アイルランドの作家10名一覧|ジョナサン・スウィフトからアン・エンライトまで

アイルランドの作家を10名紹介していきます。歴史的な作家ジョナサン・スウィフトから、現代に生きるアン・ライトまでを確認していきましょう。

イギリスを代表する作家と言えば、歴史に名前を残すウィリアム・シェイクスピアから、現代に広く知られるJ・K・ローリングなど、簡単に名前が挙がりますが、イギリスの隣にあるアイルランドの作家はそこまで名前が知られていないかもしれません。

しかし、実はアイルランドの作家の中には、誰もが知る作品を世の中へ送り出してきたり、大きな影響を与えてきた偉大な作家が何人もいるのです。

この記事では、アイルランドの作家の中から、抑えておくべき有名で大きな功績を残した歴史的な作家から、現代で評価される作家までの10名をピックアップして紹介していきます。

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アイルランドの作家1:ジョナサン・スウィフト

独特で皮肉な作風で知られるジョナサン・スウィフト(1667年〜1745年)は、近世のヨーロッパに活躍した風刺作家であり随筆家、そして政治パンフレット作者であり詩人。

風刺作家として歴史にまで名前を残すジョナサン・スウィフトの言葉選びは、一言一句、皮肉的です。

例えば、著書「アイルランドの貧民の子供たちが両親及び国の負担となることを防ぎ、国家社会の有益なる存在たらしめるための穏健なる提案」では、飢餓を阻止するためにアイルランド人に自分たちの赤ちゃんを食べるように提案しています。

その文体は、口語体で大胆で、簡潔で強烈で、穏やかに聞こえる皮肉の裏にしばしば怒りと憤りを隠し、非常に滑稽かつ巧妙で、時には粗野で非常識で、叙情的で遊び心があり、今すぐにでも自意識過剰で激しい誇張法が飛び出しそうなものなのです。

1704年に出版された「桶物語」はジョナサン・スウィフトの最初の主要作品です。

そして、スウィフトの恐らく最も有名な作品と言えば、難破した男が行く先々で様々な種族に出会う物「ガリヴァー旅行記」でしょう。

ちなみに、「ガリヴァー旅行記」はただのファンタジーとして親しまれることが多いですが、実は、そこに登場する種族は、政治家や宗教的狂信者など、ジョナサン・スウィフトが嫌った社会の一面を象徴していると言われています。

アイルランドの作家2:ブラム・ストーカー

ブラム・ストーカー、本名エイブラハム・ストーカー(1847年〜1912年)は、ゴシック小説「ドラキュラ」で有名な小説家・短編小説家です。

彼の「ドラキュラ」は、聖書の次に最も売れている本の1つであり、今まで世界中で撮影された1,000本以上もの吸血鬼映画や、その他の吸血鬼の物語に影響を与えてきたことで知られます。

ブラム・ストーカーは、「ドラキュラ」を執筆する前に吸血鬼の伝説について何年もかけて調べました。

そして、手紙や日記、電報、航海日誌、新聞の切り抜きから構成される書簡体小説である「ドラキュラ」を書き上げたのです。

ちなみに、吸血鬼ドラキュラは、アイルランドから生まれるべくして生まれたと言えるのかもしれません。

というのも、アイルランドのゲール語で「Droch Ola(ドラキュラ=Draculaに似ている)」は、「悪い血」を意味するからです。

また、ブラム・ストーカーは1874年に創立されたダブリン・スケッチング・クラブの共同創立者としても知られます。

アイルランドの作家3:オスカー・ワイルド

アイルランド出身の作家、劇作家、そして詩人のオスカー・ワイルド(1854年〜1900年)は、19世紀末文学の旗手として知られる人物。

その作品は、「人間のありようについての豊かで劇的な描写」を体現していると言われます。

アイルランドの地方紙に革命的な詩を書いたと評される母親に似たのか、オスカー・ワイルドは学校教育でもずっと文学と芸術の分野において優秀でした。

そして、妻のコンスタンス・ロイドと出会って家庭を築いた後、ワイルドの創造性はピークに達し、「つまらぬ女」、「理想の夫」、「真面目が肝心」、「幸福な王子その他」、「ドリアン・グレイの肖像」をはじめとした代表作の多くを執筆していきました。

しかし、1891年になると、ロイドとは婚姻関係にあったのにも関わらず、オスカー・ワイルドはアルフレッド・ダグラスという女性と出会って恋人関係になり、その後、わいせつ罪で逮捕されるまで4年間も交際を継続。

逮捕されてからオスカー・ワイルドは、2年間の刑務作業を行って服役を終え、出所後には著書「レディング牢獄の唄」で刑務所での苦しい経験を描きましたが、これ以降は創作意欲を失って1900年に髄膜炎で亡くなっています。

アイルランドの作家4:ジェイムズ・ジョイス

ジェイムズ・オーガスティン・アロイジアス・ジョイス(1882年〜1941年)は、20世紀(特に初頭)を代表する最も重要な作家の1人だと考えられているアイルランド出身の小説家。

最も有名な作品「ユリシーズ」は、7年の歳月をかけて書き上げられた大作で、数ある彼の作品の中でも特に意識の流れの技術が際立っており、無数の文体を組み込むことに成功した、史上最も独創的な作品の1つとされます。

また、ジェイムズ・ジョイスは、1900年代初頭のアイルランドの中流階級の生活を描いた全15編の短編小説集「ダブリン市民」も執筆しており、こちらも彼を代表する作品です。

なお、1904年に6月16日にダブリンを彷徨った「ユリシーズ」の主人公「レオポルド・ブルーム」にちなんで、アイルランドで6月16日は「ブルームズデイ(ブルームの日)」という記念日になっています。

また、実はこの6月16日は、ジェイムズ・ジョイスが妻ノラ・バーナクルと初めてデートをした日でもあります。

アイルランドの作家5:サミュエル・ベケット

アイルランドの有名な歴史的作家であり劇作家の「サミュエル・ベケット(1906年〜1989年)」は、上で紹介したジェイムズ・ジョイスと並んで、20世紀を代表する劇作家、詩人、小説家の1人だと考えられている人物。

英語とフランス語(特にフランスでの評価が高い)の両方で執筆しており、ブラックユーモアとブラックコメディを取り入れながら、暗い人生観と文化観を表現しました。

絶望的で問題のある状況の中でユーモアを引き出していたのであり、それが彼の作品の評価を高め、特徴的なものへと進化させているのです。

生涯の業績が評価され、作家によって作られたアイルランドの芸術協会から最高賞に選ばれたこともあり、1969年にはノーベル文学賞を受賞しました。

代表作には、「モロイ」や「ゴドーを待ちながら」などがあります。

アイルランドの作家6:フラン・オブライエン

アイルランド生まれの小説家で戯曲家で、そして風刺家として知られるブライアン・オノラン(1911年〜1966年)は、フラン・オブライエンというペンネームで作品を執筆していたことで知られる人物。

アイルランドの社会は少し保守的すぎると感じていたオブライエンは、それに反抗しようと奇想天外なややこしい文体で作品を執筆することを得意とし、メタフィクションと風刺文学の達人だと考えられていました。

また、短編小説やエッセイ、そして編集者への手紙(公開状)を書いたり、アイルランドの新聞アイリッシュ・タイムズでは「Myles na gCopaleen」というペンネームで多くのコラムを書いたりと、多才な一面も持っていました。

そんなフラン・オブライエンの最も有名な作品は、一風変わったユーモアを交えた小説「スウィム・トゥー・バーズにて」と「第三の警官 (死後に出版されました)」です。

そして、フラン・オブライエンはキャラクターの選び方も一風変わっていたことで有名で、「スウィム・トゥー・バーズにて」には民間伝承や伝説のキャラクターを借用。

また、「第三の警官 」には新次元かつ地獄のような世界に生きる殺人者、哲学者、その哲学者の話に魅了された2人の警察官が登場します。

アイルランドの作家7:ブレンダン・ビーアン

ダブリン生まれのブレンダン・ビーアン(1923〜1964年)は、アイルランド語と英語の両方で執筆をしたことで知られる、詩人、劇作家、小説家です。

かつてアイルランド共和軍(IRA)に志願して在籍し、IRAの在籍中に経験した犯罪や実刑判決は、後のブレンダン・ビーアン作品に大きな影響を与えました。

たとえば、自伝「ボルスタル・ボーイ(Borstal Boy)」は、爆発物を所持した罪で収容されたボルスタル(少年院)での経験を振り返って執筆されました。

また、ブレンダン・ビーアンは、刑事2人に対して殺人未遂を犯したとして懲役14年の判決を受けたこともありましたが、この事件については別な著書で言及しています。

一方で、その波乱万丈で破天荒な人生によって、41歳の若さでこの世を去ることとなりました。

これについては、ほとんどの時間をパブで過ごしていたなど、それ以前から苦しんでいたアルコール依存症に依るところが大きく、実際、1964年に突然倒れた場所もバーでした。

アイルランドの作家8:ジョン・マクガハン

ジョン・マクガハン(1934年〜2006年)は、ダブリンに生まれた小説家ですが、その生涯に書き上げた長編小説作品はわずか6作だけという点でユニークかもしれません。

しかし、この6つのうち3つは賞を受賞しており、しかもその賞の合計数は4つに上ります。

当初ジョン・マクガハンは小学校の教師として働いていましたが、ジョン・マクガハンと父親の関係を記録したものだと考えられている小説「青い夕闇」で物議を醸したため解雇されました。

「青い夕闇」は、近親相姦など全体的に性的な内容が含まれたいたため、アイルランドでは発行禁止になったのです。

一方で、ジョン・マクガハンの最も有名な小説である「女たちのなかで」は、家族に対して非情になったIRA(アイルランド共和軍)の退役軍人の物語で、退役軍人に起こる性格の変化がよく描かれていると評されており、この作品でマクガハンは、アイリッシュ・タイムズ文学賞 (1991年)とGPA賞 (1992年)を受賞し、ブッカー賞にもノミネートされました。

またジョン・マクガハンは長編小説以外にも、短編小説や戯曲を執筆したり、世界中の様々な大学で教授を務めたりもしていました。

アイルランドの作家9:ジョン・バンヴィル

1945年生まれのジョン・バンヴィル(1945年〜)は、ベンジャミン・ブラックのペンネームで執筆している犯罪小説での毒のあるユーモアと、精密な文体で有名な作家。

ジョン・バンヴィルの明快で唯一無二の文章は、「英語への精通」を体現しているとさえ言われ、その表現は秀逸。

かつてはアイルランドの新聞アイリッシュ・タイムズで文芸編集者を務めていましたが、現在は小説家以外にも、アメリカの書評誌ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックスの寄稿者としも活躍しています。

彼の最も有名な作品である「海に帰る日」は、愛する人の死に立ち向かう引退した美術史家の日記という形式で書かれた小説で、他にも「ダブリンで死んだ娘」や「溺れる白鳥」、数々の短編小説や戯曲があります。

アイルランドの作家10:アン・エンライト

アン・エンライト(1962年〜)は、家族関係や愛、セックス、アイルランドの文化、アイルランドが乗り越えてきた壁について書いた小説や短編小説、そしてエッセイ集で有名。

アメリカ合衆国における新聞、雑誌、オンライン上の報道、文学、作曲の功績に対して授与される栄誉な賞「ピューリッツァー賞」の受賞歴も持ちます。

現代アイルランドにおける最も重要な作家の1人とされ、その作品は文学的実験性、皮肉たっぷりのユーモア、鋭い知的洞察力で有名です。

彼女の代表的な作品はいくつかありますが、最も有名な小説である「The Gathering」は、ベトニカという女性が、アルコール依存症の兄弟の自殺を受け、その自殺の意味を理解するために問題の多い家族の歴史を調べようとする物語です。

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アイルランドの作家を10名紹介してきました。

アイルランドはイギリスの影に隠れて目立ちませんが、この国の出身者には非常に有能で優れた小説家が多くいるのです。

世界のことって面白いよね!By 世界雑学ノート!

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