ヒンドゥー教の神と女神を一覧として12柱紹介していきます。ヴィシュヌ、シヴァ、ブラフマーの3つの主要な神に加えて、9つの神や女神を見ていきましょう。
世界で3番目に多い信徒数を抱えるヒンドゥー教は、インドを起源とする宗教。
インドやネパールなどでは人口の大多数に信じられており、これらの国では、その教えが社会構造や考え方にも繁栄されているなど、非常に大きな影響力を持っています。
そして、ヒンドゥー教には「三神一体(トリムールティ)」と呼ばれる、
- ブラフマーとヴィシュヌとシヴァの3つの神は同一である
- これらの神は力関係の上では同等である
- この3つの神は、異なった機能と姿を持って単一の神聖な存在から現れただけである
という考えが存在するため、ブラフマー、ヴィシュヌ、シヴァの3つの神々については、名前を聞いたことがあるという人も多いかもしれません。
一方で、ヒンドゥー教といってもそこには「無数の考え方」、または「神に対する見方」が存在し、実際のところ何柱の神または女神がこの宗教に含まれているのかについては定まった定義がなく、その数は無限であるとさえ言われます。
そのため、ヒンドゥー教の神全てを網羅するのは困難ですが、この記事では、絶対に知っておきたい三神一体を構成する3つの神に加えて、他にも知っておくと良さそうな9つのヒンドゥー教の神と女神を一覧にして紹介していきたいと思います。
ヒンドゥー教の神・女神1:シヴァ
ヒンドゥー教において、最も影響力を持つとされる神の一人「シヴァ」は、「死、崩壊、破壊」を象徴する神で、宗派によっては「創造、維持、再生」を司る最高神としても位置付けられる存在。
ヒンドゥー教における三神一体(トリムルティ)に含まれる神であるため、ヒンドゥー教に関する話の中ではよく耳にする名前であり、また、その影響力から、アニメやゲームなどのフィクションにも神聖な存在として登場することがあります。
一般的には第三の目を持ち、青い肌の人の姿として描写されることが多く、また一方で、男根の象徴として描写されることもよくあります。
そして、シヴァは多くの異名を持っており、例えば、
- マハーデーヴァ(偉大な神)
- パシュパティ(偉大な王)
- パラメーシュヴァラ(至高の王)
などは、その一部にすぎません。
ヒンドゥー教の神・女神2:ヴィシュヌ
三神一体の中でも「平和を愛する神」であり、人生の守護者または維持者であるヒンドゥー教の重要な神の一人がヴィシュヌ。
秩序、公正、真実の原則を象徴し、シヴァと同じように青い肌を持つ姿で描かれることが多く、また、4本の腕が生えており、それぞれの手には以下の物を握っているとされます。
- 下の左手
- → パドマ(蓮)
- 下の右手
- → カウモダキ(こん棒のような武器)
- 上の左手
- → パンチャジャナ(ほら貝)
- 上の右手
- → スダルシャナ・チャクラ(チャクラムや円月輪と呼ばれる武器)
ちなみに、ヴィシュヌの妻は、富と幸運と繁栄の女神であるラクシュミーで、ヴィシュヌのエネルギーの源であると言われます。
そして、ヒンドゥー教における有力な宗派の一つ「ヴィシュヌ派」にとってヴィシュヌは最高神であり、そこでは「世界に混乱が訪れた時、平和と秩序を回復させるためにヴィシュヌが姿を現す」と信じられています。
ヒンドゥー教の神・女神3:ブラフマー
宇宙と様々な生物の創造主、または、世界を創造支配する最高神で、「宇宙の根本原理」とも表現されることのあるブラフマーは、三神一体の一人。
4つの顔を持ち、それぞれが四方を向いているとされ、他の三神一体に含まれるシヴァやヴィシュヌとは同等の力を持つとされる存在です。
しかし、土着の神々を取り込みながら多くの人によって認識が高まると同時に人気が上がったシヴァやヴィシュヌとは異なり、「宇宙の根本原理」を象徴する神としてなかなか姿が認識されにくかったためか、古代のヒンドゥー教の文献においてブラフマーは最高神として重要視されていたものの、現代のヒンドゥー教においてはそこまで人気がなく重要視されていません。
ヒンドゥー教の神・女神4:ガネーシャ
ガネーシャは、現代のヒンドゥー教において非常に人気の高い神の一人で、三神一体の一人である「シヴァ」と、穏やかで心優しく金色の肌を持つ美しい女神「パールヴァティー」の間へ息子として生まれた神。
- 片方の牙が折れた像の顔
- 4本の腕
- 太鼓腹
という外見的特徴で描かれ、知恵や富の神とされています。
そのため例えば、重要な試験を受ける際や、商売を始める際などに重宝され、特にインド商人などからはとても高い人気を誇ります。
ちなみに、元々は障害を司る神であったものの、長い歴史の中で「障害を除去する神」へと変わり、現在では、信じる者の前に立ち塞がる障害を取り除いて、成功へ導いてくれると考えられています。
ヒンドゥー教の神・女神5:ラクシュミー
「目的」または「目標」を意味するサンスクリット語「ラクシャ」にその名前が由来するラクシュミーは、ヴィシュヌの妻であり、物質面・精神面の両方における繁栄と富の女神。
また、「蓮華の目」と「蓮華の色のした肌」を持つと描写されることから、美や純粋さを象徴する女神としても知られます。
そして、この女神の描写に含まれる一般的な特徴には他にも、
- 4本の腕
- 蓮のつぼみを手にしている
- 巨大な蓮の肌の上に座っている/立っている
といったものが含まれます。
富、豊穣、美、純粋さ、などを司るため、多くのヒンドゥー教徒によって信奉されている人気な女神の一人です。
ヒンドゥー教の神・女神6:クリシュナ
愛と慈愛の神とされるクリシュナは、現代のヒンドゥー教において最も人気がある神であり、そのことから広く信仰されている神の一つ。
また、ヴィシュヌ派の一派によっては最高神として考えられ、ヒンドゥー教の三神一体として世界の維持を司る「ヴィシュヌの化身」とさえ考えられることがあります。
クリシュナという言葉は本来、「黒い」とか「暗い」といった意味を持っているため、元々は黒や暗い青の肌で表現されていましたが、現在ヒンドゥー教においては、ヴィシュヌ神と同じ「青い肌」で描かれることがほとんどです。
そして、人気者の神であるクリシュナは、
- マーダヴァ(春を運ぶ者)
- ダーモーダラ(腹に紐をかけた者)
- ウペーンドラ(インドラ神の弟)
などの異名を多く持つことでも知られています。
さらに、ヒンドゥー教の聖典「バガヴァッド・ギーター」においては、主要な登場人物の一人として描かれています。
ヒンドゥー教の神・女神7:ドゥルガー
「近づき難い者」という意味を持つ「ドゥルガー」は、正義貫く者を保護し、逆に悪を破壊する「戦いの女神」であり、また、神々の火の力を象徴していると言われる存在。
3つの目とたくさんの腕を持ち、それぞれの手には戦いへ向けた武器を持っているとされます。
さらに、この戦いの女神は、トラまたはライオンに乗る姿で描かれ、美しい外見とは裏腹に、非常に勇敢な姿で表現されるのが特徴です。
ヒンドゥー教の神・女神8:カーリー
カーリーと呼ばれるヒンドゥー教の女神は、4本の腕と青色または黒色の肌をした残忍な女性の姿で描かれる「闇の女神」や「死の女神」として知られる存在。
また、ドゥルガーと同じ戦いの女神であるものの、「血と殺戮を好む」という点が大きく異なり、破滅へ向かう絶え間ない時の歩みを象徴しているのが特徴的です。
このような性格を持った女神であることから、カーリーの描写には、
- 腕の一本に武器を持ち、他の一方には生首を持っている
- 牙をむき出しにしている
- 口からは血まみれの長い舌が垂れ下がっっている
- 生首をつないだ首飾りを首にかけている
など、おぞましい表現が多く含まれています。
ヒンドゥー教の神・女神9:スカンダ
スカンダは現代のヒンドゥー教において、戦いに関する最高神であり、神の軍を率いる最高司令官で軍神。
古代ヒンドゥー教(バラモン教時代)においては、インドラと呼ばれる神が軍神として人気を集めていましたが、時代と共にインドラの存在感が弱まり、代わりにこのスカンダが軍神として信仰されるようになっていきました。
三神一体の一人であるシヴァの次男とされ、6つの顔と12本の腕を持ち、大きな孔雀に乗って戦いを指揮します。
ちなみに、仏教において仏法の護法神とされる韋駄天は、このスカンダが起源とされています。
ヒンドゥー教の神・女神10:サラスヴァティー
サラスヴァティーは、学問、芸術、音楽の女神で、また、自由な思考を象徴している存在。
また、水と豊穣を司る女神であるとも言われます。
白い肌で、4本の腕を持ち、ヴィーナと呼ばれる弦楽器を二つの手で支え、残りの二つの手にはそれぞれ数珠とヴェーダ(宗教文書)を持っているのが、外見的な特徴です。
ヒンドゥー教の神・女神11:ラーマ
古代インドの大長編叙事詩で、ヒンドゥー教の聖典の一つにも数えられる「ラーマーヤナ」の主人公として知られる「ラーマ」は、ヒンドゥー教においては真実と美徳の神であり、また、ヴィシュヌ派からはヴィシュヌの化身としても考えられている存在。
心理的、霊的、身体的に人類を完璧に体現していると考えられています。
また、時には実在した人物と言われることもあり、その人物の偉業を描いたものが「ラーマーヤナ」で、この物語の中でラーマは英雄とされているのです。
ちなみに、インドにおけるヒンドゥー教のお祝いの一つ「ディーワーリー(光のフェスティバル)」の期間中、信仰に厚いヒンドゥー教徒達はこのラーマの偉業を祝います。
ヒンドゥー教の神・女神12:ハヌマーン
サルの顔をしたハヌマーンは、身体的強さ、忍耐力、奉仕、そして、学術的献身の象徴として信仰されている神。
ラーマのところで触れたインドの古代叙事詩「ラーマーヤナ」において、悪の力と闘う英雄「ラーマ」を助けたのがこのハヌマーンであったと言われ、インドではハヌマーンを祀った寺院が多く見られたりと人気の神です。
ちなみに、インドにいるハヌマンラングールという体長50〜80cmほどの猿は、ハヌマーンに従っている存在と考えられており、インドのヒンドゥー教寺院などでは保護の対象として大切にされています。
合わせ読みたい世界雑学記事
- ギリシャ神話の神一覧|名前や種類(オリュンポス十二神・ティーターン)などを確認
- ネパールの宗教|割合からヒンドゥー教・仏教・キリスト教などの状況まで
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ヒンドゥー教の神と女神一覧|ヴィシュヌ・シヴァ・ブラフマーに加えて9つの神を見ていこう!のまとめ
無数の神や女神が存在するとされるヒンドゥー教の中でも、特に知っておくと良さそうな12柱の神に関して、名前や特徴などを紹介してきました。
まだまだ他にも多くの神が存在しますが、ヒンドゥー教の神に関する知識の入り口として抑えておくと良いかと思います。