ヒトヒフバエ|生態から摘出や治療方法までを画像や動画と共に紹介!

ヒトヒフバエについて詳しく紹介していきます。人に寄生する恐怖の虫であるヒトヒフバエの生態から、寄生された場合の摘出方法や治療方法までを見ていきましょう。

ヒトヒフバエというハエを知っていますか?

成虫だけを見ていると特に何の変哲もないハエのように思いますが、実は幼虫時代のヒトヒフバエ はまるでホラー映画に出てくる、人に寄生して襲う地球外生命体のような生態を持ち合わせているのです。

ヒトヒフバエが恐ろしい理由とはなんなのか?

この恐怖の虫について知るために、その生態から人が寄生された症例、そして、治療や摘出のために用いられている方法までを紹介していきます。

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ヒトヒフバエとは?

ヒトヒフバエとは、ハエ目ヒツジバエ科ヒフバエ属に含まれる一種のハエ。

ホラー映画さながらに人間を含む温血動物の体内に幼虫を寄生させ、蠅蛆症(よそしょう)と呼ばれる「ウジが宿主の生体組織を食べて成長することで生じる感染症」を引き起こすことで知られます。

ヒトヒフバエの卵は蚊やキンバエ、そしてダニなどによって媒介されることが分かっており、卵を産み付けられた(または付着させられた)こういった虫に人間や動物が接触すると、そこから幼虫が皮膚の下に入り込む場合があり、その後は一定期間宿主の体内で過ごすことになるのです。

また、何も知らない人や動物の体に、人知れず寄生していくのが特徴で、蚊やほかの媒介生物が養分をとるために温血動物の皮膚に留まると、動物の体温によって虫の足先についていたヒトヒフバエの卵が孵り、宿主の皮膚の上に移るのです。

そして、宿主の皮下組織内に入り込んだ幼虫は、そこでおよそ8〜12週間ほど過ごして成長すると、ついには皮膚を破って体の外へ出て行き、一般的には土の上で蛹(さなぎ)となり、そこで1週間以上を過ごします。

ちなみに、ヒトフエバエは海外で「American warble fly(アメリカン・ウシバエ)」とも呼ばれることがありますが、ウシバエはウシバエ属に属しており、人ではなく牛などの家畜や鹿などに寄生するハエであるため、ヒトヒフバエとは異なります。

ヒトヒフバエの成虫

一方で、成虫となったヒトヒフバエの姿は体長1.5〜2.5cm程度で、黄色っぽい密度が濃い短い毛を持つのが特徴ですが、幼虫の時の恐ろしい生態とは違って、他のハエと比べて特段脅威となる特徴は持ち合わせていません。

ただし、成虫としての寿命は短く、9~12日ほどしか生きないという点は、脅威に関係なくヒトヒフバエの成虫が持つ特徴と言えるでしょう。

この非常に短い寿命は、ヒトヒフバエの成虫には口器の機能がないことが理由。

そのため、エサを食べられず長く生きられないのです。

要するにヒトヒフバエの一生とは、交配し、生殖し、死ぬこと以外に無いと言い換えられます。

ヒトヒフバエの生息地

(出典:wikipedia

ヒトヒフバエはアメリカ大陸の中でも、メキシコのベラクルス州中央部を境界として、メキシコ南東部からアルゼンチン北部、チリそしてウルグアイにかけてが主な生息域だと考えられています。

ただし、ヨーロッパでヒトヒフバエによる被害が報告されることもあります(おそらく中南米に旅行した人が帰国してから寄生されていることに気づいたケースだと考えられる)

人間に寄生するヒトヒフバエの気味悪い一生をもう少し具体的に・・・

ヒトヒフバエの幼虫が何も知らない宿主に接触すると、蚊の噛み跡や毛穴、皮膚の割れ目などを通して宿主の肌の下に潜り込みます。

その際には、かぎ針のような口で空気孔を掘り、宿主の体内でも生きられるようにしています。

そして幼虫は、宿主の皮膚の下で3カ月ほど養分を摂取しながら成長していき、その周辺には炎症が広がっていくことになり、この段階で宿主には痛みや痒みが発生することになります。

(出典:University of Florida

ちなみに、ヒトヒフバエの幼虫がエサとしているのは、寄生虫がいることで宿主の体からでる浸出液。

浸出液とは人間の防衛本能として生み出されるものです。

体の組織に異物が入ったり、傷が出来たりした場合に、それを修復するために集められた細胞の集まりで、そこには皮膚のカスやタンパク質、死んだ血液細胞などが含まれます。

また、ヒトヒフバエの幼虫は成長の過程で脱皮を繰り返していくことになりますが、脱皮した殻は非常に柔らかく、最終的には宿主の出した浸出液と混ざりあい、幼虫はこれも食べて栄養とします。

宿主の命までを奪い取ることはない

ただし、ヒトヒフバエは動物に寄生しても、宿主の命を奪い取るようなことまではしません。

そんなことをしたら自分達も生きていくために必要な場所を失ってしまうわけで、宿主は単純にヒトヒフバエにとっての生き延びる手段なのです。

(出典:University of Florida

さらに、上でも触れた通り動物の体は、異物が組織内に侵入するとそれを排除して癒そうとする目的で浸出液を作り出し、これが幼虫の餌となるため、幼虫は宿主の身体中を這いずり回るような必要もなく一箇所に留まります。

そのため、宿主の体から幼虫が出て行ったのち、幼虫が過ごした「穴」は、数日〜数週間ほどで癒され、元の状態に戻るのです。

宿主の体から出て成長になるまで

宿主の体から出て地面に落ちると、それから数時間後に幼虫はエサを食べない状態になり、そして樽型の堅い殻で覆われます。

いわゆる蛹(さなぎ)の状態です。

このようにして蛹となったヒトヒフバエは、さらに2週間ほどをその状態で過ごし、ついに成虫となるのです。

ヒトヒフバエが人間に寄生した怖い話

唯一人間に寄生するハエと言われるヒトヒフバエは、中央アメリカから南アメリカにかけてが主な生息地だとされますが、現地へ行った観光客が自国へ帰ってから幼虫の寄生に気づく話は後を絶ちません。

新婚旅行後にヒトフエバエの寄生に気づいた新婦

結婚したばかりのカップルが、中央アメリカのベリーズを新婚旅行で訪れました。

その新婚旅行を十分に満喫し、カップルは無事に自国へ帰国しましたが、帰ってから新婦は自分の足の付け根部分に何かの傷があることに気が付きます。

最初は気にせずに放って置いたものの、その後に少しずつ痒みを帯びてきたことから、診察を受けるために病院へ行きました。

当初、医師が診察してもその原因が分からず、時間だけが過ぎていきましたが、3人目の医師が診察したところ、ようやく「ヒトヒフバエの幼虫に寄生されている」事実が発覚。

気味の悪いヒトヒフバエの幼虫に寄生されていることが判明して以降、新婦にとってはなんとも後味の悪い新婚旅行となってしまったようです。

頭皮の下で何かが動いてる!?

アルゼンチンから帰国した女性は、帰国してから数週間が経った後、変な違和感を感じるようになりました。

それは、「頭皮の下で何かが動いている感触がある」というものだったのです。

その違和感の原因を突き止めるために女性が病院に行った結果、頭皮にヒトヒフバエの幼虫が寄生していることが判明。

幼虫の一匹は医師の手で直に取り除かれ、もう一匹は手術によって取り除かれました。

興味本位であえて成虫になるまで見届けた研究者

また、ヒトヒフバエ に寄生された人の中には、あえて成虫になるまでそのままにしたというツワモノも存在します。

その人物とは、ポーランド出身でハーバード大学所属の昆虫学者「Piotr Naskrecki」という男性で、2014年にベリーズを訪れた後に寄生に気づき、ほとんどの幼虫は取り除きましたが、二匹だけ体内に残し、さなぎになるまでの成長過程を続行させたのです。

この昆虫学者があえて寄生させ続けた理由は、

  1. 昆虫学者としての好奇心から
  2. 男性であるがゆえに、自身の体から別の生命体を生み出すという千載一遇のチャンスを生かしたかったから

らしいです。

また、この実験記録はビデオに残されており、一般にも公開されています。

Maggot infestation: Harvard researcher Piotr Naskrecki grows botfly larvae in his skin

このはたから見ると気味が悪い体を張った実験の結果、

  • それほど強い痛みを伴うものではなかった
    • 出てくることを知らなければ、気がつかないほどだった
    • というのもヒトヒフバエの幼虫は、宿主に自身の存在に極力気づかれないために鎮痛作用のある物質を出していると考えられるから
  • 皮膚の下で2カ月過ごした幼虫が皮膚の外へ出てくる際に掛ける時間は40分ほどだった
  • 幼虫が完全に体外で出た後、その穴は48時間以内に塞がって元通りになった
  • 寄生していた幼虫が傷口の周りへ炎症を引き起こした際に感染症は生じていなかった
    • これは幼虫自身が分泌する抗生物質によるものと考えられる

ということが確認できたそうです。

ヒトヒフバエに寄生された場合の治療方法って?

ヒトヒフバエの幼虫に寄生された場合、その治療法としては「幼虫を窒息させて引きずり出す」というのが最も有効だとされます。

例えば、中南米に住む人々の間では、薄切りベーコンマニキュア液ワセリンなどを使って、幼虫の呼吸孔をふさぐ民間療法が伝わっています。

WARNING!!! Botfly Maggot Removal

こうすることで、呼吸が妨げられた幼虫が窒息状態に至り、数時間〜1日ほど時間を置いて、頭から出てきた幼虫をピンセット等を使って安全に取り除くことが出来るという方法です。

さらに、ピレトリンなどの安全な殺虫成分を液体のりと合わせ、寄生により腫れてしまった箇所に塗ることで、数時間といったわずかな時間で幼虫を死に至らせることが出来るともされます。

また、幼虫が気持ち悪いということであれば、ピンセットの代わりに毒液を吸引するシリンジなどを使って吸い出すことも出来ます。

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ヒトヒフバエ|生態から摘出や治療方法までを画像や動画と共に紹介!のまとめ

幼虫段階では人間に寄生することもあるヒトヒフバエについて、その生態や寄生された場合の治療法までを見てきました。

ヒトヒフバエはハエとしても稀な、人間に寄生可能な虫です。

また、人間を死に至らせることはないものの、寄生された際の様子はとても気味が悪いのです。

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