天山山脈/テンシャン山脈|標高の高い山々や観光場所までを紹介

天山山脈またはテンシャン山脈と呼ばれる中央アジアの山脈について解説していきます。数多くの山々から観光地まで有する、壮大で美しい山脈です。

カザフスタン、キルギス、ウズベキスタン、そして中国の新疆ウイグル自治区といった中央アジア地域に広がる多くの山々は天山山脈(テンシャン山脈)という山脈を形成しています。

天山山脈は中央アジアに広がる広大な山脈であり、6000m級や7000m級の山々を有し、最高峰を基準とした場合には世界で6番目に高い山脈となり、様々な景色や山道、すばらしい湖などを見つけることが出来るため、その一部は観光スポットとしても知られています。

天山山脈とはどのような山脈なのか?

この記事では天山山脈について、詳しい概要から隠された見所までを紹介していきます。

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天山山脈とは?

天山山脈(てんざんさんみゃく)またはテンシャン山脈とは、中央アジアの奥深くにある雄大で美しい山脈。

中央アジア、中国のトルファン盆地の北の山々から始まって、中国、キルギス、カザフスタン、ウズベキスタンへと、東から西へと広がっています。

また、天山山脈には個別に名前がつけられた支脈(大きな山脈を形成している個々の山脈)が含まれていることでも知られます。

例えば、

  • 中国の新疆ウイグル自治区内に位置する天山山脈東部
    • ボロホロ山脈ボグダ山脈 など
  • キルギスを起点にウズベキスタンのタシュケントまで伸びている天山山脈西部
    • カラタウ山脈タラスアラトー山脈チャトカル山地プスケム山脈
  • 天山山脈の南と南西の境界
    • フェルガナ山脈
  • 天山山脈の中央内陸部
    • → 北はキルギスアラトー山脈、南はカシャクールアラトー山脈、西はフェルガナ山脈、東はアフシラク山脈に囲まれている

といった具合に、天山山脈には支脈となる山々の連なりが多く存在するのです。

そんな天山山脈は、標高が6000m以上となる峰(中には7000mを超えるものもある)を30以上も有し、地球上で最高峰の連峰の1つとして有名。

例えば、天山山脈の中で二番目に高いハン・テングリの意味はウイグル語で「天の王」であり、こうした山々の名称が、「天(空)の」あるいは「神の」山々という意味を持つのは、偶然ではないのです。

中には、未だ登頂されたことがない未踏峰がいくつか存在していることでも知られます。

一方で、山麓の丘、ゆるやかな勾配、多くの渓谷と湖が長く連なり、暮らしの面でもレクリエーションの面でも、他の世界最高峰級の山脈に比べて天山山脈は魅力的だとされます。

実際、多くの多様な登山道や現代的なインフラのおかげで、天山山脈は観光客を引き寄せており、軽めのトレッキングから本格的なトレッキングのためのルートがあり、冬季にはスキーツアー、夏季には湖のビーチでゆったりとした休日を楽しむことができます。

またその他、環境保護や民族学に強い関心のある観光客向けの興味深いツアーも多数あることで、一部の人の間では大変な人気を博しています。

天山山脈の山々はウィンタースポーツで人気

天山山脈は、冬季になるとウィンタースポーツを楽しみにやってくる観光客で人気になる点について、もう少し詳しく触れておきましょう。

天山山脈の山々は、スノーボードやスキー場として人気があり、12月から4月までがシーズン。

この時期の天候は、穏やかに晴れることが多いです。

カザフスタン、ウズベキスタン、キルギスタンのスキーリゾートでは、コースの複雑さやコース配置のいずれの点においても多種多様なコースが用意されています。

さらに、人気の観光地や新しいルートもあり、なかにはヘリコプターで山頂まで移動し、氷河から滑り降りてくるというツアーもあります。

特に、各国にある天山山脈に設置された以下のスキー場は人気です。

  • カザフスタン
    • チェンブラク・スキー場
  • キルギス
    • カラコル
    • カシュカ・スー
    • オルロフカ
    • オルーサイ
  • ウズベキスタン
    • ムガン
    • ベルデルサイ

こうした天山山脈に作られたスキーリゾートのインフラは、ヨーロッパのお手本となるスキーリゾートの指導を受けて、年々、改善されています。

加えて現在の所は、ヨーロッパや日本のスキーリゾートとは違い、まだそれほど知られておらず観光客が少ないという点も考えると、ウィンタースポーツ好きにとっては隠れた穴場であることは間違いないでしょう。

天山山脈(テンシャン山脈)にある7000m級の2つの山

天山山脈には、標高3840mのサウイル・スオタシ、標高4886mのトムルティ山、標高5168のピク・ボリサ・エリツィナ、標高6627mの雪蓮峰と、標高の異なる山々が多く含まれますが、中でも標高7000mを超えるポベーダ山とハン・テングリは圧巻です。

ポベーダ山

ポベーダ山は、標高7439mを誇る天山山脈の最高峰で、キルギスタンと中国の国境に位置する山。

全方位を山脈で覆われていることから、長い間、未登頂のままであり、標高が正確に定められたのは1943年になってからのことでした。

このポベーダ山の威厳ある山頂は、わずかに平坦で頂上が飛び出した形状になっている点が特徴的で、穏やかで何か堂々としているようにさえ見えますが、実際には、雲の下で強烈な暴風が吹き、上空から霧が立ち込め、雪崩が発生することも多くあります。

このような気象条件から、ポベーダ山については、7000m級の山々のなかで最も登頂が難しい山の1つという意見もあるほどです。

ハン・テングリ

ハン・テングリはポベーダ山についで天山山脈の中では二番目に高い標高7010mをし、はるか大昔から知られる、中国の新疆ウイグル自治区、カザフスタン、キルギスの3つの国境線上にある山。

山頂は美しいピラミッド型で、上部を覆う15m級の氷河は、実際の標高よりもこの山を高くしています。

古代、この土地の住民は、山頂のテングリに神が宿ると信じていたと言われ、それがこの山の名前の由来です。

またもう一つ、「Kan Tau(血の山という意味)」という別名があり、これは、夕暮れ時にハン・テングリが鮮やかな赤色に染まるのが理由。

近隣の山々が薄暗くなっても、ハン・テングリ山頂の雪冠は深紅に染まったままなのです。

さらに、ハン・テングリの一部にはピンク色の大理石があり、それがきらきらと光り輝き、勾配を流れ下る夕暮れ時の川のような効果を演出しています。

このような特徴的な外観から、ハン・テングリは世界一美しい7000m級の山としても名前が挙がります。

そして、登山家たちは、20世紀に入った1930年代半ば以降、この美しいハン・テングリ山頂への登頂に成功してきました。

現在は、ヒマラヤ山脈の「最高峰の山々」に挑む練習台として、カザフスタン側からハン・テングリ登頂を目指す人が多くいます。

天山山脈の隠れた見所8選

チャリンキャニオン

チャリン渓谷は、カザフスタンの最大都市アルマトイから東へ200kmほどの所にあります。

この渓谷は、中国の国境近くにあり、2004年に設立したチャリン国立公園の一部となっており、天山山脈北部のチャリン川に沿って154kmに渡って広がっています。

そして、このひと際美しい場所であるチャリン渓谷は、特徴的な岩の数々と、アメリカ西部の渓谷に生息する種と似通った熊の存在などで知られています。

ジュディオグス峡谷

ジュティオグス峡谷は天山山脈に存在し、キルギスの言葉で「赤壁の7匹の牛」を意味している峡谷。

海抜2250メートルの高さ、三蔵法師が訪れたゆかりの地であり秘境として知られるの尾根テルスケイ・アラトーの北部傾斜部分に位置しています。

そんなジュティオグス峡谷は、松の一種であるコロラドトウヒの木に覆われており、天山山脈の中でも有名な美しい山林地帯で、散策路沿いには流れの速い川が並行して流れ、乙女の涙と名付けられた滝を見つけることが出来ます。

ベゼクリク千仏洞

河谷を見下ろすような形で崖の表面に位置しているのは、絵のように美しい古代のベゼクリク千仏洞。

77の石窟から成るベゼクリク千仏洞は、天山山脈の中国側に位置しており、新疆ウイグル自治区の首都「ウルムチ市」から車を3時間ほど走らせれば到着可能。

数百のブッダが描かれた天井をはじめ、仏教の壁画などによって、この地にやってきた仏教文化や歴史を感じられる場所です。

イシク・クル湖

イシク・クル湖は、天山山脈の北、キルギスの北西にあり、世界で2番目に大きい高山湖。

高山帯にある湖の中では、南アメリカのチチカカ湖に次いで大きく、湖は火山活動によって形成され、長さ182km、幅60km、面積6236㎢もの広さがあります。

この湖は、地下にある温泉によって温められるため、冬の寒い時期でも凍ることがありません。

また、夏の間の水温は25~28度まで上昇するため、水の中は地上より暖かくなっています。

とても水深が深く、暖かくて心地いい温度が保たれているため、何世紀もの間、荒涼とした山岳地帯の環境の中でオアシスのような存在として扱われてきました。

チョルポン=アタのペトログリフ

イシク・クル湖の岸辺に行けば、キルギス北東部のイシク・クル州のイシク・クル地区の都市「チョルポン=アタ」にある、「ペトログリフ(岩石や洞窟の壁に描かれた文字や絵の彫刻)」を見つけることが出来るでしょう。

中国から続く天山山脈の中の1つで、カザフスタンとキルギスの国境にあるクンゲイ・アラタウ山の尾根の麓に、このペトログリフはあり、天山山脈の中でも興味深いスポットとして有名です。

多くのペトログリフは、紀元前8世紀から紀元1世紀の間に描かれたと推定されています。

また、その後のテゥルク系民族による支配時代にほられた彫刻などもあり、この地に生きた人々の軌跡を追うことが出来るのです。

天山山脈一帯で行われてきた歴史的な鷹狩り

タカ目タカ科に属する大きな鳥「イヌワシ」を使った狩りは、食料を得るための狩りとして最も古い手法の1つで、ロシア南部に広がるユーラシア・ステップや中央アジアでは、数千年前から行われていました。

特に、北部・中部カザフスタンやキルギスで盛んで、今でもキルギスを始めとした一部の地域では習慣として受け継がれており、観光客用に鷹狩りを披露している場所もあります。

イヌワシは基本的にコサックギツネや野ウサギなどを捕まえますが、しっかりと訓練された逞しい個体だと、オオカミでさえ捕らえることが出来ると言います。

天山天池(新疆天池)

新疆ウイグル自治区の首都ウルムチから車で訪れることの出来る観光スポットに天山天池または新疆天池と呼ばれる氷河湖があります。

天山山脈の東端にあるボゴダ山の北麓にあり、深い青を帯びた湖は、周りを山やモミの木に囲まれながら優れた景観を形作っています。

この周辺では、点在する移動型テントのユルトや、カザフ人遊牧民のサマーキャンプなどがあるため、現地の人々の生活を垣間見ることも出来ます。

カルカラ谷

カザフスタンとキルギスタンの国境の間に、美しいカルカラ谷はあります。

この地域はかつてシルクロードの一部だったため、カザフスタン、キルギス、中国などの商人たちが盛んに行き来していました。

また現在は、ベースキャンプとして使用され、天山山脈最高峰のポベーダ山やハン・テングリ山へと登る人達の出発点として知られています。

さらに、天山山脈を訪れる人々にとってカルカラ谷のキャンプは、最適な休息場所であるとも言えるでしょう。

宿泊にあたっては、人の背丈ほどもあるテントを利用でき、暖かいシャワーの他に、伝統的なサウナやお酒を飲めるバーまであります。

加えて、この谷では肥沃な土地に住む遊牧民に会うことが出来、移動式テントのユルトの中で地元のお茶を楽しみながら彼らと交流したり、馬上の遊牧民と話したり、馬の乳しぼりなどを体験することも可能です。

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天山山脈/テンシャン山脈|標高の高い山々や観光場所までを紹介のまとめ

中央アジアの山脈「天山山脈(テンシャン山脈)」について見てきました。

天山山脈は、その広大さによって様々な顔を持ち、とても美しくて特徴的な景観を数多く有した秘境なのです。

世界のことって面白いよね!By 世界雑学ノート!

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