モーゼの十戒(モーセの十戒)について、歴史的な視点で見ていきましょう。日本語訳や各戒律の意味についてまで紹介していきます。
モーゼの十戒(モーセの十戒)については、映画「十戒」を見たことで知っている人も多いかと思います。
起源は紀元前まで遡るとされており、ユダヤ教やキリスト教においては、神の意思が示された守るべき戒律として歴史的に重要な位置を占めます。
そのモーゼの十戒について、簡単な概要や背景から日本語訳、そして、10の戒律の意味をそれぞれ紹介していきたいと思います。
モーゼの十戒とは?
モーゼの十戒(モーセの十戒:英語ではTen Commandments)とは、紀元前16世紀または紀元前13世紀頃に実際に存在したとされる人物「モーゼ(エジプト生まれのヘブライ人)」が、神から与えられたとされる10の戒律のこと。
当時、古代イスラエルの民族指導者的立場だったモーゼは、奴隷同然に扱われていたヘブライ人をエジプトから救い出す命令を神から受け、多くのヘブライの民達を従えて約束の地を目指すことになります(この中では有名な「海が割れる」エピソードも含まれる)。
その道中、シナイ半島(アラビア半島とアフリカ大陸北東部にある半島)にあるシナイ山の山上に神が現れ、この10の戒律(十戒)をモーゼに与えることになるのです。
ちなみにこの十戒は、2つの石板に掘られる形で記されており、それは神の意思であるとされています。
モーゼの十戒が誕生した時期やあり方に関する主張
モーゼの十戒は、出エジプト記ある通りに解釈すれば、モーゼが生きた時代、つまり紀元前13世紀から紀元前16世紀に誕生したものになります。
しかし一方で、モーゼの十戒は、イスラエルにおける法律及び聖職者の伝統を要約したものだとする主張もあり、この主張ではまた、十戒が作られたのはモーゼが誕生した時代よりもっと後、具体的には紀元前750年以降ではないかと言います。
またモーゼの十戒は、古代世界にとって新しい事はほとんど含んでおらず、古代中東に共通する道徳感を反映したものであるとする解釈もあります。
モーゼの十戒の日本語訳
モーゼの十戒は、旧約聖書の出エジプト記20章2節から17節、そして、申命記5章6節から21節に記されていますが、ここでは、出エジプト記に記された十戒の日本語訳を紹介していきます。
(※出エジプト記と申命記の間では差異が見受けられ、これは、世代から世代へと伝えられる過程で修正が加えられた事を示していると考えられている)
モーゼの十戒日本語訳(出エジプト記から出典)
「わたしは主、あなたの神、あなたをエジプトの国、奴隷の家から導き出した神である。
あなたには、わたしをおいてほかに神があってはならない。
あなたはいかなる像も造ってはならない。上は天にあり、下は地にあり、また地の下の水の中にある、いかなるものの形も造ってはならない。
あなたはそれらに向かってひれ伏したり、それらに仕えたりしてはならない。わたしは主、あなたの神。わたしは熱情の神である。わたしを否む者には、父祖の罪を子孫に三代、四代までも問うが、わたしを愛し、わたしの戒めを守る者には、幾千代にも及ぶ慈しみを与える。
あなたの神、主の名をみだりに唱えてはならない。みだりにその名を唱える者を主は罰せずにはおかれない。
安息日を心に留め、これを聖別せよ。
六日の間働いて、何であれあなたの仕事をし、七日目は、あなたの神、主の安息日であるから、いかなる仕事もしてはならない。あなたも、息子も、娘も、男女の奴隷も、家畜も、あなたの町の門の中に寄留する人々も同様である。
六日の間に主は天と地と海とそこにあるすべてのものを造り、七日目に休まれたから、主は安息日を祝福して聖別されたのである。
あなたの父母を敬え。そうすればあなたは、あなたの神、主が与えられる土地に長く生きることができる。
殺してはならない。
姦淫してはならない。
盗んではならない。
隣人に関して偽証してはならない。
隣人の家を欲してはならない。隣人の妻、男女の奴隷、牛、ろばなど隣人のものを一切欲してはならない。」
(引用元:日本聖書協会『新共同訳 旧約聖書』出エジプト記20章2節〜17節)
モーゼの十戒を簡潔にまとめると
また、各戒律に番号を振って簡潔にまとめたものは、以下の通りです。
- わたしのほかに神があってはならない。
- あなたの神、主の名をみだりに唱えてはならない。
- 主の日を心にとどめ、これを聖とせよ。
- あなたの父母を敬え。
- 殺してはならない。
- 姦淫してはならない。
- 盗んではならない。
- 隣人に関して偽証してはならない。
- 隣人の妻を欲してはならない。
- 隣人の財産を欲してはならない。
(引用:wikipedia)
※モーゼの十戒は宗教や宗派によって微妙に異なり、この引用はカソリックのものになります。
モーゼの十戒の意味
モーゼの十戒について、その歴史的な背景から実際の日本語訳までを紹介してきましたが、ここからは、モーゼの十戒の意味をもう少し噛み砕いて見ていきたいと思います。
今回、この意味の解釈に関しては、dummiesを参考にしている点は事前にご了承ください。
1.「わたしのほかに神があってはならない。」の意味
この戒めは、偶像崇拝および偽の神々や女神達を信じることを禁じ、「唯一の神」を信仰するよう主張しているもの。
例えば、黄金の子牛を作ること、イシス(エジプトの女神)に対して寺院を建てること、カエサルの彫像を崇拝することなどを禁止しています。
2.「あなたの神、主の名をみだりに唱えてはならない。」の意味
この戒律は、神の名に対して敬意を払い賞賛する必要があるという意味を表したもの。
自らの魂と心の奥底からから真に神を崇拝するならば、神の名を何度も唱えることなく、自然と情熱と活力を込めて神を敬うことになるだろうと戒めています。
3.「主の日を心にとどめ、これを聖とせよ。」の意味
決められた安息日を設けて、神を敬うようにするべきという意味の戒律。
ユダヤ教の安息日(主日)は、金曜の夕方の日没から始まって土曜日の日没まで続き、キリスト教のカトリック、プロテスタント、正教会は、日曜日を安息日としています。
4.「あなたの父母を敬え。」の意味
この戒めは、子供も大人も両親に敬意を示すよう義務づけているもの。
子供は両親に従わなければならず、大人は老齢になったり、病気になったりした両親の世話をして、敬意を示さなければならないという道徳的な意味が含まれます。
5.「殺してはならない。」の意味
ヘブライ語からの訳では、「貴方は殺人をしてはいけません(Thou shalt not murder)」となるよう。
この戒律は、無実の人を殺すことは殺人と見なされる一方、自身の生命を守るために不条理な侵略者を殺す(正当防衛で殺してしまう)ことについては、殺してしまった事実は変わりませんが、殺人または不道徳とはみなされないと考えられているそうです。
6.「姦淫してはならない。」の意味
この戒めは、不道徳な性行為、姦通、特に他人の配偶者との性交や配偶者を欺く性交を禁じる意味を持ったもの。
また、未婚の者同士の性交、売春、ポルノ、同性愛行為、マスターベーション、グループセックス、レイプ、近親相姦、小児性愛、獣姦、および屍姦などの性行為も含まれるとされます。
7.「盗んではならない。」の意味
この戒めは、他者の財産を尊重することに焦点を当てたもので、他人の財産を奪う行為を禁じています。
また、カトリック教の解釈によれば、金銭や財産に関して他人を欺く、労働者の正当な賃金を払わない、1日の労働に対する十分な対価を支払わないことも非難する意味があるとしているようです。
加えて、横領、詐欺、脱税、および破壊行為は、すべてこの戒めに反する行為であると考えられます。
8.「隣人に関して偽証してはならない。」の意味
第8の戒めは、嘘への非難を意味しているもの。
神は全ての真実の創造主であるとみなされるので、人間が真実に忠実であるべきだとしています。
つまり、意図的に嘘をつくことで他者を欺いたりしてはいけないという戒めになります。
9.「隣人の妻を欲してはならない。」の意味
この戒めは、第6の戒めと同じように、不道徳な性行為に対する意図的な欲望と憧れを禁じているものですが、特に婚姻関係にあるもの以外の性行為に関して強調しています。
キリスト教のカソリックの中では、人間の性行為は神からの贈り物であるため、正しい性行為は神聖であり、それは同時に正しい婚姻関係の中で行われるべきとして考えられているようです。
10.「隣人の財産を欲してはならない。」の意味
この第10の戒律は、他人が所有する財産を羨んだり、奪い取ることを禁じたもの。
他の人々が所有しているものに対する盗難や、財産を持っていることに対して嫉妬することを非難しています。
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モーゼの十戒(モーセの十戒)|意味の解説までを見ていこうのまとめ
ユダヤ教やキリスト教の歴史において、重要な位置を占めるモーゼの十戒について、概要から意味までを見てきました。
モーゼの十戒に興味を持った人は、映画「十戒」を見てみると、また違う発見が出来るかもしれません。
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