世界一深い海マリアナ海溝について見ていきます。深さや調査の歴史、また、マリアナ海溝と地震の関係までを詳しく紹介していきます。
世界地図、もしくは宇宙から撮影された地球の写真を一目見れば、海というものがどれだけ大きく、どれだけこの世界にとって欠かせないものであるかが直ぐに分かります。
海はこの地球のおよそ72%を覆っており、水量にしてなんと13億5,000万km3。海洋なくして生命は存在することが出来ず、まさに「命の海」と言えるでしょう。
そして、深い海の底には、未だ誰も知らない謎が数多く眠っており、特に注目を浴びるのが世界一深い海「マリアナ海溝」です。
常に想像力を掻き立てるこのマリアナ海溝について、詳しく紹介していこうと思います。
世界一深い海「マリアナ海溝」とは?
マリアナ海溝は、西太平洋のマリアナ諸島の近くに位置しており、日本とフィリピンの両方から大体同じ距離の場所にある海溝で世界一深い海。
マリアナ海溝全体では三日月の形をしており、その長さは約2,550km、幅は平均して約69km。
気になる「深さ」に関して言えば、最新の研究調査では一番深い箇所で10,994mに達するとされています(※深さに関しては計測が難しいため。40メートルほどの誤差があります)。
この深さををより良く理解するために、世界一高い山であるエベレストを思い浮かべてみましょう。
エベレストをマリアナ海溝の中に入れてみたとしても、海面まではまだ2000m近くものギャップがある計算になるのです。
ちなみに、このマリアナ海溝の中でも最も深淵で小さな谷間は、「チャレンジャー海淵(かいえん)」と呼ばれており、マリアナ海溝の最南端に位置しています。
また、マリアナ海溝の近くには日本、パプアニューギニア、インドネシアそしてフィリピンといった国々があります。
世界一深い海であるマリアナ海溝は、その水圧も驚異的。
およそ15,750psiの水圧に達するとされ、これは海抜0mの地上の平地での圧力に対してなんと1000倍以上!
もし人間がマリアナ海溝の底に立つことが出来たとしても、水圧で一瞬にして潰されてしまうことでしょう。
マリアナ海溝はなぜそんなに深いのか?
マリアナ海溝は2つのプレートの境目に形成された地形。
太平洋プレートの西淵が、フィリピン海プレートの一部であるマリアナプレートの下に潜り込むことでこの海溝が誕生しました。
この沈み込み帯は伊豆・小笠原・マリアナ島弧の沈み込み帯と呼ばれることもあります。
(出典:Wikipedia)
つまり、この地点では、2つのプレートが互いにぶつかりあい、片方のプレートがマントルに沈み込んでいくことで、2つのプレートが重なる線上では下向きのひずみによって、海溝として知られるトラフ(海底の細長い凹地)が形成されます。
このような状況が長い年月続き出来上がったのが、現在のマリアナ海溝なのです。
一方で、太平洋プレートとマリアナプレートの動きは、マリアナ海溝だけでなく、火山諸島であるマリアナ諸島をも作り出しました。
太平洋プレートが沈み込んだ時にプレート間に閉じ込められた海水が、その後放出され、高温の溶岩を冷やして固めた結果、マリアナ諸島が形成されることになったのです。
(豆知識)マリアナ海溝がある太平洋は平均的な水深が深い
海の深さを測るのは決して簡単なことではありません。海の底は限りなく広く、その高低の差も非常に激しいのです。
陸地と同じように、海の底も無数の山脈、谷、崖に覆われていて、谷の中には平均的な深さよりもずっとずっと深いものがあります。
それでも、深さを平均するならば太平洋は世界で一番深い海洋と言って良いでしょう。
数値に関してはいくつかの説がありますが、太平洋全体の深さは平均で4,280mであると考えられており、これは、世界の海全体の平均である3,700mよりも500m近くも深い値です。
特にマリアナ海溝は他の海溝に比べても特筆して深く、太平洋全体の平均値に大きな影響を与えています。
世界一深い海マリアナ海溝の調査と歴史
19世紀後半にイギリス海軍によって調査が実施される
マリアナ海溝の測深を初めて行ったのは、英国のチャレンジャー号探検航海で、この時の調査船は1875年、イギリス海軍がマリアナ海溝の海洋調査を実施するために派遣したもの。
この当時、最も深い海底の測深結果は、8,184メートルでした。そして、1899年に調査船UUS Neroによって行われた調査では、9,636mが記録されます。
20世紀になると多くの調査が行われるようになる
次のマリアナ海溝の調査は20世紀に入ってから始まります。
(出典:Florida Atlantic University)
1925年に、日本の測量船「満州号」がケーブルを海底まで沈めていく方法を用いて計測し、その時点で9,814mという数値が確認されたことで、マリアナ海溝が世界一深い海であることが世界に再認識されます。
その後1951年、英国海軍はマリアナ海溝のさらなる測深調査を行うため、「チャレンジャー号(チャレンジャー8世号)」と名付けられた、1975年当時のものとは別の測量艦をこの海域に派遣しました。
このチャレンジャー号により音響測深を行ったところ、それまでの記録よりもさらに深い、水深10,900メートルの海底地点が発見され、この時、測深を行った英国海軍の艦名にちなんで、この海底がチャレンジャー海淵と名付けられたのです。
20世紀後半からはさらに多くの調査が行われる
20世紀後半に入ると、さらに多くのマリアナ海溝探検ミッションが遂行されます。
1957年にはソビエトの船「ヴィチャージ」が、その後「ヴィチャージ(ビチアス)海淵」と呼ばれる谷で11,034mの数値を計測したと発表(※この数値の正確性には疑問が持たれ、現在は公式記録として認められていない)。
続いて1962年にアメリカの調査船「スペンサー・F・ビアード」が、非常に正確な計測方法を用いて10,915mの値を得たと発表しました。
また、1984年には日本の計測船である「拓洋」が、最新式のナローマルチビーム測深機を用いて再度計測し、10,924mの数値を発表します。
さらに続いて1995年には、遠隔操作で動く日本の船「かいこう」が、実際にマリアナ海溝の最深部に到達し、世界で最も深い場所に潜った記録を樹立。
その深さはなんと10,911mでした。
2000年以降になっても続く調査
20世紀が終わった後も、世界一深い海マリアナ海溝の調査は引き続き続けられていきます。
2009年には、ハワイ大学が運用する調査船キロ・モアナ(Kilo Moana)に搭乗した研究者らが実施したソナーマッピングによって、チャレンジャー海淵の水深が10,971mと測深されます(±22mの誤差の可能性を含む)。
そして、最新の測深調査は2010年、米国の海洋水路測量センターによって実施され、水深10,994m(±40メートルの垂直精度を含む)という測深結果が出ました。
(ジェームズ・キャメロンによる潜行)
さらに、2012年には映画監督のジェームズ・キャメロンによって、一人乗りの潜水艇ディープチャレンジャー」での潜行が行われ、その時は10,898mの海底に到達したという記録が残っています。
マリアナ海溝と地震
世界一深い海であるマリアナ海溝は、フィリピンプレートと太平洋プレートの境界線に沿っており、太平洋プレートはこの境界の東南側、フィリピンプレートは北西側に存在しています。
この2つのプレートは、いずれも北西方向に動いていますが、太平洋プレートのほうがフィリピンプレートより速い速度で移動しており、移動速度が速い太平洋プレートがフィリピンプレートの下に沈み込む現象が起こるため、この2つのプレートの動きにより収束型境界(圧縮力が掛かりながらプレート同士が接近している境界)が生じます。
すると、太平洋プレートがフィリピンプレートの下に入り込みマントルに沈み込んでいくため、マリアナ海溝で沈み込み帯が形成されていくのです。
この2つのプレートの衝突は、湾曲したプレートの境界に沿ってさまざまな速度で起こると同時に、太平洋プレートがマントルに沈み込んでいく時、スムーズにはいかないことと、一定な動きではないことから、このプレートの境界付近では繰り返し地震が発生することになります。
また、ひずみが蓄積されていくことで突然、プレートが一度に数ミリから数メートルも滑り動くことがあり、この地殻変動が地震波となって地上に伝わることもあります。
マリアナ海溝は巨大地震の発生源にはならないと考えられてきたが・・・
ただし、マリアナ海溝は巨大な地震の発生源にはならないと考えられてきました。
それは、マリアナ海溝の沈み込み帯は非常に安定性の高いものであるため、大きな歪みが生じることはほぼないと考えられてきたから。
しかし、2004年のスマトラ島沖地震と2011年の東北地方太平洋沖地震の両巨大地震では、マリアナ海溝と似た海溝が震源となったため、現在ではマリアナ海溝も巨大地震の震源地になる可能性が考えられるようになっています。
(参照:National Geographic)
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世界一深い海マリアナ海溝|その深さや調査歴史・地震のことについて探るのまとめ
海岸線、そして水平線を越えた先には、私たちの知らない深い海が広がっています。
そのほとんどは未だに人知の及ばない世界で、世界一深いマリアナ海溝についても、同じようにまだまだたくさんの謎が残っています。
地上とは比べ物にならない環境であっても、そこには多様な生命が住んでおり、また、その活動も我々の想像を超えた不思議なものばかりです。
地球の奥深くには、多くの謎が隠されているというのは、非常に興味深い話ですよね。
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