ポリネシア、ミクロネシア、メラネシアの違いを見て行きましょう。3つの地域は同じように見えてもそれぞれに異なった特徴を確認することが出来ます。
太平洋の中でもその大部分が南太平洋に当たり、オーストラリア大陸と合わせてオセアニア地域を構成しているのがポリネシア、ミクロネシア、メラネシアと呼ばれる地域。
この3つの地域には共通した人種的ルーツが存在したり、文化的そして歴史的な背景を見つけることが出来るため、違いについて分かりにくいことが多々あります。
しかし、地理的に3つに分けられている3者の間には、異なる歴史的背景や特徴が存在し、また、それぞれの地域に住む人々の間にも差異を確認することが出来ます。
この記事では、そんなポリネシア、ミクロネシア、メラネシアの3つの地域と人々に関して、それぞれの違いを比較しながら見ていこうと思います。
ポリネシア・ミクロネシア・メラネシアの違いをそれぞれ比較
ポリネシアとは?
3つの「ネシア」のなかでも面積としては最大で、北のハワイ、東のイースター島、南のニュージーランドを頂点とする三角形を構成しているのがポリネシアと呼ばれる地域。
この三角形は「ポリネシアン・トライアングル」と呼ばれ、ポリネシアという名前がギリシャ語で「多くの島々」を意味する言葉に起源を持つことから分かる通り、その領域には1000以上の島々が存在します。
そして、同地域において最大の人口規模を誇る国家はニュージーランドで次はハワイ。
これら両国に加えて他の小さな国々や外国の領土などを合わせると、ポリネシア地域に住む人々の人口規模はおよそ700万となります。
ちなみに、ニュージーランドは本土だけでなく、いくつかの領土をポリネシア地域に所有しており、加えてフランスは、有名なタヒチ島を含めて非常に多くの島をこの地域に抱え、それらはまとまってフランスの海外共同体「フランス領ポリネシア」を形成しています。
ミクロネシアとは?
名目上は独立国であるパラオが最北端で、ミクロネシア連邦、マーシャル諸島、キリバス、さらにアメリカの領土であるグアム、北マリアナ諸島を含むのがミクロネシア。
「ネシア」と呼ばれる3つの中では西側の上部に当たる地域で、およそ50〜60万人の人口を抱えています。
近現代の歴史においては太平洋戦争の舞台となった場所であり、また第二次世界大戦後、この地域は太平洋諸島信託統治領」として国連によりアメリカへ管理が委任されました。
20世紀後半になると、個別に信任統治を終了させて独立する国々も現れ始め、1994年のパラオの独立によって「太平洋諸島信託統治領」自体は消滅。
しかし、それぞれの国はアメリカとコンパクト(自由連合盟約)と呼ばれる盟約を結び、その盟約では軍事権のすべてをアメリカが統括することが条件の一つに加えられています。
さらに、ミクロネシアには第二次世界大戦後の冷戦時代初期に、アメリカの核兵器実験の舞台となったマーシャル諸島があり、中でもビキニ環礁は12年間の間で合計23回の核実験が行われた場所として有名です。
このような近現代の歴史的観点から言うと、ミクロネシアは太平洋における米国の軍事拠点として非常に重要な役割を担っていることが分かります。
実際、ミクロネシアに浮かぶアメリカの領土グアムは、観光地として有名なだけでなく、地政学的に見ると、対アジアの軍事戦略における前線基地であるという見方が出来るのです。
メラネシアとは?
主権国家であるパプアニューギニア、フィジー、ソロモン諸島、バヌアツを含み、ミクロネシアの下側からオーストラリア大陸の北東手前までの地域がメラネシア。
3つの「ネシア」の中では、西側の下部にあたります。
「ネシア」地域に浮かぶ国や島の中では最大規模の人口およそ800万を抱えるパプアニューギニアと、400万弱の人口を抱えるインドネシアのパプア州が含まれるのが特筆すべき点。
ポリネシアやミクロネシアと比較して、人口規模では圧倒的な合計およそ1400万人を抱え、この大きな人口規模によって経済的な活動も比較的活発です。
一方でメラネシア地域は、社会的不安の脅威が比較的大きいと言えるでしょう。
例えば、フィジーは基本的に政治、経済共に安定していますが、1987年、2000年、2006年と3度のクーデターが起きています。
また、ソロモン諸島では2000年、属するガダルカナル島へマライタ島からの移住者が急増し、元々そこへ住んでいた原住民と移住者の間で領土を巡る武力闘争が起こった結果、その後に治安維持目的で多国籍軍が派遣されました。
さらに、国家よりも部族の力が強いパプアニューギニアでは、銅やLNG液化天然ガスなどの資源を巡る部族間抗争が、インドネシアに属するパプア州ではインドネシアからの独立への動きが活発であるといった不安が、存在します。
このように、ミクロネシアは比較的強い社会不安を抱えている地域だと言えるのです。
ちなみに、メラネシアという名前はギリシャ語で「黒い」を意味する「メラス」と「島」に語源を持ち、「肌が黒い人々が住む島々」という意味を持っています。
(豆知識)域外ポリネシアという概念
3つのネシアに分類されるわけではないため、物理的に考えた地域ではなく、どちらかというと文化的な分類または概念として存在するものに「域外ポリネシア」というものがあります。
これは、物理的に見たポリネシア地域外、つまりミクロネシアとメラシネアにおいて、ポリネシア文化に影響を受けた人々が住む島々を指す言葉で、例えばソロモン諸島に属するサンタ・クルーズ諸島のタウマコ島などが該当します。
特に、この域外ポリネシアには、ポリネシア地域で失われてしまった伝統的な知識や慣習が残っていることがあり、その点で重要視されています。
ポリネシア人・ミクロネシア人・メラネシア人の違い
3つのネシアは地理的にも隣接しており、長い歴史の中で人の移動が起こってきたことから、それぞれに住むポリネシア人、ミクロネシア人、メラネシア人は、非常に密接な親縁関係を持つとされています。
しかし、そうであっても、3者の間には注目すべき違いも存在します。
ここからは、ポリネシア人、ミクロネシア人、メラネシア人の違いを見ていきます。
ポリネシア人
ポリネシア地域に住むポリネシア人は、元々は中国南部の華南や台湾にいた人々の一部が、紀元前2500年頃から南下を開始し、その後に様々な民族と交わりながら現在のポリネシアへ移ってきた人々。
そのため、我々日本人と同じモンゴロイドの血を持ち、そこにオーストラリアのアボリジニが属するオーストラロイドの血が混ざった人種だとされます。
そして、このポリネシア人最大の特徴は、ポリネシアという非常に広範な領域に広がって暮らしているものの、異なる地域間での身体的、言語的差異がほとんど無いという点で、肌の色に関しては比較的薄いといった点も挙げられます。
一方で、文化的または社会的な差異は大きく異なることがあります(※ただし、ポリネシア文化の根底にある信仰部分は共通しているとされる)。
ちなみに、ポリネシア人の中で最大の一派は、ニュージーランドに住むマオリ族で、その人口数は70〜80万人だと見積もられます。
ミクロネシア人
ミクロネシア地域に住むミクロネシア人は、ポリネシア人と同じようにモンゴロイドとオーストロイドの混血人種ですが、身体的差異が少ないポリネシア人と比べて、個人間の身体的差異が大きいという違いがあります。
ただし、背が低めの痩せ型で、肌の色は褐色であるのが、基本的な身体的特徴です。。
さらに言語的に見ても、ミクロネシア諸語に含まれる言語以外に、他の言語グループに属する言語が複数存在しています。
メラネシア人
メラネシア地域に住むメラネシア人に関しては、ポリネシア人とミクロネシア人のように、一つの民族グループとしてはなかなか表現し辛い人々だと言えそうです。
と言うのも、他の二つの「ネシア人」と同じようにモンゴロイドとオーストラロイドの混血であるものの、歴史の中でミクロネシアの島々には様々な移住者がやってきたため、地域間での身体的特徴も大きく異なるからです。
加えて、パプアニューギニアのように、一つの国の中で多くの民族を抱える地域も存在します。
例えば、同国においてはミクロネシア人以外にも、オーストラリアのアボリジニに似たパプア人や、センチネル族と同系統のネグリト人、他にもポリネシア人やミクロネシア人が暮らしています。
このような状況から、同じ地域でも現れる身体的特徴が個人間で大きく違うことがある上に、地域間では文化・言語的な差異も大きく、一言でその特徴を表せないのがメラネシア人なのです。
ちなみに、メラネシアの語源が「黒い人達が住む島々」に由来することから、メラネシア人は「肌の色が濃い」と表現されることがありますが、身体的特徴が多岐に渡るため、正確には正しくありません。
実際には、肌の色が濃い人もいれば、ポリネシア人やメラネシア人のように肌の色が薄かったり褐色だったりする人も多くいます。
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オセアニア地域を構成するポリネシア、ミクロネシア、メラネシアの3つについて、その違いを比較しながら見てきました。
この3地域は一見すると同じように見えて、詳しく確認していくと多くの差異が存在することが分かります。