アフリカの民族の数は一般的に考えられる以上に多く存在します。誰でも知っているような名前の集団から誰も知らないような集団まで、非常に多様性に富んでいます。
アフリカ出身の人々をイメージする際に、「アフリカの人々はみんな同じだろう」などと思ったなら、それはアフリカの現実を反映していません。
というのも、アフリカには島国日本に暮らしているだけだと想像もつかないぐらい多くの民族が存在するから。
そのため、肌の色が似ていたとしても、または一見すると同じような生活をしていたとしても、よくよく見ていくと、実は異なった外見や文化的背景を持った集団が、アフリカに数多く暮らしていることが分かります。
この記事ではアフリカの民族とその現状について、詳しく紹介していこうと思います。
非常に多くの民族数を抱えるアフリカとその現状
世界の6大陸(ユーラシア、アフリカ、北アメリカ、南アメリカ、南極)の中で二番目に大きなアフリカ大陸には、非常に多様な民族が暮らしています。
その数は数百では収まりきらず、
- 少なくとも3000の民族が存在している
- 2000〜2100もの言語が話されている
(参照:africanholocaust.net)
と言われ、アフリカ大陸に存在する民族の多様性が理解できます(※ただし、あまりにも多様で、民族によっては居住地が点在しているなど、全体の状況が把握出来ないため、正確なアフリカ民族の数や全民族人口の合計数は非常に不明確)。
またその多様性から、キリスト教、イスラム教、ユダヤ教、ヒンドゥー教に加え、古くからその土地に伝わる独自の宗教など、アフリカでは様々な宗教が信仰されていたり、民族によっては、他では見ることの出来ない独特の伝統文化や習慣が多く残っています。
そして、見た目的に同じような肌の色だったとしても、その他の点で大きな差や違いがあるのがアフリカ民族の特徴です。
例えば、とても身長の高いマサイ族やディンカ族がいる一方、非常に小柄なピグミー族などが存在しています。
このように、アフリカには様々な民族が存在しており、実際にアフリカの人々に会っていくと、皆が同じ民族だとは言えない異なった特徴に気づくことになります。
アフリカ民族の中で特に数が多かったり有名だったりする民族を紹介!
アフリカに存在する3000以上の民族をひとつひとつ紹介していくと、一冊の専門書か百科事典が出来上がってしまいそうなので、ここではアフリカに存在する民族の中でも、有名であったり規模が大きかったりする集団をいくつかピックアップし、簡単に紹介していきたいと思います。
ただし、アフリカの民族を紹介する前に、まずは「民族」とは何かについて考えてみましょう。
「民族」という場合、一般的には肌の色や見た目の特徴など「人種」とイコールで考えてしまう傾向にあります。
しかし、民族の定義とは、
民族は一般に、文化、言語または宗教的伝統を共有する人々の集団
(引用:weblio)
一定地域に共同の生活を長期間にわたって営むことにより,言語,習俗,宗教,政治,経済などの各種の文化内容の大部分を共有し,集団帰属意識 (→エスニック・アイデンティティ ) によって結ばれた人間の集団の最大単位
(引用:コトバンク)
など、文化的側面を共有している人々なのです。
そのため、一つの民族が一つの人種である可能性もある一方、数ある民族の中には人種的に差がある人々の集団であったり、同じ民族内の人々より違う民族の人々と比べた方が、遺伝子的にみて共通点が多いケースもあるのです。
この点を踏まえた上で、アフリカの民族の中でも有名、または規模が大きな集団を見ていきましょう。
アフリカの民族① マサイ族
マサイ族と言えば、日本で最も有名なアフリカの民族でしょう。
主にケニアとタンザニアに住んでおり、両地域を合わせた人口数はおよそ150万と、人口規模はそこまで大きくないものの、独特なジャンプや、12.0にもなると言われる驚異的な視力、他にもライオン狩りなどによって、アフリカ民族の中でもその存在感は際立っています。
現在は現地の村へ観光客を招いて独特な文化を披露するなど、積極的に自分たちのコミュニティを外部へ解放していることも、マサイ族が有名な理由の一つです。
アフリカの民族② ズールー族
アフリカ民族の中で、比較的有名でかつ比較的規模の大きな集団として知られるのがズールー族。
南アフリカでは最大の民族集団となり、同国内での規模は1000万人強。そして、その他の地域の人口も合わせればおよそ1200万人の規模を誇る人々です。
そんなズールー族が有名な理由の一つが「戦闘民族」としての歴史で、特に19世紀初頭に強力な軍事力を持つズールー王国を築いた「シャカ・ズールー」は有名でしょう。
一方、1948年に南アフリカで黒人などの有色人種を極度に差別するアパルトヘイト政策が施行されると、ズールー族のコミュニティーには電気・水道・舗装された道路などが整わない状態が続いたという辛い過去も抱えています。
アフリカの民族③ ベルベル人
ベルベル人は主に北アフリカを中心に居住地を構え、アフロアジア語族に属するベルベル諸語を話す人々。
歴史の中で様々な人種が混じって形成された民族集団なため、同じベルベル人でも人によって随分と外見が異なる場合もありますが、多くの人はコーカソイドの外見的特徴を持っています(ネグロイドの遺伝子も持っているため、こちらの形質の方が強い人もいる)。
北アフリカの中でも主にモロッコとアルジェリアに大きな人口を抱え(二つ合わせて最大で3000万人ほどになる可能性もある)、世界全体では最大で5000万人にも上る大きな民族集団です。
そんなベルベル人は、紀元前3000年頃に作られたアフリカの最古の歴史書にも登場し、もともと北アフリカ周辺に居住していた長い歴史を持つ人々であることが分かっています。
その後、西暦7世紀ごろにアラブ系民族の入植が始まり、その影響を受け、現在のベルベル人はアラビア語を話すイスラム教徒であることがほとんどです。
アフリカの民族④ ハウサ人
(出典:pinterest)
ナイジェリアに住むおよそ5500万人を筆頭に、全人口を合わせればおよそ7000万人にも上るとされるハウサ人は西アフリカ最大の民族。
9~10世紀ごろにバグダッドからアフリカに来た伝説の人物バヤジッダが祖先とされていて、現在は人口の99%がイスラム教を信じる大きなムスリム集団です。
アフリカの民族⑤ ヨルバ人
上で紹介したハウサ人と一緒に、ナイジェリアの三大民族の一角を成すヨルバ人は、ナイジェリアにおよそ4150万人の人口を抱え、その他の地域にいる人口も合わせれば4500万弱にもなる西アフリカ最大の民族集団の一つ。
約60%がキリスト教徒で、30%がイスラム教徒、そして残りが現地のアニミズムを信仰しています。
また、ヨルバ人は優れた芸術作品を作ることで有名で、とくに仮面や壺、織物やビーズ刺繍が得意だと言われます。
そして、ヨルバ人達は自らのことを、神話の英雄「オドゥドゥワ」の末裔だと信じています。
アフリカの民族⑥ イボ人
ハウサ人、ヨルバ人と並んでナイジェリア三大民族に含まれるのが、イボ人と呼ばれる人々。
全人口(約3400万)の大半である3300万人がナイジェリアに居住しており、ナイジェリア人口のおよそ20%を占めると言われる民族集団です。
ナイジェリア三大民族の筆頭で、人口のほぼ全てがイスラム教徒であるハウサ人とは対照的に、約56%がカトリック教徒で43%がプロテスタントと、人口のほぼ全てがキリスト教を信仰しています。
アフリカの民族⑦ オロモ人
オロモ人は東アフリカのエチオピア国内における最大の民族集団で、その数はおよそ3500万人。エチオピア人口全体のおよそ34%を占める人々です(参照:theodora.com)。
人口のおよそ50-60%がイスラム教徒で、30-35%がキリスト教徒、そして3%弱が土着のアニミズムを信仰しています。
また、このオロモ人の特徴として、人口の大多数はエチオピアのオロモ州に居住しているという点を挙げられます。
アフリカの民族⑧ アムハラ人
上で紹介したオロモ人と一緒に、エチオピアの二大民族を形成しているのがアムハラ人と呼ばれる民族集団。
エジオピアには約2000万の人口を抱え、その他の地域も合わせた人口規模は約2700万にも上ります。
また、1270年に建国されて1974年まで存在したエチオピア帝国を建国した人々であるため、歴史的に支配階級としてエチオピアを主導してきた人々です。
人口の約85%がエチオピア正教徒で、残りの約15%がイスラム教徒とされます。
アフリカの民族⑨ フラニ族
フラニ族は世界最大の遊牧民族の一つで、大きな牛の群れを引き連れての移動する姿や、長距離交易で有名な人々。
都市部に定住して暮らす人なども増えていますが、現在でも遊牧生活を営む人が多くいます。
ナイジェリアの約1500万人、ギニアの約500万人、セネガルの400万人を筆頭に、全体でおよそ3800から4000万人の人口を抱えると言われ、また、人口のほとんどはイスラム教徒です。
アフリカの主な民族一覧|名前や数を確認しておこう
アフリカの民族の中でも特に有名だったり、大きな人口規模を抱える集団をいくつかピックアップして紹介してきましたが、最後に、その他の民族も含めたアフリカの主要民族(人口1000万を超えるもの)の一覧を掲載しておくので参考にしてください。
(※人口数も掲載してありますが、数に関しては現在の数とは異なる可能性がある点はご了承ください)
主要民族の名前 | 地域 (主な居住国) | 語族 | 人口数 (百万) (年) |
アカン族 | 西アフリカ (ガーナ、コートジボワール) | ニジェール・コンゴ語族、クワ語族 | 20 (年不明) |
アビシニア人 | アフリカの角 (エチオピア、エリトリア) | アフロ・アジア語族、セム語族 | 30 (年不明) |
アムハラ族 | アフリカの角 (エチオピア) | アフロ・アジア語族、セム語族 | 22 (2007) |
バンツー族 | 中央アフリカ、東アフリカ、南アフリカ | ニジェール・コンゴ語、バンツー族 | 9.7 (2015) |
ベルベル人 | マグレブ諸国、 ナイル川流域 (モロッコ、チュニジア、アルジェリア、モーリタニア、リビア、エジプト、マリ、ニジェール、ブルキナファソ) | アフロ・アジア語族、ベルベル語族 | 30-50 (年不明) |
チェワ族 | 中央アフリカ (マラウイ、ザンビア) | ニジェール・コンゴ語族、バンツー族 | 12 (2007) |
エジプト人 | 北アフリカ (エジプト、スーダン) | アフロ・アジア語族、セム語族、コプト語族 | 93 (2017) |
フラニ族 | 西アフリカ (モーリタニア、ガンビア、ギニアビサウ、ギニア、ナイジェリア、カメルーン、セネガル、マリ) | ニジェール・コンゴ語族、セネガンビア語族 | 20 (年不明) |
ハウサ族 | 西アフリカ (ナイジェリア、ニジェール、ベニン、ガーナ、カメルーン、チャド、スーダン) | アフロ・アジア語族、チャド語族 | 43 (年不明) |
フツ族 | 中央アフリカ (ルワンダ、ブルンジ、コンゴ民主共和国) | ニジェール・コンゴ語族、バンツー語族 | 15 (年不明) |
イボ人 | 西アフリカ (ナイジェリア) | ニジェール・コンゴ語族、ボルタ・ニジェール語族 | 34 (2017) |
カヌリ族 | 中央アフリカ (ナイジェリア、ニジェール、チャド、カメルーン) | ナイル・サハラ語族、 サハラ語族 | 10 (2013) |
コイサン族 | アフリカ南部 | コイサン語族 | NA |
コンゴ人 | 中央アフリカ (コンゴ民主共和国、アンゴラ、コンゴ共和国) | ニジェール・コンゴ語族、バンツー語族 | 10 (年不明) |
ルバ人 | 中央アフリカ (コンゴ民主共和国) | ニジェール・コンゴ語族、バンツー語族 | 15 (年不明) |
マグリブ族 | 北アフリカ (モーリタニア、モロッコ、アルジェリア、チュニジア、リビア) | アフロ・アジア語族、セム語族 | 100 (年不明) |
モンゴ族 | 中央アフリカ (コンゴ民主共和国) | ニジェール・コンゴ語族、バンツー語族 | 15 (年不明) |
ナイロート族 | ナイル川流域、東アフリカ、中央アフリカ (南スーダン、スーダン、チャド、中央アフリカ共和国、ケニア、ウガンダ、タンザニア、エチオピア) | ナイル・サハラ語族、ナイロート語族 | 22 (2007) |
北アフリカアラブ人 | 北アフリカ、サヘル (モロッコ、チュニジア、アルジェリア、モーリタニア、リビア、エジプト、チャド、スーダン、マリ、ニジェール、ナイジェリア) | アフロ・アジア語族、セム語族 | NA |
ヌビア人 | ナイル川流域 (スーダン、エジプト) | ナイル・サハラ語族、東スーダン語族 | NA |
オロモ人 | アフリカの角 (エチオピア) | アフロ・アジア語族、クシ語族 | 35 (2016) |
ショナ族 | 東アフリカ (ジンバブエ、モザンビーク) | ニジェール・コンゴ語族、バンツー語族 | 15 (2000) |
ソマリ族 | アフリカの角 (ソマリア、ジブチ、エチオピア、ケニア) | アフロ・アジア語族、クシ語族 | 20 (2009) |
ウォロフ族 | 西アフリカ (セネガル、ガンビア、モーリタニア) | ニジェール・コンゴ語族、 大西洋語族 | NA |
ヨルバ族 | 西アフリカ (ナイジェリア、ベナン、トーゴ、ガーナ、コートジボワール、シエラ・レオネ) | ニジェール・コンゴ語族、ボルダ・ニジェール語族 | 40 (年不明) |
ズールー族 | アフリカ南部 (南アフリカ) | ニジェール・コンゴ語族、バンツー語族 | 12 (2016) |
(参照:wikipedia)
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アフリカの民族|数や有名な集団の名前から一覧までのまとめ
見てきたようにアフリカには3000を超える民族が存在しています。
そのため、アフリカ人として一括りにするのは難しい一方、詳しく調べていけば非常に興味深い人々がたくさんいる場所がアフリカ大陸なのです。