中国経済の成長と構造について、いくつかのポイントを紹介していきます。特にビジネスを検討している人などにはおすすめです。
経済発展に関する中国のモデルは、ここ数十年で大成功を収めました。
そのため、中国の経済情報は毎日のようにメディアで取り上げられ、耳にしない日はないと言っても過言ではないかもしれません。
一方で、そもそも中国経済について基本的なことを知らない人も多いのではないのでしょうか?
そこで、中国経済について成長や構造的な点で、抑えておきたいポイントをいくつか見ていきたいと思います。
中国で起業してみたいといった人には特に参考になるかと思うので、確認してみてください。
今日の中国経済に関して知っておきたい3つのこと(特に中国でビジネスを行いたい人向け)
① 中国は現在も歴史的にも経済大国である
1820年代といえば、現在の経済大国No.1のアメリカは、ジェームズ・モンローを第五代大統領として迎えていた時代。
当時の世界は現在とは大きく違い、
- ギリシャがオスマン帝国に対する反乱を始める
- ブラジルがポルトガルからの独立を宣言する
- 産業革命の波が隅々まで行き渡ったイギリスでは世界初の近代的な鉄道が開通する
といったことが起こっていました。
一方、中国では清朝の支配が300年目に突入し、実はあまり知られていませんが、当時の世界最大のGDPを誇る大国として君臨していたのです。
それから200年が経ち、第4次産業革命が進んでいるとも言われている今日、世界中の経済のリーダーやテクノロジーの専門家らが中国に注目しています。
中国は現在、日本を抜いて世界第二位の経済大国にまで成長(※PPP「購買力平価説」を用いて計算した場合は世界第一位)。
19世紀を通して、産業革命が西側諸国に次々と広がっていく中で、一度はその影響力を落としてしまいましたが、1978年以降、前例のないほどの急速な経済成長を続けて今の地位を獲得しました。
このようなことから、数十年前の貧しい中国というのは、本来の中国経済の姿ではなかったと考える方が自然で、中国は過去にも現在でもやはり大国であり、その経済のポテンシャルは大変大きいものなのです。
② 中国のGDP成長スピードは少しずつ落ちている
2016年の第一四半期には6.7%ものGDP成長率を記録したにも関わらず、過去に維持してきた経済成長率と比べると、非常にインパクトに欠けるものでした。
その主な理由は、中国経済の原動力である製造業と建設業の生産高が激減したこと。
しかしそれ以外にも、様々な理由、特に「労働力」「生産効率」「資本」の3つの点を知っておくことが重要です。
以下でもう少しこの3つについて掘り下げていきましょう。
中国経済の成長率へブレーキをかける労働力の減少
中国の人口は2012年にピークを迎え、それ以降労働力は減少傾向にあります。
これは簡単に言えば、中国の経済を支える人の数が2012年以降、少しずつ少なくなっているということ。
特に、中国が近年まで続けてきた一人っ子政策によって、人口構造は不自然な形となっており、これからは労働に参加しない高齢者が増え続ける一方、その高齢者も含めた社会を支えるための生産年齢人口(労働の中核となる人口)は減っていくことが明白です。
つまり日本のように、高齢化社会と労働人口の減少によって経済が停滞し始める一歩手前に来ている可能性もあるのです。
生産性のシフトも中国経済の構造的課題
近年の高い成長率のおかげで、今日の中国経済はほぼ完全に西側諸国に追いついているわけですが、ここからさらなる生産性の向上を望むならば、海外から知識や技術を輸入するだけでは不十分。
中国国内にもっとリソースを投下して、大規模なイノベーションを起こす必要性があります。
これは、どの国にも言えることで、貧しい国は生産性も低いため、生産性が高い国に対して大きなギャップが生じており、そのギャップを狭めていくには、基礎的な知識と技術を移転するだけで大きな効果が期待出来ます。
しかし、一度、基礎的な知識と技術で生産性を高めると、高い生産性を持つ国とのギャップは小さくなり、それ以降の勝負は、単純な知識と技術の移転ではなく、どれだけ革新的なイノベーションを起こし続けられるかが鍵になってきます。
つまり、最低限の基礎が整えられた後に、同レベルの成長スピードを維持することは極めて困難ってこと。
言い換えるならば、世界の経済のトップに「追いつく」ことは簡単ですが、そこからイノベーションを生み出し「先に進む」のは難しい、ということです。
この基礎の移転からイノベーションへ生産性をシフトしなくてはいけない局面を迎えているというのも、中国の成長率が鈍ってきた理由の一つです。
投資レベルの維持が難しくなってきたことも成長率の鈍化に関係か?
さらに、中国は既にGDPの50%という高い投資レベルを誇っていますが、同時に負債額も非常に高くなっています(2016年第一四半期の時点でGDPの237%。2007年末から148%も上昇)。
よって、この状況で高い投資レベルを維持し続けるのは難しいだろうと考えられ、これも、中国経済の成長率の維持に陰りが見えてきている理由です。
③ 経済成長と雇用の最大の原動力は第三次産業の成長
中国のGDPの2/3~3/4は、民間企業によって産出されていると言われます。また、中国の輸出の90%も民間企業が担っているとされます。
そして、中国のGDPの大部分を占めているのは第三次産業で、中でも金融業は経済利益の8割近くを占めている上、労働者の雇用を見てみると、
- 第一次産業に従事している人の割合:約33%
- 第二次産業に従事している人の割合:約30%
- 第三次産業に14時ている人の割合:約36~37%
となっており、第三次産業の成長が著しいのが見て取れます。
また、国内経済の支出の面でも同じような状況になってきており、中国の一般家庭における支出の多くが、教育や医療、エンターテインメント、そして旅行といったサービスの購入に向かって拡大し続けています。
これはつまり、今日の中国市場でビジネスにチャレンジしたい場合、サービス業へフォーカスすると、圧倒的な成長率と合わせて規模を拡大していきやすいと言うことです。
中産階級の増加が後押ししている
ちなみに、このサービス業の成長は、中国国内で中産階級の割合が増えていることを反映しています。
中国国内に中産階級の割合が増加していくのに伴い、「幸福」や「バランスの取れた人生」といった価値観がより重要視されるようになってきており、中国の消費者は多くのお金を「ライフスタイル」、「サービス」、そして「経験の購入」といったものへ充て始めています。
また、大量生産品からより小規模で個人的な「プレミアム価値」のある商品へシフトしてきているのです。
同時に、収入が増加していくのに伴い、貯金することは非常に重要であると考える消費者が多くなっているとされ、現在では、貯蓄率がGDPの50%を超える高貯蓄国家になっています。
このことはまた、金融資産の管理サービスなどを行うビジネスにとっては、非常にポテンシャルの高い環境であると言えそうです。
肉類の需要も拡大している点はチャンスである
一方で、第一次産業に含まれる「肉」の需要が拡大してきている点は、中国でビジネスを考える日本国内の畜産農家にとってはチャンスと言えるかもしれません。
これは、中産階級が増えて収入が高くなったため、栄養価の高い肉類の消費が伸びたのが理由です。
しかし、中国国内では食肉の消費が増えているにも関わらず、食肉に関する不正事件が起こるなど、消費者の目は年々厳しくなってきています。
また、中国では日本の神戸牛など、質も味も圧倒的に優れた食肉を、高い金額を払ってでも食べたいという人が増えてきています。
このような理由から、信頼のおける日本産の食肉を消費拡大が目覚ましい中国へ輸出することは、大きなビジネスチャンスにつながると言えそうです。
他にも知識として頭に入れておきたい中国経済の成長や構造に関すること
富める者とそうでない者とのギャップ
中国経済は、人間が生活する上で最も根本的な「食」に関して三つの重荷を抱えています。
- 飢え
- 栄養不良
- 栄養過多
の3つが同時に存在しているのです。
飢えについては大きく改善してきましたが、それでも全世界で飢えに苦しんでいる人々の5分の1(約1億4,000万人)が中国に住んでいます。
さらに、5歳未満の子供の8~10%が発育不良とされるなか、一方で肥満人口も拡大しており、20歳以上の肥満割合は27.9%で、20歳未満では19%にも達しているとされます。
このことは、中国国内の貧富の格差拡大を意味していると同時に、栄養不良状態によって起こり得る医療費の拡大などが、中国政府の財政に重荷となってしまう可能性を示唆しています。
また、貧富の格差拡大を抑えることは、中国経済の安定した成長を維持するにはとても重要なことです。
中国の積極的な海外直接投資
中国は世界のあらゆる地域に対して、積極的な海外直接投資(FDI)を始めており、年々活発化しています。
その規模は、2015年時点において、1,457億ドルとなっており前年比で18.3%の増加。アメリカについで世界2番目の規模にまで成長してきています。
投資の大部分は、開発資金協力援助の形をとっており、これまでアフリカを始め、アジア各国やラテンアメリカなどに巨額の投資を行ってきました。
さらに、中国はシルクロード地域に投資することで、中央アジア諸国を含めた包括的な経済成長と開発を目指す「一帯一路構想」を呼びかけています。
このような状況から、今日の中国の国際的な投資総額は、6つの主要な国際機関の合計額とほとんど変わらないほど大きなものになってきているのです。
積極的な海外投資を通して、中国はアフリカと長期に渡って関係を築き上げてきました。
その結果、2009年にはアフリカ最大の貿易相手国だったアメリカを追い越し、今日、中国はアフリカ最大の貿易相手国になっています。
特に、中国ーアフリカ間の農産物取引は拡大し続けており、農業主導の成長戦略や政策への提言における、この地域でのこれまでの中国の成功によって信頼を得ており、さらなるアフリカの発展に寄与することが可能な状態です。
環境問題は都心部に住む中国人にとって最大の関心事の一つ
経済成長を続ける中国の、特に都市部に住む人たちの間で最大の関心事となってきているのが環境問題。
北京が霧に包まれたようになっている画像や動画は目にしたことがあるかと思いますが、大気汚染への不安が拡大しています。
また、水質汚染も同様に危機的で、中国国内で飲用に適している水は半分にも満たないとさえ言われます。
この環境問題は、中国に住む人々の健康を害するだけでなく、健全な経済活動にも影を落としており、中国経済が発展する上では解決するべき問題です。
一方で、この環境問題の結果、中国の投資家の間では再生可能エネルギーが注目されてきており、同時に中国政府も再生エネルギーへ力を入れ始め、「エネルギー効率と環境保護に着目した持続可能な開発モデル」へ移行しようとしています。
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中国経済の成長と構造について知っておきたいこと|ビジネスを検討している人も確認してみよう。のまとめ
成長著しい中国は、2030年までに再び世界最大の経済大国になるだろうと予測されています。
一方で、触れてきた問題も含めて、乗り越えなければならない壁は非常にたくさんあり、全国民が経済成長の恩恵を受けることができるような、健康的でバランスのとれた発展と繁栄を目指す必要があります。
しかし、中国は再び世界最大の経済大国になることは間違いないと言えるでしょう。
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