アルメニア文化の特徴とは?現地生活を通して思う10のこと

アルメニア文化の特徴を、実際に現地生活を送った経験を基にして紹介していきます。アルメニアを知る上で抑えておきたい10のポイントです。

今回は、私(筆者)が拠点としているアルメニアに関して、文化的な側面からその特徴をいくつか挙げていきたいと思います。

アルメニアは南コーカサスの小国で、隣にジョージア、アゼルバイジャン、トルコ、イランを抱える内陸国で、それら周囲の国に影響されながらも過去何千年という間、独特なアイデンティティや価値観など、文化的な特徴を維持してきました。

何がアルメニア人をアルメニア人足らしめるのか?

現地に生活しているからこそ感じられる10の特徴として第二弾を紹介してみます。(第一弾はこちら→アルメニアの文化や宗教の特徴10選!アルメニア人を理解するために紹介してみる

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アルメニア文化の特徴1:宗教

おそらく、アルメニア人の最も重要な文化的要素は、彼らの宗教にあるんじゃないかと思います。

まず、アルメニアが国教としてキリスト教を取り入れたのはアルメニアが「アルメニア王国」と呼ばれていた301年のことで、実はこれ、「世界初」のことです。

つまり、

  • アルメニア = 世界最古のキリスト教国

となり、この事実に対してアルメニア人は非常に強い誇りを持っていて、それがアルメニア人としてのアイデンティティの一要素になっていると感じます。

実際、アルメニア人にキリスト教の歴史について話を聞くと、自分達こそが「最も古いキリスト教コミュニティ」であると主張する人が多くいることに気づくと思います。

ちなみに、アルメニアのキリスト教は伝承によると、イエス・キリストの使徒であったバルトロマイとタダイによってもたらされたと解釈されているため、宗派の正式名称は「アルメニア使徒教会(Armenian Apostolic Church)」です。

また、アルメニア正教会と呼ばれることもありますが、ロシア正教会やギリシャ正教会とは異なる、アルメニア独自の宗派になります。

アルメニアのキリスト教については、「アルメニアの宗教|世界最古のキリスト教国の宗教事情を語る」で詳しく解説しているので参照してください。

アルメニア文化の特徴2:言語

アルメニア語はアルメニア使徒教会と一緒に、アルメニア文化またはアルメニア人アイデンティティの形成に最も重要な一つの柱だと思います。

また、ヨーロッパ諸国で主に話されている言語、インドのヒンディー語、イランのペルシャ語などと同じ、インド・ヨーロッパ語族に分類されるものの、独自の進化を遂げてアルメニア語だけで独立した語派を形成しているため、他のインド・ヨーロッパ語族に含まれる言葉とも違いとても独特です。

現在私はアルメニア語を勉強中なんですが、まずアルファベットがアルメニア独自のもので、さらにカバーされている音の範囲も非常に広いため、英語に堪能な自分でもなかなか習得に手こずっています。

そんなアルメニア語は、アルメニア人であることを示すある意味での共通なシンボルとなったことで、1000年以上もの間、世界中に散らばったアルメニア人同士を繋げてきたんだと思います。

ちなみに、アルメニア語はアルメニアのキリスト教国化と密接な繋がりがあるという話が存在します。

その話によると、アルメニアがキリスト教を国教とするにあたり、自らの言語による聖書の訳を必要としました。

そこで、当時の言語学者であり聖人であったメスロプ・マシュトツは、当時のギリシャ文字を参考にして、404年にアルメニア語の文字を創りあげたという話です。

ただし、この文字の創作においては、

  • 聖書を訳すためというのが目的だったのか?ゼロから考案したのか?
  • 以前からあった文字を改造しただけなのか?

など、異なる説が存在しています。

アルメニア文化の特徴3:家族

また、アルメニアとの関わりが10年となり、アルメニア移り住んでから2年が過ぎた経験から言わせてもらうと、アルメニア文化において「家族」というのはとても重要なポジションを占めていると思います。

まず、アルメニア文化において家族とは、日本人が考える以上に強い繋がりを持っています。

例えば、子供達が成人して親元を離れたとしても、2日や3日に一回は連絡を取り合うことが普通で、そこまで頻度が多くない人であっても1週間に一回は連絡を取り合っている感じです(日本人家族の場合、1ヶ月に一回や数ヶ月に一回程度の頻度ですよね?)。

さらに、家族に含まれる人たちの範囲が、日本人が思い描く以上に広いです。

日本人的に言う「従兄弟(いとこ)」を兄弟と言ったり、再従兄弟(はとこ)のことを従兄弟と言ったり、結婚式の時なんかは、従兄弟の従兄弟なんかも、大きな意味での家族または親族として参加することがあります。

また、アルメニアでは子供達はとても大切にされ、成人するまで家族の注目の中心にあり、家族とは関係ない大人達も子供に対しては「ちょっと甘すぎで過保護すぎない?」ってぐらい寛容的です。

なので、日本でたまに話題となる、妊婦さんに対しての冷たい対応とか、子供の声がうるさいと切れる大人といったような問題はまず起こりません。

もちろん、家族の年長者に対してもとても優しいです。

このような、範囲が広くて強い結びつきを持つ家族が存在するからこそ、歴史の中で様々な国に支配されながらも、アルメニア人としての連帯感が守られてきたんだと思います。

アルメニア文化の特徴4:ディアスポラ

長い歴史の中でアルメニア人は、領土を拡大することもありましたが、その地政学的な理由から他国に繰り返し侵攻され続けました

その結果、歴史を通して多くのアルメニア人は自分たちの土地を追い出され、止むを得ず世界各地に離散してきました(※そうでなくビジネスなどをしに自ら出た人も多くいます)。

特に、1915年に当時のオスマン帝国領土内に住んでいたアルメニア人を対象として始まったアルメニア人虐殺は、何十万というアルメニ人を世界中へ離散させることになりました。

一方で、これらの苦い経験は、アルメニア人の強い家族繋がりの価値観と合わさり、世界中にアルメニア人であることを誇りに思う離散民(ディアスポラ)のコミュニティを誕生させることになり、現在の世界においてアルメニアは、非常に強固なグローバルネットワークを持った民族になっています。

そして、彼らディアスポラの多くは、ある時はユダヤ人に似た世界的なロビイストグループとして、ある時はアルメニア人同士の相互援助ネットワークとして、ある時はアルメニアの発展を支える動力源として、アルメニア人にとって重要な存在となっています。

アルメニア文化の特徴5:アルメニア人虐殺

これはアルメニア人と関わり続けた結果として感じている私個人の意見なんですが、現代に生きるアルメニア人、特にアルメニア国外に住むアルメニア人ディアスポラの一部にとって、皮肉にも「アルメニア人虐殺」の苦い歴史が、彼らのアイデンティティを支える一つの要素になってしまっている気がします。

ディアスポラの人々の中には、アルメニア人達に起きたこの不幸な出来事を繰り返し嘆く人がたまにいます。

そういった人の話を聞いていると、「アルメニア人虐殺を受けた悲劇の民」として自らを描いているように聞こえ、それがアイデンティティの一部になってしまっているように感じられるんです。

アルメニア文化の特徴6:食事

アルメニアの食事に関して言うと、「パン」と「」が目立ちます。

まず、パンはアルメニア人にとってなくてはならない食べ物で、どんな料理の時でさえ基本的にパンがテーブルに置かれています。

また、たとえレストランでパスタを注文したとしても、「パンを要るかどうか?」を聞かれるほどです。もちろん、パンを断ればレストランでパンが出されることはありませんが。

そして、もう一つの定番な食事と言えば肉料理。

特に、アルメニア風にマリネした豚肉を串に刺してグリルした豚のホロヴァッツは、レストランだけでなく友達の家に訪問した際や、結婚式などでも出される、定番中の定番料理です。

ちなみに、アルメニアで食事は、ただ料理を食べるだけでなく、友人、親戚、近所の人、さらには玄関をノックする見知らぬ人との交流の時間としてとても重要な文化的要素になってます。

アルメニア文化の特徴7:ホスピタリティー

私の友人(日本・海外問わず)がアルメニアを訪れた時、アルメニアに対する印象としてほぼ全員が共通して言うことがあります。

それが、

  • ホスピタリティー精神高くない!?

というもの。

上で書いた様に、都心部を離れた郊外や田舎では、「玄関をノックする見知らぬ人との交流」が可能なぐらい、アルメニア人は一般的にホスピタリティーがとても高いです。

なぜホスピタリティーがそこまで高いのかの理由は良く分かりませんが、様々な人種、民族、国の人が行き交いしてきた土地柄なので、相手をもてなすと言うことが自分たちを守ることにも繋がっていたのかもしれません。

理由はどうであれ、とにかくアルメニアを訪れた人を丁寧にもてなすというのは、アルメニアの伝統であり文化なような気がします。

アルメニア文化の特徴8:チェス

アルメニア人達に対して「国技は?」と質問すると、日本人が予想しないような答えが帰ってきます。

その答えとは「チェス」。

アルメニアで何世紀にも渡って技術を磨いてきたチェスは、現在では義務教育に取り入れられているほどです。

実際、世界のチェス選手にとって最高位のタイトルとされるグランドマスターの保持者について、アルメニアは1人当たりの保持者数が世界最高だと言われます。

また、このチェス教育によって、アルメニア人の中には数学的思考が得意な人が多い気がします。

アルメニア文化の特徴9:2つのフルーツ

アルメニアには特別な意味を持つ果物が2つあります。

1つ目は、約3000年間、この地域で栽培されているアプリコットで、アルメニア国旗のオレンジ色の起源だと言われることもあります。

日本で手に入るアプリコットはそのまま食べるとそんなに美味しくないですが、アルメニアで手に入るアプリコットはとても甘くて、例えて言うなら小さい桃の様な味がします。

私も日本でアプリコットをそのまま食べることはほとんどしなかったので、アルメニアのアプリコットを食べて感動しました。

そして2つ目は、アルメニア神話において生殖能力のシンボルであるザクロで、様々な場面でザクロをモチーフにした絵画や工芸品を目にします。

ちなみに、現在のアルメニアより西に住む西アルメニア人と呼ばれるディアスポラグループの間には、「子供を授かるために結婚した花嫁がザクロを割ってその種を蒔く風習」があると耳にしたことがあります。

アルメニア文化の特徴10:アララト山

最後に、アルメニア文化においてとても重要な象徴として存在するアララト山に触れておきます。

今でこそトルコ領に組み込まれていますが、かつてアララト山はアルメニア領であったこともあり、周りには多くのアルメニア人が住んでいました。

アルメニアに来ると分かりますが、至る所にアララト山をモチーフにした作品を見つけることが出来るなど、アララト山はアルメニア人にとっては現在でも聖なるシンボルであり、アルメニア人としてのアイデンティティの一要素となっています。

また、アララト山はノアの方舟が流れ着いた場所として有名で、アルメニア人の中には自分たちをノアの子孫だと信じる人が多くいます。

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アルメニア文化の特徴とは?現地生活を通して思う10のことのまとめ

アルメニアで現地生活をしているからこそ感じる、アルメニア文化の特徴を10こまとめてみました。

アルメニアに興味を持った人は、アルメニアへの訪問を検討してみてください。日本にはない魅力満載だと思います。

世界のことって面白いよね!By 世界雑学ノート!

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