アメリカの国花はバラと制定されています。現在はアメリカの象徴となったバラが制定された当時の様子から、バラ以外にも名前が挙がって議論を巻き起こしたマリーゴールドの話しまでを見ていきましょう。
世界最大の経済大国であるアメリカは、18世紀後半にイギリスから独立を勝ち取って独立国家となって以降、国を象徴する様々なものを制定してきました。
例えば、アメリカの国旗として知られる星条旗や、同じ名前を冠した国歌などは、アメリカの地を踏んだことがない人でも知っているでしょう。
そして、アメリカを象徴する存在として、アメリカには国花も制定されています。
この記事では、そのアメリカの国花について詳しく見ていこうと思います。後半では、国花候補として名前が挙がった別の花に冠しても簡単に触れておくので、興味があれば参考にしてください。
アメリカの国花は「バラ」
結論から先に簡潔に示すと、アメリカの国花は「バラ」です。
バラの花は歴史の中で世界中で、愛や美の象徴(同時に戦争や政治の象徴でもある)と考えられきましたが、アメリカ人も、
- 命と愛の象徴
- 美と永遠を常に表すもの
などとして、バラに足し対して特別な感情を持ってきました。
また他にも、「バラを渡すことは、愛国心や相手への愛を伝えることを意味する」と言われるなど、アメリカではバラがとても大事にされてきました。
そんなバラがアメリカの国花として制定されたのは1985年、アメリカ合衆国上院が大統領に対しバラを国花とする決議を可決したのが始まりでした。
そして1986年11月20日、当時のアメリカ合衆国大統領であったロナルド・レーガンが、ホワイトハウスでその法律に署名して公布されたことで、バラが正式にアメリカの国花となったのです。
ちなみに、アメリカのホワイトハウスには4つの庭があることで知られますが、バラを国花へ制定する法律にレーガン大統領が署名した場所こそ、長さ38m・幅18mの面積にバラが植えられた「ローズガーデン(薔薇園)」でした。
バラに関する基礎知識
バラについては、多くの人がどんな植物なのかを知っていると思いますが、ここで簡単な基礎知識を振り返っておきましょう。
バラは低木、または木本性のつる植物で、葉や茎に棘を持つものが多いことで知られ、赤、白、ピンク、黄色などの色があって甘い香りがし、花は5枚の花びらから成るのが特徴。
それぞれの花びらは白またはピンク色のハートのような形をし、花びらの下には4〜5枚のがく片(植物の花を構成する組織で、花を保護する働きを持つ「がく」のひとつひとつ)がついています。
一方で、バラは3500万年もの昔から存在する古い花で、人間がこの花との関わりを強めてからは、常に愛、美、戦争、政治などの象徴となってきた歴史を持ちます。
今日では、アメリカが属する北米はもちろんのこと、北半球を中心にして数多くの種類のバラが世界各地に自生しています。
また、鑑賞用として栽培されることが多い植物ですが、ローズヒップと呼ばれるバラの果実や、バラの花びらは、食用または薬として用いられたり、花びらから精油を抽出したローズオイルは香水やアロマセラピーに用いられるなど、実は多岐に渡る用途に利用されています。
ちなみに、現在でこそアメリカの国花となっており、また北米にもバラの原種がいくつか存在していますが、園芸栽培のバラは約5000年前の中国から始まったよう。
それが長い年月を掛けて、アメリカへ伝播したと考えられています。
アメリカで大切にされていることがわかる事例
アメリカで国花に制定されているバラは、そのステータスに相応しく、アメリカ国内では非常に大切に扱われているのが分かります。
例えば、アメリカに沢山ある公園や花園の多くではバラが栽培されており、アメリカの州全てで栽培されている、数少ない花の一つだと言われます。
また、お祝い事やパレードなどでは必ずと言っていいほどバラが使われてます。
さらに、アメリカ合衆国初代大統領のジョージ・ワシントンもバラを育て、ある品種のバラに対しては自分の母親の名前をつけました。
加えて、アメリカ合衆国では国を象徴する国花だけでなく、50の州それぞれに州を象徴する「州花」が制定されていますが、例えば、ニューヨーク州は国花である「バラ」を州花に制定しています。
他にも、
- オクラホマ州 → オクラホマローズ
- ジョージア州 → チェロキーローズ(ナニワイバラ)
- アイオワ州 → プレーリーローズ
- ノースダコタ州 → プレーリーローズ
など、バラに属する種の花を州花に制定している州が、アメリカ国内に複数存在していることからも、アメリカではどれだけバラが大切にされているかが分かります。
(豆知識)アメリカの国花候補に挙がった花「マリーゴールド」
ちなみに現在でこそバラがアメリカの国花として制定されていますが、それ以前には他の花がいくつか国花候補に挙がっていました。
中でもバラに次いで最も国花に近づいたのが、アメリカ大陸原産のマリーゴールドでした。
この花はキク科の植物であり、タンポポの花をもっとゴージャスにした感じの鮮やかな花が特徴で、高温と低温どちらにも耐えられるためにアメリカの50州全てで確認することが出来、また、このマリーゴールドの生命力の強さは「アメリカの開拓精神」を表していると言われます。
さらに、バラとは違ってマリーゴールドはアメリカ大陸原産であるという特徴を持ちます。
これらの点から、マリーゴールドこそが国花に相応しいとされ、1960年代半ばにマリーゴールド国花案が提案されてから、最終的に国花がバラに制定される1980年代後半まで議論が続いたのです。
マリーゴールドを国花に制定するために大統領へ宛てられた提案
ちなみに当時、マリーゴールド国花論の支持者の一人には、アメリカ合衆国上院議員のエヴァレット・ダークセン(Everett Dirksen)と呼ばれる人物がいました。
ダークセンは1967年、以下のような議論でアメリカ合衆国大統領に対してマリーゴールド国花論を提案したことが、記録として残されています。
ダークセンによる提案
(以下はstate symbols USAの記事翻訳)
大統領閣下:
1965年1月8日にアメリカのマリーゴールドを米国の象徴の花として制定するため、私は上院議員共同決議案第19を紹介しました。本日は司法委員会においての協議へ委ねるために、同決議案を再び紹介しています。
- アメリカの国旗は、ただの色、縞模様、星の寄せ集めでは無く、我々の建国の精神、発展、成長を象徴しています
- アメリカのワシは空の王者で有り、我々の強さ、この国の力強さを実によく象徴しています
- 同様に国花は、我々の国土の美徳と、性質を体現するものであるべきです
- マリーゴールドは北米に現生する花で、真の意味で「アメリカを象徴する花」と言えます
- 特筆すべきことに、50の州全てで成長と繁殖がされています。どのような過酷な気候にも耐え、夏の厳しい日差しにも夕暮れ時の寒気にも耐えられる強さを持つのです
- その逞しさは、この素晴らしい国を築いた我々の祖先である開拓者たちの不屈の精神を受け継いでいます。害虫の被害にも強くて自生する能力が高く、育てるのに多くの手間はかかりません。この花の素晴らしい色合い、レモンやオレンジを思わせる黄色や橙、深みのある茶色やマホガニーカラーは、この国の独創的な性質にふさわしいと言えます
- ラッパスイセンのように快活でバラのように色彩豊か、百日草のように毅然としたたたずまいでありながらカーネーションのように繊細で、 菊のような積極さを持ち、スミレのようにあまねく目にすることができ、キンギョソウのように威厳が有ります
- 人々の精神を魅了して気品を高めるような性質を持つ花。マリーゴールドは庭いじりの好きなアマチュアにとって育てる喜びを味わえる花であり、プロにとっては弛まぬ努力が必要となります
- 世界中のどこでもなく、このアメリカを原産とする花であるからこそ、又、国中どの州でも目にすることの出来るなじみ深い花であるからこそ、マリーゴールドを国花へと採用することを提案したいと思います
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アメリカの国花はバラ|象徴として制定された歴史や豆知識などのまとめ
アメリカの国花について紹介してきました。
アメリカの国花はバラに制定され、アメリカでは最も人気の高い地位を維持しています。
ちなみに、バラを制定している国には他にも、モルディブやイギリスなどがあったりするのでちょっとした豆知識として覚えておくと良いかもしれません。