ソルトベイ|塩振りおじさんや塩ファサーで知られるトルコ人の話

ソルトベイや塩振りおじさんで知られるヌスレット・ギョクチェについて詳しく紹介していきます。塩ファサーで一躍有名になって這い上がってきたトルコ出身の人物です。

トルコのステーキハウスチェーン「Nusr-Et」で食事をするのが、トルコやドバイ、そしてニューヨークなどでちょっとしたトレンドになっています。

運良くこのレストランのオーナーシェフ「ヌスレット・ギョクチェ」、通称「ソルトベイ」がいる時にここを訪れた客は皆、彼が披露するいつものパフォーマンスがもっとよく見えるよう、椅子に座ったまま身を反らします。

夕方の6時半、ピチピチの白Tシャツに黒のパンツ、金縁のサングラス姿の「ネット上で最もセクシーな肉屋」ことソルトベイが、気取った足取りでテーブルに向かって歩いてきました。

そして、左手で高級なリブアイステーキの骨部分を握り、右手でミディアムレアに仕上げたその肉をナイフ一振りで切り落とし、腰とナイフをリズミカルに動かしながら、ステーキを切り分けていきます。

そして、皆がお待ちかねの「塩ファサー」の瞬間です。

ソルトベイは腕の長さほどもある高所から、華麗な身振りで手の平の塩を完璧な焼き加減のステーキに滝のように振りかけるのです(※この時は通常、客の太腿の上にも塩がかかります)

その後、ソルトベイはカカトでくるりと体の向きを変え、無言のまま次のテーブルへと移動していきました。

この高額なトマホーク型のステーキを注文した客全員に、ソルトベイが全く同じ塩ファサーのパフォーマンスを繰り返しても何ら問題ありません。

それに対してがっかりする客などおらず、むしろ一連のパフォーマンスは約45秒とインスタグラムに投稿する動画に最適な長さで、実際、このパフォーマンスが呼び物になって多くの客を惹きつけています。

この塩振りおじさんこと「ソルトベイ」とは一体何者なのか?

この記事では、ソルトベイの生い立ちやレストラン、それから一介の肉屋見習いから如何にしてセレブが集まるレストランオーナーにまで這い上がっていったのかを見ていきたいと思います。

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「塩振りおじさん」こと「ソルトベイ」とは何者なのか?

「塩振りおじさん」または「ソルトベイ」とは、トルコのエルズルム県の県都「エルズルム」で、1983年にクルド系トルコ人の両親の下に生まれたヌスレット・ギョクチェ

現在は、トルコを中心に、他にもアラブ諸国やアメリカに店舗を持つ「Nusr-Et」というステーキハウス・チェーンを経営し、自らも率先して新メニューの考案や肉料理の下ごしらえを行うオーナーシェフとして有名です。

父親は鉱山の労働者で、家庭は貧しいにも関わらず5人子供がいたため(ヌスレットは2番目の子供)、経済的な理由によってヌスレットは6年生在学中に退学を余儀なくされ、イスタンブールのカドゥキョイ地区にある精肉店にて見習いとして長時間働くこととなりました。

その後、16歳になると肉屋の徒弟を卒業し、今度はトルコ系のステーキハウスで10年勤務します。

2009年にギョクチェは、食肉産業について知識を深めるため、食肉の街ブエノスアイレス(アルゼンチン)へ向かい、現地のレストランで働き始めましたが、肉に対する愛情は彼をさらにアメリカへと向かわせました。

この時、ギョクチョは知見を深めるために、シェフまたレストランの経営者としての経験を得るために無報酬で地元のレストランで働いたと言います。

そして2010年にトルコへ戻ると、27歳の時に「Nusr-Et」の第一号店をイスタンブールにオープン。

2014年にはドバイに店舗を設けるなど順調に事業を拡大していき、現在にまで至ります。

ちなみに、ヌスレット・ギョクチェ(ソルトベイ)はチャリティー活動にも多く関わっており、その一つとして故郷であるエルズルムに学校を建設するなどしています。

ソルトベイのインターネットミームと「塩ファサー」

現在でこそ「塩振りおじさん」や「ソルトベイ」という愛称で知られるヌスレット・ギョクチェが有名になったのは、2017年1月よりインターネット上で配信されたビデオで、これが彼自身と彼に紐づく「Nusr-Et」のインターネットミーム(インターネットを通じて人から人へと、通常は模倣として拡がっていく行動・コンセプト・メディアのこと)として、とても有効なPRとなりました。

Ottoman Steak😋

その動画とは、肉をスライスして焼き、その後にソルトベイを象徴するお決まりの塩振りが撮影されたもので、洗練されたテクニックであるもののどことなくコミカルで強烈なイメージを残すものであったことから、一気に拡散されていきました。

2017年1月7日に経営するレストランのツイッターアカウント上に投稿された「Ottoman Steak(オットマンステーキ)」と題されたビデオは結局、インスタグラム上で1,000万回以上再生され、インターネット上で話題になったことで彼の名は広まり、世界各国の多くの有名人や政治家がソルトベイの店を訪れるまでになっていったのです。

また、指先でつまんだ塩が前腕に当たってその後に皿に落ちる独自の塩振りテクニック、「塩ファサー」によってヌスレット・ギョクチェは「ソルトベイ」と呼ばれるようになりました。

ソルトベイのレストラン

ソルトベイが経営するレストランでふるまわれている料理への評価は賛否両論であり、「値が高すぎる」との声が良く聞かれます。

例えば、ニューヨークに新店舗が出店された時には、

  • 市民へのぼったくりナンバーワン(ニューヨークポスト)
  • ステーキはありきたりでハンバーガーは焼きすぎ(GQ誌)

などという評価を受けています。

一方で、エンターテインメントとしての視点からは肯定的なレビューも多く、

ステーキハウスとしてニューヨークに新たに出店したNusr-Etを評価するのであれば、がっかりする人も多いかもしれません。しかし反面、ディナーとともにパフォーマンスを楽しむ場所としてとらえるのであれば、満足する人も多いのではないでしょうか?ソルトベイがいる場合に限りますが。

という声がEATERに寄せられています。

実際、CNBCの記事にも、

何が大衆を魅了するのか?それは明らかです。皆、一ヶ月分の家賃の半額をこの店でのディナーに費やすことを厭わず、しかもその目的は料理そのものではありません・・・(中略)・・・この店のステーキは超越的な料理なのか?いや、ここのステーキはありふれた、幾分固く、どちらかというと味気ないものだ。ハンバーガーは火を入れ過ぎだ。タルタルステーキは細かく切り過ぎ…。しかしそれは問題だろうか?そんなことはどうでも良いことだ。客はステーキ目当てにソルトベイの店を訪れるのではない。人々が聖餅を求めてミサに行くわけではないのと同じことだ。

という評価が書かれています。

このように、味で勝負するレストランというよりは、エンターテイメントの要素が高く評価されているNusr-Etは2019年現在、

  • アラブ首長国連邦
    • アブダビ、ドバイ
  • カタール
    • ドーハ
  • トルコ
    • アンカラ、ボドルム、イスタンブール、マルマリス
  • サウジアラビア
    • ジッダ
  • ギリシャ
    • ミコノス
  • アメリカ
    • マイアミ、フロリダ、ニューヨーク

に店舗を構えるグローバルレストランにまで成長しています。

ソルトベイが肉屋の見習いからレストラン経営者として成功するまで

小さなレストランが大きく成長した裏には一人の投資家がいたらしい

後にソルトベイと呼ばれることになるヌスレット・ギョクチョがレストランオープンの夢を叶えたのは2010年、彼が27歳の時でした。

イスタンブール近郊のエティラーに、ステーキハウス「Nusr-Et」の初店舗をオープンしたのです。

当初は8つのテーブルと従業員数10名程度の小規模な店でした。

しかしある日、トルコ人ビジネスマンのフェリト・シャヘンクがこの店で食事すると、シャヘンクは大変感銘を受け、この生まれたてのレストランビジネスに投資したいと言い出したとされています。

このシャヘンクによる投資の結果、経済的に安定したギョクチェは、アンカラ、ドーハ、ドバイなど、中東各地に新店舗を出店していくようになったのです。

インターネットミームによってさらなる飛躍を遂げる

ヌスレット・ギョクチェがソルトベイとしてスターへの階段を登り始めたのは、2017年1月7日、上でも述べたようにインスタグラムに「Ottoman Steak(オットマンステーキ)」と題する36秒間の動画を投稿したその日でした。

この動画はツイッターやインスタグラムであっという間に注目を集め、世界中に拡散。

その特徴的な塩ファサーによってソルトベイという愛称で知られるようになり、動画を投稿してからわずか1年後、ソルトベイはアブダビからマイアミに至るまで、世界中に13店舗にもなるステーキハウスチェーンを展開し、このチェーン店で働く従業員の数は600名を越えるほどになりました。

セレブの仲間入りをしてしまった肉屋さん

このように、ソルトベイの名声は、インターネットによるところが非常に大きかったわけですが、結果として世界中に名前が知られるようになり、その「塩ファサー」のパフォーマンスを一目見ようと、多くのセレブ達が店に駆けつけました。

Salt Bae seasons Leonardo DiCaprio's dinner

これらのセレブ達の中には例えば、ラッパーのドレイクやDJのDJキャレド、音楽プロデューサーでMCや俳優としても知られるショーン・コムズ、アカデミー賞俳優のレオナルド・ディカプリオなど、超大物セレブ達が含まれます。

また、そしてオーストラリアのメルボルンにはソルトベイの壁画まで登場。

塩が飛び散るなか、「コブラのようなポージングで一時停止状態のソルトベイ」が壁画に描かれるなど、肉屋見習いから始まったソルトベイは、いつしか世界的に有名なセレブ達と肩を並べるほどのセレブへ自らもなってしまったのです。

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ソルトベイ|塩振りおじさんや塩ファサーで知られるトルコ人の話のまとめ

塩振りおじさんや塩ファサーで知られ、ソルトベイという愛称で多くのファンを魅了するヌスレット・ギョクチェについて詳しく見てきました。

ソルトベイの生涯は、まさにドン底から這い上がっていった成功物語と言え、現在の活躍は目覚ましいものがあります。

一方で、ソルトベイは不注意によって、たまに大きな批判を浴びることがあります。

例えば、フィデル・カストロの像の前で不謹慎にもポーズをとる姿を撮影したとして、2017年12月にソルトベイは批判を受けました。

また、2018年9月にはベネズエラの大統領ニコラス・マドゥロが、ソルトベイのイスタンブールのレストランを訪れたことにより、大統領とともに非難を受ける形となりました。

これは、ベネズエラ国内の危機的な状況への配慮が欠けているという理由からでした。

このように、セレブに囲まれて活躍する有名人「ソルトベイ」には多くの批判が寄せられ、中には妬みに近いものもあるようです。

しかし、傍から見れば、ギョクチェの暮らしぶりは肉屋の見習い時代とはまるで違うように見るかもしれませんが、ギョクチェ本人にとっては違うようです。

というのも彼自身は、

肉の内側から俺の感情がすべて溢れ出し、塩とともに肉に落ちていくんだ

とか

俺の生活は今も何も変わってはいないんだ。今でも朝から深夜まで働き続けているよ

と言った言葉を残しており、肉への愛と食肉業を極めていくうちに、自然と現在のポジションが確立されていっただけで、彼自身は以前にも増して仕事へ没頭しているようだからです。

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