい」とも形容されています。
その美しいヒンバ族について、一般的な紹介から、有名なお風呂の話や起源まで、いくつかの興味深い話を紹介していこうと思います。
ヒンバ族とは?
ヒンバ族とは、ナミビア北西部のクネネ州(カオコランドと呼ばれていた場所)に住んでいる土着民族。
およそ5万人の人口を抱え、牛やヤギを育てる牧畜をしながら半遊牧的な生活もしているとされ、ナミビアのなかでは、遊牧生活(半遊牧的な生活ではあるが)を送る人々として最後の民族として知られます(一方で、現在では野生動物の保護や観光客向けの自然保護などの活動もし、生計を立てているようです)。
また、同じようにナミビア北部からアンゴラの南にかけて住んでいるヘレロ族とは元々同じ民族。
(ヘレロの女性)
そのため、大枠ではヘレロと同じ民族とされるものの、現在では文化的な差異が顕著になってきているため、異なった民族として定義しようと試みられたこともあります。
ヒンバ族が「世界一美しい」とも形容される理由
そんなヒンバ族の特徴はなんといっても女性達の外見。
赤く美しい「オーカ」というものを体全体に塗り、そこへ皮の腰巻を巻き、髪には赤土を大量に塗りこむことでドレッドヘアー風に固め、頭の上から足元まで全身が真っ赤に染まっているのが特徴です。
そのような外見が見た人たちを虜にしてきた結果、いつの間にか世界一美しいとして形容されるようになりました。
ちなみに、その全身が赤く染まった外見は、日中だけでなく夜も維持されることになります。
これは、ヒンバ族の女性は一生お風呂に入ることなく、そもそも水で体を洗い流すこともしないといった、非常に独特な習慣を持ち合わせているのがその理由です。
また、女性が体に塗るオーカは、酸化鉄を豊富に含む石を砕いた粉と、牛乳から作ったバターを混ぜたもので、体を保護する上でも効果があるとされます。
美しいヒンバ族に関する興味深い4つの話!
世界一美しいと言われるヒンバ族の簡単な紹介してきましたが、ここからはそのヒンバ族に関する興味深い5つの話を紹介していきます。
ヒンバ族の話① 女性が働き者(女性に労働が偏っている)
まず、ヒンバ族の中では、労働に関して男女の間に大きな隔たりがあると言えます。
労働集約型のキツい仕事に関して、男性以上に女性が行うのが当たり前。
例えば、以下のようなものがヒンバ族の女性が行う仕事の例。
- 重い水を村まで運ぶ
- 火を焚く薪を集める
- 食事を作る
- 家畜のミルクを搾る
- 家族の面倒を見る
一方、ヒンバ族の男性は必要になったときだけ家畜の世話を行ったり、食用の為に家畜を殺したりといった仕事をし、その他は村の男性達と集まり主に政治的なことに勤しんでいるとされます。
つまり、ヒンバ族の女性はヒンバ社会において非常に働き者ってことです。
ちなみに、男性は女性のように肌を赤く染めてはおらず、また、一夫多妻制が認められているため、平均するとおよそ二人の女性と同時に結婚生活を送っているとされています。
ヒンバ族の話② ヒンバ族の起源
ヒンバ族の起源は16世紀初め頃にアンゴラ国境を越え、カオコランド(現在のクネネ州)を新たな居住地としたことに遡ります。
当時はまだヘレロ族(大部分がナミビアに居住する民族で農業、商業、専門職などに従事している)との差異がなかったため、ヒンバという言葉は存在しませんでした。
19世紀後半になると、ナミビアでは牛の大量死に見舞われます。ヘレロ族が所有していた家畜のほとんどが死亡して大変な危機に陥ったのです。
その後、多くの人々は南部へ移動し、生存していくために別の地域の探索を始めた一方、慣れ親しんだ土地に残ってそこでなんとか生存していくことを決めた人々もいたのです。
こうして同じ民族は2つに分裂し、ヒンバとしてのアイデンティティが芽生え、今のような「ヒンバ族」が誕生することになったのです。
ちなみに、ヘレロ語でヒンバという言葉をそのまま訳すと、「物乞い」という意味になるそう。
ヘレロ族からヒンバ族が別れた後、「元々の土地に残った多くのヒンバの人々が仲間や他の種族に助けを求めながら、家畜や穀物を探して広大なカオコランドをうろついていた」から、というのがその理由のようです。
(参照:Culture and the mind)
ヒンバ族の話③ 赤土
ヒンバ族の有名なあの赤土のクリームは、赤石の「ヘマタイト:赤鉄鉱(せきてっこう)」を細かく砕いて作られます。
その後、石を砕いた粉とバターと混ぜ、燻して少し暖めたら皮膚に塗ります。
結果、男性と女性の違いが明確になる上、全身に塗った赤土の層により強烈な日差しから皮膚を守り、肌を清潔に保ち潤いを与えます。
さらにおまけとして、体毛の成長をブロックする働きもあるようです。
ちなみに、女性がこの赤土を体に塗り始めるのは、衛生面を自らケアできる年齢になった頃からだとされています。
ヒンバ族の話④ 一日中ポリッジ作り
ヒンバ族の女性は、ポリッジ(日本で言うお粥のようなもの)を作ることに一日中一生懸命。
毎日朝晩水を火にかけ、お湯が沸くまで待ち、そこに粉(と、おそらく少しの油)を入れたら完成です。
大半はトウモロコシ粉ですが、マハング粉も時々使われています。
マハングとはトウジンビエ(トウモロコシに似た穀物の一種)の別称で、植物が育ちにくい土壌でも強いため、ナミビアでは非常に一般的です。
ヒンバ族は結婚式などの稀な機会に肉を食べることがありますが、これは例外のようです。
ヒンバ族の話⑤ 神の名前はムクル
ヒンバ族は精霊信仰を持つ部族で、彼らの神はムクルと呼ばれます。
聖なる火(聖火)を通して神ムクルの声を聞けると信じており、聖火の煙が天まで昇ることで、その煙を通して神と直接の交信役を担う祖先と交信することができると考えているのです。
ヒンバ族の村ではくすぶる炎を目にしたり、隣にある聖なる石の上に置かれた、火を起こすための薪の束を目にすることになりますが、それはヒンバ族のこうした信仰によるものです。
ヒンバ族と風呂について
ヒンバ族の女性には赤土を塗りたくった肌と共に、お風呂に入らない(体を洗う為に水を使うことさえ許されない)という風習があるのはすでに述べましたが、その理由について考えられていることをいくつか挙げておきましょう。
ヒンバ族が風呂に入らない理由① 厳しい環境
ヒンバ族の女性がお風呂に入ったり、水を使って体を洗い流さない一つの理由に、その地域の環境があります。
ヒンバ族が住んでいる地域は、地球上で最も乾燥した砂漠性気候のため、空気は乾燥しており、水資源も非常に少ないであろうことが分かります。
このような環境が、ヒンバ族の女性がお風呂に入らず、また体を洗うときでさえ水を使わないという独特の風習を作り上げた理由の一つとして考えられるのです。
ヒンバ族が風呂に入らない理由② 昔の大干ばつからの名残り
一方で、水があったとしてもヒンバ族の女性はお風呂に入ったり、体を水で洗い流すことは許されないとされます。
これは昔、大干ばつが起きて水不足が発生した時に、男性のみが風呂や洗濯用に水を使うことが許されていたことがそのまま風習として残ったためと考えられています。
ヒンバ族の女性は お風呂がなくても清潔を保っている
上で説明したような理由から、ヒンバ族の女性はお風呂に入れず、水で体を洗い流すことが禁止されているものの、別な手段を用いることで体の清潔を保っています。
その手段の一つは肌に赤土を塗ることですが、もう一つが「煙浴(煙を浴びる行為)」。
煙浴は体についた寄生虫や害虫の駆除に効果があるとされ、また、体臭を抑える効果も持っています。
しかも、煙を手で仰いで浴びる程度ではなく、以下のやり方で効果の高い煙浴を行っているようです。
- 薬草が入った小さなボウルに火がついた炭を入れる
- 煙が立ち上ってくるのを待つ
その後、
- 体の一部を清潔にする場合
- 対象とする体の部位を煙が昇るボウルの上に持ってくることで熱で汗をかき始める
- 同時に、その部分に対して煙浴効果が得られる
- 全身を清潔にする場合
- 全身を毛布で覆って煙がその中に充満するようにする
- 全身に対して煙浴効果が得られる
ヒンバ族は水を使ったお風呂に入らない代わりに、煙浴を工夫し、全身の清潔を保っているんですね。
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ヒンバ族とは?お風呂のことから起源まで!美しいアフリカの民族についての話。のまとめ
世界一美しいとも言われるヒンバ族について見てきました。
アフリカには、ケニアのマサイ族やコンゴのピグミー族など、祖先から受け継いだ伝統に沿って生活をする民族が多く存在します。
その中でもこのヒンバ族は、独特な外見や風習によってとても魅力的な人々だと思います。
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