サステイナビリティという概念を知っていますか?持続可能な発展や持続可能な開発などとも言われ、将来の地球と人間社会を守って行く上で非常に大切な考え方です。
「サステイナビリティ」または「持続可能な発展/持続可能な開発」は、現在の人類が地球環境の悪化、そしてそれに伴う社会的・経済的ダメージに対して「危機感」を感じたことで生まれた非常に若い概念。
しかし、生まれてから間もないサステイナビリティは、これからも将来に渡って人間が地球で安心して暮らしていくにはとても重要な考え方です。
そのため、国際社会においては無視できない視点であり、また一般の人であっても、現在の暮らしを将来的に維持し続ける上で障害となる課題を解決するためには、知っておくべきことだと言えます。
この記事では、サステイナビリティについて例などを挙げながら詳しく見ていこうと思います。
サステイナビリティとは?「持続可能な発展」や「持続可能な開発」とは?
サステイナビリティとは「持続可能性」を意味する言葉で、学際的な(広い領域による)アプローチによって、人間の活動や自然環境などが、将来に渡って持続可能かどうかを表す概念。
例えば、環境に関する視点を切り取ってみた場合、サステイナビリティとは「自然のシステムがバランスを保つためにどのように機能し、多様性を存続させ、生態系に必要なあらゆるものを生産出来る能力を将来的にも維持できるかの可能性」と言うことが出来るでしょう。
また、サステイナビリティは1987年、「ブルントラント委員会報告書」によって、これからの新しい開発の方向性を表す概念として提唱された「持続可能な開発(Sustainable Development)」によって広まった概念で、ブルントラント委員会報告書によると、持続可能な開発とは、
将来の世代がそのニーズを満たす能力を損なわないように、現在の世代のニーズを満たすような開発
(引用:国際協力用語集, p.140)
と定義されており、その適用範囲は広く、中でも特に「環境、経済、政治、文化」において重要です。
普段の生活を例にしてサステイナビリティが必要な場面を考えてみよう
ここで、サステイナビリティをより身近なものとして理解するためにも、現代日本における日頃の生活を振り返って、この概念を当てはめていってみましょう。
現代日本、特に東京などの大都会における生活は「大量消費の生活」です。
都会では街路や建物を照明で照らし続けたり、電化製品を作動させたり、暖房をつけたり、その他にも公共の場や家庭で電力を使用したりするため、非常に多くの天然資源を消費している状態です。
ここでサステイナビリティまたは持続可能な発展(持続可能な開発)の考えを適用した場合は、毎年消費されているこの資源が、
- 再生可能なのかどうか?
- 再生可能な資源量を上回っていないか?
などを考えていくことになります。
そして、もしも生産可能な資源量を消費する資源量が上回る場合、それはサステイナビリティが保たれた状態だとは言えません。
けれども、サステイナビリティの考えに基づけば、現代社会の健全性、言い換えれば「現在の生活の質や機能を損ねないこと」も重視しています。
つまり、単純に資源の消費を減らして生活の質が落ちてしまうのはサステイナビリティの観点から言えば適切ではなく、現代社会に生きる人々の生活と資源の消費とのバランスが絶妙に保たれていることが重要になってくるのです。
サステイナビリティの概念が生まれてきた背景
人は新石器時代の農業革命以降またはそれ以前から環境資源を補充・補完することよりも、消費することに焦点を当ててきました。
狩猟生活から農耕生活中心の社会が発展してくると、人々は家畜の糞などを肥料として利用すると土地の生産性を高められることなどを学び生活に取り入れていた反面、持続可能な生活といったコンセプトは存在しませんでした。
人間にとってサステイナビリティ(持続可能な発展や開発)の重要性が理解されるようになったのは、20世紀になってからのこと。
環境被害、汚染、樹木の伐採により土壌が不安定になり、また、化石燃料やその他の環境問題によって、人々の間に環境とそれに伴う生活や経済発展に対する影響への懸念が高まってきたためです。
また同時に、私たち人間がエコシステムに被害を与えている、または与えかねないということが認識されるようになりました。
その結果、20世紀後半には気候変動についての研究を進める科学分野が確立され、初めて「持続可能な発展(持続可能な開発)」が提唱され、サステイナビリティの概念が世界的に共有されることになります。
しかし、実際にサステイナビリティに対する活動が活発化してきたのは21世紀目前のこと。
ここでようやく化石燃料などの人間の生活資源には限りがあり、再生可能なエネルギー利用を視野に動き始める必要があると強く認識されるようになったのです。
こうして社会、経済、科学の分野が一丸となったサステイナビリティへの取り組みが各地で具体的にスタートしていくことになりました。
サステイナビリティ(持続可能な発展または開発)の3つの要素
2005年、世界社会開発サミット(World Summit on Social Development)によって、持続可能な発展(持続可能な開発)のための3つの要素が示されました。
これは、今日の世界が直面している問題に取り組む上で重要な要素であると同時に、「道しるべ」のようなものであり、サステイナビリティを実現していく上では覚えておくべき項目になります。
その3つの要素とは次の通りです。
- 経済発展
- 社会開発
- 環境保護
この3つの要素について、以下で詳しく確認していきましょう。
経済的発展
経済発展とは、
時間の経過を経て一国経済が量的に拡大すると同時に質的(構造的)に変化をしめすこと
であり、例えば、
- 生活の質を損なうことなく欲しい物を手に入れる
- 経済的負担を軽減する
- お役所的な形式主義を廃止して新しい制度を作りもっと効率的に経済をまわす
といったものです
一方で、サステイナビリティの概念に立って経済発展を考える場合は、その経済発展が「将来的にも持続可能か?」に焦点を当てることになります。
例えば、経済発展に天然資源が重要なのであれば、天然資源保護のために「消費をコントロール」したり、「代替となるエネルギー源を生み出していく」といったことを考えていく必要が出てきます。
社会開発
社会開発とは元々、経済の成長のみを追求しがちな「経済発展」に対して、より人間的・社会的側面を重視する概念。
そこには、
- 住民参加
- 貧困削減
- 女性支援
- 栄養・保健衛生
- 教育
- 人権・民主化
- 人口・家族計画
などが含まれます。
例えば、サステイナビリティを実現する上では、対象となる社会で暮らす人々を教育することによって、無計画な出産を抑えて人口規模を適正に維持したり、また、環境保護に対しての意識を高めるといったことが考えられます。
また、スカンジナビア諸国では人々の健康を保障するための管理や法律が徹底されていますが、これもまた、人間が人間らしい生活を将来に渡って持続させるために有効な手段です。
他にも、企業が経済的な成長だけを求めるのではなく、そこで働く人々の労働環境や周りの自然環境を改善するように仕向けていく法整備なども、社会開発におけるサステイナビリティの例と言えます。
環境保護
環境保護とはその名の通り「自然環境」の保護または健康的な維持と発展を目的とした活動。
例えば、
- 空き瓶のリサイクル
- 電子機器を待機状態にせずに電源を切って消費電力を抑える
- 自動車に乗らずに公共交通機関で移動する
- 二酸化炭素の排出量を抑える企業努力
- より良い環境作りのためのテクノロジー開発・発展
などです。
また環境保護自体には、
- 生態系の保護
- 大気の保護
- 天然資源の保護
の3つの柱があると言えます。
近年の温暖化や、それに伴う異常気象などによって、環境に関するサステイナビリティは、おそらく多くの人にとって非常に関心が高い要素だと思います。
サステイナビリティの未来と活動の例
サステイナビリティは誕生してからまだ間もない新しい概念であるため、サステイナビリティに則った新しい技術の登場やよりクリーンな燃料資源の開発により、「持続可能な未来がどのようなものとなるのか」について、まだ見通しは立っていません。
それにも関わらず、ビジネスを含めて多くの人々の間で、「天然資源の代替となる次世代のエネルギーを中心として機能する社会を目指す」動きが広がっています。
一方で、エネルギーを供給していくためには、新たな環境に配慮したクリーンな技術を開発していくことが必要ですが、サステイナビリティは環境への配慮だけではなく、社会や経済面に対しても配慮するべきなのは上述した通りです。
そして、その具体的な例として、社会開発を目的とした次のような活動があります。
- フェアトレード
- コーヒーやココアなどの一次産品の農業従事者が、適正な生活賃金を与えられる環境作りを目指すと同時に、より経済的に豊かになれる農業の実現や、それによって従事する人々の社会的側面の改善を目指している
- レインフォレスト・アライアンス
- 環境保護ならびに持続可能な社会開発を目的とした団体で、森林や生態系の保護、土壌や水資源の保全、労働環境の向上や生活保障など、厳しい基準を満たした農園のみに「レインフォレスト・アライアンス認証」を与えて、サステイナビリティを広く普及しようと活動している
このように、サステイナビリティに関わる活動家、専門家、団体は、将来的な環境に配慮した取り組みを進めながら、環境、経済、社会面を発展させようと取り組んでいます。
国連で採択されたサステイナビリティへの取り組む「SDGs(持続可能な開発目標)」
最後に、2015年9月に国連サミットで採択された、サステイナビリティへの取り組み「SDGs(持続可能な開発目標)」について触れておきます。
国連では2001年に策定されたレニアム開発目標(MDGs)が、2015年までに達成する目標として採択されていましたが、世界的な貧困の減少については一定の改善が見られるかたわら、まだまだ沢山の課題が残されていました。
そこで、このMDGsを基盤として作られたのが、以下の内容を含む17項目がまとめられたSDGsで、2016年から2030年までの14年間で達成するべき国際目標となっています。
- 貧困と飢餓の撲滅
- 教育と医療基準の改善(特に水質および衛生環境の向上に関する分野)
- 男女平等の実現
- 雇用の拡大とともに強い経済を作ると同時に持続可能な経済発展を目指す
- 上気候の変動、汚染など人々の健康や生活に影響を与えかねない自然環境問題への対応
- 大地、空気、そして水など環境にも考慮したサステイナビリティの達成
より具体的な17項目は以下の通りです。
(出典:日本ユニセフ協会)
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サステイナビリティ(持続可能な発展・持続可能な開発)|例や目標とすべき課題などのまとめ
サステイナビリティの発展は、人間だけではなく自然にも権利があるという考えに繋がり、人々は地球を守る責任があり、人々が率先して自然環境の保護をしていくべきだと提唱されています。
このことはまた、地球に住む人間の暮らしにも巡り巡って影響を与えてくることであり、現在多くの問題を抱える人類にとってサステイナビリティは、とても大切な概念です。