アフリカの宗教と各割合を見ていきましょう。イスラム教とキリスト教のアフリカ2大宗教から、それ以外の少数派の宗教7つを合わせた9つの宗教を紹介していきます。
アフリカにおいて人々の生活は、宗教ととても深い結びつきをもっており、その影響は生活スタイル、アート、文化、そして伝統に大きく反映されてきました。
そして今日、アフリカに住む多くの人々はイスラム教徒かキリスト教徒に分類されますが、割合は少ないものの、他の宗教を信仰する人々も存在します。
アフリカの宗教状況とは一体どのようになっているのか?
イスラム教とキリスト教のアフリカ2大宗教を始め、それ以外の7つの少数派の宗教について、概要やアフリカにおける歴史、それぞれの割合または信徒数を紹介していきます。
アフリカの宗教① イスラム教
アフリカにおいて最大の信徒数を抱え、その割合はアフリカ全人口のおよそ50%と、二人に一人が信仰しているとされるのがイスラム教。
アフリカ諸国全てを合わせた人口が12億人ほどだと考えると、およそ6億人もの人々がイスラム教を信仰するムスリムとなります。
その起源は7世紀にまで遡るとされ、イスラム教がムハンマドによって創始されてからすぐに、北東のアラビア半島を経由して南下する形でアフリカに広まってきました。
そして現在、世界全体における傾向と同様に、アフリカで信仰されるイスラム教の主な宗派はスンニ派。
しかし、シーア派の信徒も比較的大きな割合を占めています。
一方で、スンニ派とシーア派を問わず、神秘主義とされるスーフィズムを実践する者もいたり、また、スンニ派の中には、より厳格な教義の解釈や実践を伴うサラフィー主義を持つ者を見つけることが出来ます。
ちなみに、エジプト、リビア、アルジェリア、モロッコなど、イスラム教国として有名な国がある北アフリカは、アフリカ大陸の中でも特に多くのムスリム達が集中している地域です(対して、他の地域と比較しても、キリスト教やほかの伝統的な宗教が主流となる西アフリカでは、イスラム教徒の割合は比較的低い)。
アフリカの宗教② キリスト教
アフリカにおけるキリスト教徒の割合規模はイスラム教についで第2位。イスラム教と合わせてアフリカ2大宗教となり、他の宗教より圧倒的な信徒数を抱えています。
その割合はおよそ38.3%で、信徒の人口数は約5億人弱(参照:Religious Populatin)。
1世紀中頃にエジプトで信仰され始めたのが、アフリカ大陸におけるキリスト教信仰の起源とされ、
- カトリック教
- プロテスタント
- 正教会(エチオピア正教やコプト教も含む)
- 英国国教会
などの比較的信徒規模の大きい宗派から、
- ユニテリアン派
- モルモン教
- エホバの証人
- クリスチャンサイエンス
- ペンテコステ派を始めとするアフリカ特有またはアフリカ大陸に教徒が集中している宗派
などの少数派が含まれています。
アフリカの宗教③ アフリカの伝統的な信仰
アフリカ古来の信仰や宗教的慣習には、様々な伝統的宗教によるものが含まれています。
また、アフリカ文化と一括りにされることが多いものの、アフリカ文化は非常に多様なため、これらアフリカ古来の信仰または宗教を、一つのものとしてまとめるのは容易なことではありません。
しかし、中には共通する以下のような傾向もみられます。
- これらの信仰のほとんどは書物に基づくのではなく口頭伝承によって伝えられてきた
- 大きな存在そして精霊や神の存在を信じる(アニミズムやシャーマニズム)
- 先祖を崇敬し、魔術や伝統的な(科学をベースとしていない)医学が一部となっている
そして、これらアフリカ古来の信仰または宗教の教えの一部は、アート、儀式や祭典、信仰や慣習、人々や場所の名前、歌や踊り、ことわざ、そして神話という形で残され、現地の人々の考えや生活に影響を与えているのです。
一方で、アフリカ総人口の10%程度がこの「アフリカの伝統的な信仰」を信じていると言われることもありますが、実際にどれほどの人々によって支持されているのかは良くわかっていません。
というのも、その多くが、アフリカに入ってきたキリスト教やイスラム教と融合していったため、実数を把握することが非常に難しいからです。
アフリカの宗教④ ヒンドゥー教
アフリカ諸国の中で南アジア(インド周辺地域)発祥のヒンドゥー教が主な宗教となっている国は、アフリカ大陸南東に浮かぶ島国モーリシャス共和国のみとなっているものの、アフリカ大陸においても一部地域(特に東アフリカ)では、ヒンドゥー教が広く信仰されています。
19世紀後半、イギリスによるアフリカの植民地支配に伴い、多くのインド人が労働者として南アフリカ、そして東アフリカ地域に送られたのが、アフリカでヒンドゥー教が広まった理由です。
そして、この地にやってきたインド人の多くが植民地支配解放後も残り、それと同時にインド文化が残されました。
ちなみに、イギリスの植民地であった地域を中心に、インド系アフリカ人のコミュニティーは現在も大陸各地で繁栄し、ヒンドゥー教徒の数も少しずつ拡大し続けているとされ、その信徒数はおよそ300万前後になると考えられています。
アフリカの宗教⑤ バハーイー教
キリスト教やイスラム教が属するアブラハムの宗教の一つとして数えられるバハーイー教は、19世紀半ばにイランで始まった一神教で、アフリカへは1900年代前半に伝えられました。
そして、現在のアフリカにおいてバハーイー教徒は、アンゴラ、ボツワナ、ケニア、モザンビーク、ニジェール、ナイジェリア、セネガルなど、アフリカの多くの国々に点在し、その信徒規模は200万から250万と考えられます。
一方で、イスラム教を中心とする北アフリカ地域、例えばエジプトやアルジェリアなどにも多くのバハーイー教徒が暮らしていますが、バハーイー教は宗教団体としての権利が剥奪され、社会的地位およびその権利を取り戻すことが困難な状況に置かれています。
そのため、バハーイー教徒の一部はサハラ砂漠以南の地域へ移り住んでいます。
アフリカの宗教⑥ 仏教
アフリカにも20万〜30万と非常に少数ながら仏教徒が存在します。
アフリカで生活する仏教徒の多くは中国、ベトナム、スリランカなどからやってきた移民の血を引く人々で、例えば南アフリカ人口のおよそ0.2〜0.3%が仏教を信仰。
また他にも、インド洋沿岸の国々にも仏教徒のコミュニティーが点在しているほか、人口の3%ほどが中華系住民となるモーリシャスでも比較的多くの仏教徒が確認されています。
ただし、北アフリカにはアジア人が多く生活しているため、実際にはさらに多くの仏教徒が存在する可能性も示唆されていますが、そのうちどれほどの人々がアフリカ国民であるのかきちんと把握されておらず、具体的な仏教徒の割合や数については未知数な点があります。
アフリカの宗教⑦ ユダヤ教
アフリカにおいて古来より脈々と受け継がれる宗教として、ユダヤ教を挙げる人は多くないでしょう。
しかし歴史上最古とされるユダヤ教集団のうちいくつかは、アフリカ大陸に存在していたと言われており、古代イスラエルまたはユダヤ教の伝統にルーツをもち、独自の慣習を発展させてきた小規模のユダヤ人コミュニティーがアフリカ大陸には点在しています。
さらに、15世紀頃になると、キリスト教国家によるイベリア半島の再征服「レコンキスタ」が始まり、スペインに住んでいたセファルディム系ユダヤ人の多くは追放され、その一部はアフリカへやってきました。
また、20世紀にはナチスによるユダヤ人大虐殺(ホロコースト)が起こった結果、今度はアシュケナジ系ユダヤ人(ドイツ語圏や東欧諸国などに定住したユダヤ人)がアフリカへ移り住んできました。
このような理由から、その数は決して多くないものの、現在のアフリカには15万人前後のユダヤ教徒が存在すると推定されています。
アフリカの宗教⑧ 中国の民俗宗教
ここで言う中国の民俗宗教とは、儒教や道教をはじめとする、様々な伝統的な思想から成り立っていることから、正確には全てをまとめて一つの信仰として捉えることは出来ません。
しかし、仮にこれらを中国の民俗宗教と一括りにする場合、アフリカに点在する中華系コミュニティの中で、およそ15万人前後の人々が信仰しているのではないかと推定されています。
アフリカの宗教⑨ ジャイナ教
ジャイナ教は、紀元前6世紀〜紀元前5世紀頃にインドで興った宗教で、アフリカへは19世紀、インドからの移民と共に到来しました。
アフリカにおいてはおよそ10万人前後の人々がジャイナ教徒であるとされ、ジャイナ教徒の移民を初期に受け入れた国の一つであるケニアには、ジャイナ教徒コミュニティーが点在しているとされます。
また、ケニアの首都ナイロビやモンバサにはジャイナ教の寺院があり、そこではジャイナ教に関する文化的、宗教的な行事が定期的に開催されています。
一方で、過去にはウガンダでもジャイナ教徒のコミュニティーが存在していましたが、国の政策転換によって追放され、その多くが南アフリカやタンザニアに移り住んだ結果、これらの国々では現在、ジャイナ教のコミュニティが確認されています。
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アフリカの宗教と各割合|イスラム教とキリスト教は2大宗教のまとめ
アフリカにおける宗教状況について見てきました。
アフリカではイスラム教とキリスト教の2大宗教が非常に多くの信徒を抱えていますが、それ以外の宗教も非常に多く存在し、アフリカの民族多様性並びに歴史を反映していると言えるでしょう。