中東に位置するイスラエルはITやサイバーセキュリティ先進国として有名。その理由とは一体なんなのか?確認していこうと思います。
近年、イスラエルはITやサイバーセキュリティの先進国として世界に名を馳せており、同分野における革新的なサービスやプロダクトを続々と世の中に送り出しています。
しかしなぜ、1000万にも満たない人口で、資源もほとんど持たない小国のイスラエルが、ITとサイバーセキュリティ分野をリードするようになったのでしょうか?
その謎について、考えられる理由を見ていきましょう。
イスラエルでは政府がITやビジエンスのまとめ役として働く
イスラエル政府は、国内で好況なIT分野の立ち上げやその維持に重要な役割を果たしており、これがイスラエルがITやサイバーセキュリティの分野に強い一つの理由。
特に他国と比べて同国が急速に成長しているサイバーセキュリティ産業において、非常に重要なまとめ役として機能しています。
例えば2011年、イスラエルは国家の政策として、国家サイバー局(National Cyber Bureau)を立ち上げ、同時に「近い将来、イスラエルをサイバーセキュリティ先進国のトップ5に入れる」という国家レベルのスローガンを掲げました。
また、イスラエル政府はサイバーセキュリティを最先端の「研究と独自の実践的経験に基づいた競争優位の分野」と位置付け、「経済成長の原動力」として優先的に力を入れていくことを決定しています。
さらに政府主導の下、ITやサイバーセキュリティに関する「エコシステム」が生み出されています。
このエコシステムは、軍隊を含む政府と企業と大学が連携するための、常に進化し続けるフレームワーク(組織、体制、枠組み、システムを構築するための基盤)であり、国内のIT・サイバーセキュリティに関わる人・組織・知識・技術が上手く循環するようになっています。
このように、イスラエルがITやサイバーセキュリティの先進国として有名になった一つの理由には、政府がまとめ役として引っ張ってきたという理由が挙げられます。
軍がITスタートアップ養成所のような働きをしている
周辺に外交関係を持たない国がいくつも存在していたり、また面積も小さく資源もほとんどないため、イスラエルは建国以来、軍事力を展開・維持するために多くの投資をしていきてます。
そして、インターネットが世界において重要なインフラとなり、社会の各方面に浸透したインターネット時代において、この小国にとっては国防上、サイバーセキュリティが最も重要なものになってきたのです。
そのことを以前から予期していたイスラエル軍は、サイバー分野へ多額の投資を投下し、過去何年にも渡って、情報収集やサイバーセキュリティのスキルとノウハウを蓄積してきました。
結果、現在のイスラエル国防軍に入隊した若者たちは、最先端の実際のサイバー攻撃やその対処を経験して必要な知識を身につけることになります。
また同時に、軍ではスタートアップに必要なその他のスキルを伸ばすことも可能になっています。
具体的には、
- チームワーク(共同作業)
- 他人をリードすること
- 重大な決断を下す責任を担うこと
- 失敗を乗り切ること
などを経験していくことになり、これらは起業して事業を伸ばしていく際に最も重要になってくるスキルです。
元々資源もない小国が国を守るために必要に迫られて力を入れた結果、ITセキュリティー分野においてイスラエルの軍は、いつの間にかスタートアップ養成所のような役割を果たすようになってきたのです。
※イスラエルでは18~19歳から、男性は36ヶ月、女性は21ヶ月の徴兵制度があります。
若いうちからITやサイバーセキュリティを学べる環境がある
イスラエルがITやサイバーセキュリティ先進国であり続けるにあたり、国防軍の存在が大きいことは確かですが、実は軍に入る以前の段階で、ITやサイバーセキュリティに関しての基礎固めがなされている点も忘れてはなりません。
イスラエルでは中等教育の段階から、ITやサイバーセキュリテイの授業が始まり、大学に進学するために高校在学中に受ける試験の選択科目には、サイバーセキュリティの科目があるほどで、これは世界中でイスラエルだけです。
そして、多くの大学にサイバーセキュリテイの専門科目が存在しています。
この他にも、ITやサイバーセキュリティ分野に強い関心を示す子供に対して、興味をさらに高めるような環境が整えられているとされ、
- 実際に活躍しているエンジニアやプログラマーを学校の先生として採用する
- 子供たちがIT企業を見学するツアーを企画する
- 軍隊や民間企業に入る前/在籍中に専門的な訓練を受けられる教育プログラムの提供
など、同分野の人材を底上げする様々な試みが国全体でなされているのが特徴です。
多角的な視点を持つことがイスラエルをIT先進国にしている
ITやサイバーセキュリティ分野に関して、イスラエルが持つ技術レベルは世界でも非常に高く、これがイスラエルをIT先進国にしているのは間違いありません。
しかし、イスラエルがIT先進国であり続けるのは、技術にプラスαを加えることに成功しているからという視点も大事です。
どういうことかというと、関係する分野(法律、心理学、社会学、経済学など)の知識を深め、これら分野へ如何にしてITの技術を応用していけるかという点で、イスラエルは成功しているということです。
テルアビブ大学ではどの学部の学生も(芸術学部を除く)、サイバーセキュリティ科目を専攻することが出来るというのが良い例。
ITやサイバーセキュリティだけを学ぶ人たちだけでなく、他の分野を専門に習得している人間が、改めてIT分野を専門的に学ぶことで、いわゆる学際的(研究が複数の分野にかかわること)な視点からITを活用していく発想が生まれ、そうでなかった場合に生じる境界線を打ち破っていけることが出来るのです。
また、そのような人材が兵役中にサイバーセキュリティの実践的な経験を積むことによって、それ以前に習得したサイバーセキュリティの理論的な知識が補完されてさらに強化されていきます。
このイスラエル独特のITやサイバーセキュリティ教育の環境によって、多角的な視点や発想が生まれ、ITやサイバーセキュリティを応用した世界をリードするサービスや、プロダクトが生まれてくるのだと考えられます。
また、多角的な視点に関して言えば、現在のイスラエルは他国からの移民が多く、異なる価値観や視点が多く存在している点も忘れてはなりません。
サイバーセキュリティに関するアプローチの変更
イスラエルがサイバーセキュリティ先進国として世界をリードしている理由には、サイバーセキュリティ自体を見直したことも大きく影響しています。
イスラエルのサイバーセキュリテイでは、
- これまでのイスラエルサイバーセキュリティの典型的なアプローチ
- → リアクティブ(状況に応じて反応する)
- → 潜在的な「攻撃者」が対象
- 現在のイスラエルサイバーセキュリティのアプローチ
- → プロアクティブ(何かが起こる前に行動を起こして結果をコントロールする)
- → 包括的であり長期的視点
- → 潜在的な「脅威」が対象
- →「保護が必要な資産」・「社会組織」にも焦点が当てられるようになった
といった変化が起こりました。
その結果、以前まではどちらかというと短期的な対処に終わり、各分野の連携も盛んでなかったのが、現在では、より長期的視点での対策を講じるようになってきたと同時に、各分野の連携が緊密になってきたのです。
結果、起業家とIT・サイバーセキュリティの専門家の間に垣根がなくなり、同分野に必要な人材交流、意見交換、議論、協力、競争が活発になり、イスラエルがIT・サイバーセキュリティにおいて世界をリードし続けるようになったのではないでしょうか。
イスラエルにはイノベーションを起こすには最適な社会的価値観が根底にある
そして最後に、イスラエル人や社会が共有する価値観や行動様式も、イノベーションを促進していると言えるかもしれません。
例えば、イスラエルの社会においてはリスクを取って上手くいかなくても、それだけでは「失敗」として否定的に見られることはほとんどありません。
社会全体として「失敗」を許容するような価値観を共有しており、最初に失敗したとしても再び挑戦出来るような社会的な受け入れが整っているのです。
結果、若い頃から知識や技術を身につけたイスラエルの人たちは、得意なITやサイバーセキュリティ分野において、リスクを取って失敗することを恐れなくなり、積極的に新しいことを始めていくため、この国では同分野において常にイノベーションが起こっているのではないでしょうか?
イスラエル社会が持つこの独特の価値観が、彼らの得意分野において他国と違いを生み出していると考えられるのです。
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イスラエルがITやサイバーセキュリティ先進国なのはなぜか?のまとめ
イスラエルがITやセイバーセキュリテイ分野で先進国であり続けるのは、同国がリスクをチャンスに変えてきたからだというのが分かります。
これは、今後の日本にとって参考になると同時に、起業したり、新しいことへチャレンジしたいと考えている個人にとっても大切なヒントになると思います。
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