ゴールデンライオンタマリンについて掘り下げていきます。珍しい猿や世界一美しい猿と呼ばれることもある、南米のブラジルに生息する希少種です。
人間と同じ霊長類には現在、およそ220種のサルが含まれるとされますが、中には非常に美しい猿や珍しい猿が存在します。
そのような種類のサルの一つが、ゴールデンライオンタマリンと呼ばれる南米ブラジルの固有種。
光に当たると金の様に輝いて見える体毛から、「世界一美しい猿」とも呼ばれることがあるサルの仲間です。
この記事では、そんなゴールデンライオンタマリンについて詳しく見ていこうと思います。
ゴールデンライオンタマリンとは?
ゴールデンライオンタマリンは、ブラジルに生息する哺乳綱サル目(霊長目)オマキザル科ライオンタマリン属に含まれるサル(猿)で、言い換えれば我々人間と同じ霊長類の仲間。
その名前からなんとなく想像出来る通り、この小さな霊長類の名前は、アフリカのサバンナを歩き回るライオンにちなんで付けられました。
顔まわりの体毛が伸長してライオンの様に見えるからです。
しかし、体重200kg近くまで成長するライオンとは異なり、ゴールデンライオンタマリンの平均的な体重は620g程度で大きな個体であっても800g程度。また、体長は25〜31cm程度と、サイズ的には非常に小さな猿になります。
ただし、身体的特徴の一つである尻尾は、最大で40cm近くまで伸びます。
そして、名前に含まれるもう一つの「ゴールデン(金)」というのは、光沢があって非常に美しい、赤みがかった黄色やオレンジ色の体毛を持つことに由来します。
そのため、ゴールデンライオンタマリンはまた、「世界一美しい猿」と呼ばれることもあるのです。
ゴールデンライオンタマリンは残念ながら絶滅危惧種に分類されています。
一時期(1960〜1970年代)、食用やペット目的での乱獲、そして開発による生息地の縮小などによって、野生に残っているゴールデンライオンタマリンの数は約200頭にまで落ち込みました。
世界自然保護基金(WWF)とワシントンDCの国立動物園は、世界中の140の動物園にも働きかけて野生への復帰を目指すためのプログラムを開始。
その後、保護努力と飼育下での繁殖が功を奏したことで、今日の個体数は増加しており、野生における数はおよそ3,000頭強だと推定されています。
しかし、それでもまだ少数動物であり、珍しい猿であるることには変わりなく、飼育下での繁殖や野生復帰プログラムが成功しているのにもかかわらず依然として絶滅の脅威に直面していることから、ゴールデンライオンタマリンは未だに絶滅が危惧される状況から脱していません。
また、都市開発などによる生息地の喪失は、ゴールデンライオンタマリンを強制的に移動させることとなり、この移動の際にそれまで遭遇したことのない新しい病気を患ったり、数が減少したことで近交弱勢(近親交配により弱い個体が増加すること)が起きたりなど、これまでとは違った脅威にも直面しています。
ゴールデンライオンタマリンの生息地
ゴールデンライオンタマリンはブラジルの固有種。
このことから分かる通り、その生息域並びに原産地はブラジルで、中でもブラジル南東部の大西洋岸近くの熱帯雨林に生息しています。
この辺りの熱帯雨林は、乾季には落葉するなど、いわゆる「季節」の移り変わりがあり、一年中木々が青々と茂っている有名なアマゾン盆地の熱帯雨林とは対照的なのが特徴。
夏は気温が高くて雨も多くなるのに対して冬は少し涼しく降水量も少なめで乾燥気味になり、年平均の降水量は約1,500mmです。
ちなみに、ゴールデンライオンタマリンの絶滅危機を引き起こしている大きな原因の一つが、ブラジルの大西洋岸(東側)の森林破壊です。
木材のための伐採と、都市化・農地化のための土地開発によって、現在は元の森林面積の20%程度しか残っていません。
しかも、残った森林もバラバラに分断され、個々の狭い森林が点在するだけとなっており、ゴールデンライオンタマリンやその他の野生動物の住み処はどんどん狭くなっていってしまっているのです。
実際、ゴールデンライオンタマリンの現在の生息地は、元々この珍しい猿が住んでいた生息地の2〜5%程度にしか相当しないと言われます。
ゴールデンライオンタマリンの食性と身体的特徴
人間や他の多くの霊長類と同様に、ゴールデンライオンタマリンは雑食性の動物。
よって、基本的にゴールデンライオンタマリンには好き嫌いがなく、
- 果実
- 花の蜜
- 樹脂
- 虫
- 陸棲の貝類
- カエル
- トカゲ
- 鳥類の卵
など、十分に小さなサイズのものなら、毒性のものでない限り基本的に何でも食べ物と見なして摂取します。
ただし、どちらかと言えば果実を食べることが多く、それに加えて他のものを食べるといった傾向かと思います。
雑食であることによって発展したユニークな身体的特徴
このように多様な食性を持つようになったからか、またはこの多様な食性を可能にするためなのか、ゴールデンライオンタマリンには他の霊長類とは違うユニークな特徴があります。
それは、
- 長い指
- かぎ爪のある手
の2点。
長い指は、岩などの狭い隙間に隠れている美味しい食べ物を探す時に役立ち、かぎ爪は食べ物を掘り出したり、小さな獲物を捕まえるのに役立ちます。
その他のゴールデンライオンタマリンの身体的特徴
また、他の一部の霊長類にも共通するものとして、以下のような特徴は、ゴールデンライオンタマリンが生き延びる上で大いに役立っていると言えます。
まずは彼らの長い手で、その長い手を活かして木々の間を飛び移ることが出来るおかげで、樹上生活がより効率的そして安全になっているのです。
さらに、ゴールデンライオンタマリンの尾もとても長く、時には体よりも長いことがありますが、長い尾を持つことで、枝から枝へ体を揺らして乗り移る際にバランスが取れ、これも樹上生活を快適にしています。
加えて、ゴールデンライオンタマリンは小さな猿であるわけですが、この小さな体のサイズによって小さめな木の穴に身を隠すことが可能。
それによって、夜の就寝時には木の穴に隠れて寝ることが可能となり、大型のネコや蛇などの熱帯雨林の天敵から身を守ることが出来ているのです。
ゴールデンライオンタマリンの生態
ゴールデンライオンタマリンは社交的な生き物、言い換えれば「社会的生き物」であると言えるでしょう。
というのも、他の霊長類と同様にゴールデンライオンタマリンは、「群れ」と呼ばれる社会集団を作って生活するからです。
1頭のメスと2〜3頭のオスが含まれる、2頭から最大で11頭までの群れを作って一緒に住み、仲間で食べ物を分け合って子育ての手伝いもお互いにしながら、天敵が近づくのを見張り合うのです。
一夫一妻制が基本
そんなゴールデンライオンタマリンはまた、大抵の場合は一夫一婦制。
つまり、群れの中の1匹のオスと1匹のメスが「つがい」になって暮らし、繁殖行為を行うのです。
繁殖期は9月から3月の雨の多い時期で、そこでメスが妊娠すると、およそ4ヶ月半の妊娠期間を経てゴールデンライオンタマリンは出産します。
ちなみに、人間の世界では双子が生まれるのは稀ですが、ゴールデンライオンタマリンは通常、2頭の子供を産み(但し1頭や3頭、4頭の時もある)、基本的に一年に一回しか出産をしないため、オスとメスのペアはこの2頭の子育てに専念することになります。
群れ全体で新しい仲間の世話をする
そして、群れに新しく加わったゴールデンライオンタマリンの子供達に関しては、群れ全体で世話を行うのがゴールデンライオンタマリン流。
群れのメンバーはオスやメスに関係なく、移動が必要な場合は自分の子でなくても運んであげたり、生後3か月ほどして子供が固形物を食べられるようになると、交代で食事を与えたりします(※固形物が食べられるようになるまでは、母親が授乳を続ける)。
このように、非常に密接に仲間同士が連携し合うゴールデンライオンタマリンの群れの中では、子供達は成長に必要なケアを確実に与えてもらいやすく、その点では非常に優れた社会システムが構築されていると言えるでしょう。
そして、メスは大体生後18ヶ月ほどで性的に成熟し、オスは2歳で性的な成熟を迎え、野生環境下では平均して8年程度、飼育環境下では15年程度生きていくことになります。
ちなみに、ゴールデンライオンタマリンには、生まれた時からその名前の由来となった美しい毛が生えています。
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ゴールデンライオンタマリンとは?珍しい猿や世界一美しい猿と知られる小さな猿のまとめ
ブラジルの固有種であり珍しい猿や世界一美しい猿とも呼ばれる、ゴールデンライオンタマリンについて詳しく見てきました。
現在はまだ絶滅の危機が懸念されています。
この希少種を守るためにも、今後も人間による積極的な保護活動が必要とされるでしょう。