毒を持つ鳥が存在することを知っていますか?ピトフーイ属と呼ばれる鳥達からヨーロッパウズラまで、数は限られますが世界には毒鳥が存在します。
毒を持つ動物といえば、魚、蛇、カエル、蜘蛛のいずれかを思い浮かべることが多いと思います。
しかし、実は鳥類の中にも、毒を持つ種類のものが存在することを知っていますか?
毒を分泌して攻撃する鳥はいませんが、体内に毒を持ち、食べたり触ったりすると危険な鳥が、実は少数ですが存在するのです。
この記事では、そんな毒鳥または毒を持つ鳥として知られる鳥達を一覧にして紹介していきます。
毒を持つ鳥1:ピトフーイ属
ピトフーイ属はニューギニア島固有の鳥の属に含まれる鳥全般のことで、固有の鳥を指す言葉ではありません。
かつては6種類(カワリモリモズ、ズグロモリモズ、ムナフモリモズ、サビイロモリモズ、クロモリモズ、カンムリモリモズ)の鳥がピトフーイ属に含まれており、その6種類ともモズヒタキ科に属するとされていましたが、近年、その6種類は、
- コウライウグイス科
- モズヒタキ科
- カンムリモズビタキ科
の3つの別の科に分類されました。
そしてさらに分類の見直しがされた結果、現在、ピトフーイ属に含まれるのは、厳密にはコウライウグイス科に含まれる、
- カワモリモズ
- ズグロモリモズ
- 新たに加わった2種類
の、合計4種類の鳥となっています。
いずれにせよ、かつての6種類の鳥を含んだ定義でも、ムナフモリモズを除く5種類の鳥は毒を持つ鳥として知られ、また、現在の4種類を含むピトフーイ属の定義でも、そこに含まれる鳥達は毒を持つことで知られます。
ピトフーイ属に含まれる鳥達は、共通して「鮮やかな色をして雑食性である」という特徴を有し、ピトフーイ属の鳥の皮膚と羽には、強い神経毒が含まれているのです。
これは、外部寄生虫や蛇、猛禽類、人などの天敵から身を守るための化学的防御だと考えられています。
ただし、毒ヘビのように、自ら毒を生成して分泌する生き物とは違い、あくまでも捕食した餌から毒を得ていると考えられています。
毒を持つ鳥2:ズグロモリモズ(ピトフーイ)
上のピトフーイ属の解説の中でも出てきたズグロモリモズは、単体の鳥を指す時に「ピトフーイ」と言った場合に主な対象となる鳥で、有毒の鳥の中では最強の毒を持つのではないかとされる鳥。
その毒はヤドクガエルの猛毒と似ており、羽一枚分の毒で人間さえも死んでしまうと言います。
スズメ目カラス科の鳥で、インドネシア、ニューギニア島と、その周辺の島々に住み、黒とオレンジ色の羽を持っているのが特徴。
また、このズグロモリモズとその親戚のカワリモリモズ、そしてムナフモリモズの3種は、世界で初めて毒を持つ鳥として発見されました。
ズグロモリモズは、皮膚や羽にホモバトラコトキシンという神経毒を持つため、この鳥に触れると痺れやヒリヒリした痛みを引き起こします。
ちなみに、ズグロモリモズはジョウカイモドキ科の甲虫を食べることによって毒を得ていると考えられています。
毒を持つ鳥3:カワリモリモズ
ズグロモリモズと同様にスズメ目カラス科に属し、同じピトフーイ属に分類され、インドネシアやパプアニューギニアなどに生息する小さくて色鮮やかなカワリモリモズも、世界で初めて発見された有毒な鳥の一種。
(出典:wikipedia)
亜熱帯や熱帯の低湿地の森に生息しています。
同じ種類の鳥であるものの、羽のパターンの違いだけで20を超える亜種に分けられるなど、多様な見た目のものがおり、かつては別種と考えられていたほど。
このうち、2種類はズグロモリモズにとてもよく似ています。
現在は、再度分類の見直しがなされ、11の亜種を含む鳥となっています。
毒を持つ鳥4:ズアオチメドリ
鳥綱スズメ目に分類されるズアオチメドリは、ズグロモリモズやカワリモリモズのようにピトフーイ属には含まれませんが、ニューギニアに生息し、毒を持つ鳥として知られます。
「イフリット(Ifrit)」としても知られ、また現地の村の人々には「ナニサニ(Nanisani)」とも呼ばれています。
ズグロモリモズと同様、このズアオチメドリも餌から毒を取り込み、皮膚や羽に保有する能力を有し、触れた者に痺れとヒリヒリとした痛みを与えます。
毒を持つ鳥5:チャイロモズツグミ
スズメ目のモズヒタキ科に含まれるチャイロモズツグミは、害の無さそうな見た目をしていますが、とても有毒な鳥。
オーストラリア、インドネシア、パプアニューギニアに見られ、亜熱帯・熱帯の低湿地の森や、亜熱帯・熱帯の多湿な山に生息しています。
中南米のフキヤガエル属の分泌物に含まれているバトラコトシキン(BTXs)に似た物質を保有しているとされ、それによって毒を持つ鳥となっています。
現在は20に及ぶ亜種が確認されていますが、他の有毒な鳥と同様に、今後は分類の再編成があるかもしれません。
毒を持つ鳥6:ツメバガン
カモ目カモ科に属するツメバガンは、これまで紹介してきた毒を持つ鳥とは大きさ的にも系統的にも全く異なる大きな鳥。
全長は1m弱にもなり、アフリカと中東に生息。特にアフリカで見つかるカモ類の中では最大種になります。
その名前にある「ツメバ」から分かる通り、翼の前面中央部、ちょうど翼を中央から折りたたむ部分にある翼角には、先端が尖った蹴爪があり、オス同士での戦いに用いられ、さらに人間に攻撃を加えることさえあります。
他の毒を持つ鳥と同様に、ツメバガンも捕食した昆虫から毒を一時的にでも蓄える能力を有します。
ただし、他の有毒な鳥のように羽や皮膚に溜め込むのではなく肉に溜め込むため、このツバメガンの肉を食べることで中毒症状が起こるという点は大きな違いです。
毒を持つ鳥7:ヨーロッパウズラ
ヨーロッパからアジア地域にかけてまで生息し、ヨーロッパでは普通に食用とされているヨーロッパウズラは、これまでの歴史の中で、多くの人々に「コータニズム」と呼ばれる中毒症状を引き起こしてきました。
実際、紀元前4世紀頃の古代ギリシャでは、すでにヨーロッパウズラを食べることで引き起こされる中毒症状が知られており、かの有名な哲学者であるアリストテレスもそのことを言及していたと言います。
地上で生活していることから、地面で見つかる種子や昆虫類を食べており、これらの餌の中に毒を持つものが含まれ、この毒が一部のヨーロッパウズラの脂肪や肉に蓄積されるようなのです。
ただし、ヨーロッパウズラの毒に対する感受性は人によりけりで、同じヨーロッパウズラを食べても中毒症状を発症しない人もいて、さらに、近年は捕食環境が変わったからか、中毒症状はほとんど起きていないとされています。
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毒鳥・毒を持つ鳥一覧|ピトフーイ属からヨーロッパウズラまでのまとめ
毒を持つ鳥達を一覧にして紹介してきました。
一見すると非常に可愛らしい外見を持ちますが、数が限られているものの、世界には毒を持った毒鳥が存在するのです。