ヒスパニックとラティーノの違いを知っていますか?この2つの言葉は同義語的に使われることもありますが、本来は異なる意味を持ちます。
特定の人々を指す言葉には様々なものがありますが、「ヒスパニック」と「ラティーノ」という言葉もまた同様です。
ただ、人種や民族を指す他の言葉と異なり、この2つの言葉は十分に本来の意味が理解されているとは言えず、適切な使われ方がされていなかったり、お互いを混同して同義語的に使われることが良くあります。
この記事では、そんなヒスパニックとラティーノという言葉が持つ本来の意味を理解するためにも、両者の違い、それぞれの意味と語源の確認、そして両者のどちからか一方またはどちらにも該当する有名人の具体例の紹介までをしていこうと思います。
ヒスパニックとラティーノの違いとは?
「ヒスパニック」と「ラティーノ」という2つの言葉は同義語のように扱われることがあり、実際に、多くの人が両者を混同して使ってしまっています。
しかし、この2つの単語は本来、別々の意味を持っています。
その両者の違いを簡単に表せば以下の通りです。
- ヒスパニック
- スペイン語を話す人々もしくはその子孫
- ラティーノ
- ラテンアメリカ出身者もしくはその子孫
ちなみにラテンアメリカとは、中米と呼ばれる北アメリカ大陸のメキシコ以南から、南アメリカ大陸の南端部までを指します。
また、ヒスパニックもラティーノも共に、アメリカに住む人々を指す場合に使われることがほとんです。
ヒスパニックとラティーノの使われ方に関する注意
ただし、最初の方でも触れた通り、この両者は同義語的に使われることが多く、例えばアメリカでは、本来はヒスパニックと分類される人をラティーノと呼んだり、逆にラティーノと呼ばれる人をヒスパニックと呼んだりと、その区別はほとんどされていない現状にあります。
さらに、「ヒスパニック」という単語も「ラティーノ」という単語も、白人、黒人、アジア系というような「人種を指す言葉」として用いられることが多くあります。
しかし、ヒスパニックもラティーノも、対象に含まれる人種には白人、黒人、インディオなど、異なる人種が含まれるため、特定の人種を指す言葉としては的確ではありません。
むしろ、民族性を表す言葉として使われるほうが正しいのですが、それでも多様性がありすぎると言え、人種や民族とは異なる概念を表現する言葉とは異なります。
どちらかと言えば、「ヒスパニック」と「ラティーノ」という言葉は、
- 人々やコミュニティのアイデンティティを表現するもの
として役割を持つと考えるのが適切でしょう。
また行政上の集団を捉える際や法の執行において犯罪や刑罰の調査をする際、さらには学術分野において、社会的、経済的、法的傾向や課題を研究する際にも、ヒスパニックとラティーノという言葉は用いられます。
ヒスパニックとラティーノの意味と語源
この2つの言葉についてさらに理解を深めるためには、それぞれのもつ本来の意味に加え、語源の違いを理解することが役立ってきます。
ヒスパニックの意味と語源
「ヒスパニック」という言葉が本来意味するのは、
- スペイン人
- スペイン語話者
- スペイン語圏出身者の子孫
- スペインの文化
の主に4つに関連することです。
この言葉の語源はラテン語の「Hispanicus」で、ローマ帝国時代にヒスパニア(今日のイベリア半島のスペインに当たる部分)に住む人々を指したとされます。
そして、そこから派生した「ヒスパニック」という言葉は、人々の話す言語、またはその祖先の話していた言語を主に指していたことから、文化的要素を指す言葉となっていきました。
このような背景があるため、「ヒスパニック」という言葉が本来指し示すのは「民族性」、すなわち「共通する文化をもつ集団を表現する言葉に近い」と考えることが出来るのです。
しかし、民族性を示すと言い切ってしまうことは難しいのが実情です。
というのも、現在、ヒスパニックに分類される人々のなかには多種雑多な民族が含まれているため、単一の民族を示す言葉としては対象が広すぎるからです。
例えば、メキシコ、ドミニカ共和国、プエルトリコそれぞれの出身者は、話す言葉と、おそらく信仰以外は、全く異なる文化背景を持っています。
このようなことから、現代においてヒスパニックという言葉は、どちらかと言えば、コミュニティや対象となる人々のアイデンティティを表現する言葉と言うのがより適切となるのです。
ラティーノの意味と語源
言語や民族性に紐づくヒスパニックとは異なり、ラティーノは地理的な分類を起源とする点で大きく異なります。
と言うのも、ラティーノはスペイン語でラテンアメリカ出身者を意味する「latinoamericano」に由来し、この言葉を省略した言い方だからです。
結果として、ヒスパニックと比べるとラティーノはより直接的で明確で、単純に「ラテンアメリカ出身」もしくは「その出身者を祖先に持つ人々」を指すことになるのです。
そして、中南米やカリブ海の出身であれば誰でもがラティーノに分類され、そこにはヒスパニックと同様に、多種雑多な人種が含まれます。
例えば、白人、黒人、ネイティブアメリカン、混血、そしてアジア系の人々などで、ヒスパニックという言葉同様、ラティーノは本来的に人種を指す言葉ではありません。
またこれは、民族に関してもヒスパニックと同じことが言えます。
結果、ラティーノも、コミュニティや対象となる人々のアイデンティティを表現する言葉と言うのがより適切になります。
ヒスパニックとラティーノの有名人厳選8名
ヒスパニックとラティーノの違いを確認してきましたが、ここからはヒスパニックとラティーノ両方または一方に該当する有名人を8名見ていきましょう。
リタ・モレノ(ヒスパニック&ラティーノ)
リタ・モレノは、プエルトリコ出身のヒスパニック系女優で、また、唯一のEGOT(エミー賞、グラミー賞、アカデミー賞、トニー賞)受賞者としても知られる、アメリカで活躍する大女優。
5歳の頃にプエルトリコからアメリカのニューヨークへ移住しました。
カリブ海に浮かぶプエルトリコの出身であるためにスペイン語も話せる彼女は、ヒスパニックにもラティーノにも該当する有名人です。
ジェニファー・ロペス(ヒスパニック&ラティーノ)
日本でも良く名前が知られたハリウッド女優の一人ジェニファー・ロペスは、アメリカで生まれた人物です。
しかし、両親はカリブ海に浮かぶプエルトリコ出身であり、その両親はスペイン語話者であるため、ジェニファー・ロペスはラテンアメリカ出身者の子孫とスペイン語話者の子孫に当たり、ヒスパニックとラティーノに該当すると言えます。
アレクシス・ブレデル(ヒスパニック&ラティーノ)
「ギルモア・ガールズ」のローリー役で知られるアレクシス・ブレデルは、アメリカで女優やファッションモデルとして活躍しています。
最近では、Huluによって制作されたドラマシリーズ「ハンドメイズ・テイル / 侍女の物語」にエミリー役で主演し、過去には女優賞を受賞したこともありました。
そんなアレクシス・ブレデルは、父がアルゼンチン人で母はメキシコ人となるため、ヒスパニックとラティーノ両方に該当します。
ペネロペ・クルス(ヒスパニック)
スペイン出身の大女優として世界的にも名前が知られるペネロペ・クルスは、これまで多くのヒット作品へ出場し、過去にはアカデミー賞助演女優賞を受賞したこともあります。
そして現在は、仕事のために拠点を移してアメリカへ住んでいます。
スペイン語話者であるものの、ラテンアメリカ出身ではないため、ヒスパニックにのみ該当する人物と言えるでしょう。
アドリアナ・リマ(ラティーノ)
世界中の女性モデルが羨むヴィクトリアズ・シークレットのエンジェルであり、その中でも最も価値があるモデルとして賞賛されるアドリアナ・リマは、世界的なトップモデルとして有名です。
現在ニューヨークに拠点を構えて活躍していますが、元々はブラジルに生まれた南米出身の女性です。
そのため、ラティーノに分類されますが、ブラジルはスペイン語圏ではなくポルトガル語圏であることから、厳密にはヒスパニックには該当しません。
シャキーラ(ヒスパニック&ラティーノ)
世界で最も売れている音楽アーティストの一人であり、常に多くのファンから支持されるシャキーラは、ラティーノやヒスパニックを代表する人物の一人と言えるでしょう。
南米のコロンビアのバランキージャに生まれ、スペイン語を母語としながら、英語やポルトガルも流暢に話します。
カミラ・カベロ(ヒスパニック&ラティーノ)
アメリカで歌手として活躍するカミラ・カベロは、2018年にリリースした1stアルバム「CAMILA」が、全米アルバムチャート初登場で1位を記録したことで世界的にも一気に注目されることとなりました。
中米に区分されるスペイン語圏のキューバに生まれ、その後にメキシコへ移り、それからしばらくしてアメリカへ移住してきました。
このような背景を持つため、ヒスパニックとラティーノ両方に該当します。
アレクサンドリア・オカシオ・コルテス(ヒスパニック&ラティーノ)
29歳で米国議会議員となったアレクサンドリア・オカシオ・コルテスは、アメリカの歴史で女性としては最年少の米国議会議員となる偉業を成し遂げました。
また、ドナルド・トランプ大統領と対立する姿勢を明確にしたことや、LGBTコミュニティを支持したことなどもあり、世界中で大きく注目されることになりました。
彼女はアメリカで生まれましたが、プエルトリコ系の家族の下に生まれたため、ヒスパニックにもラティーノにも該当します。
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ヒスパニックとラティーノの違い&有名人を10名紹介!のまとめ
ヒスパニックとラティーノの違いについて詳しく見てきました。
この2つの言葉は、意味がオーバーラップする部分もあるため、混同して使われがちですが、詳しく見ていくと両者の違いが明確になります。