世界最大のムカデ「ペルビアンジャイアントオオムカデ」について解説していきます。人の前腕ほどの大きくて長い体と、猛毒を持ち、獰猛で知られる恐怖のムカデに関して見ていきましょう。
漢字で「百足」とも書かれるムカデは、体全体の両側に対に伸びる脚からその名が付いたとされ、世界各地に生息し、多くの人が駆除されることを願う害虫の1つとして名前が度々挙がります。
もちろん日本にもムカデは生息しており、体長8〜15cm程度になるトビズムカデを目にした人は多いはずです。
一方で、世界には一般的にイメージされるムカデの大きさを遥かに凌ぐ大きなムカデも存在し、その代表例が、世界最大のムカデと言われるペルビアンジャイアントオオムカデです。
この記事では、そのペルビアンジャイアントオオムカデについて詳しく紹介していきます。
ペルビアンジャイアントオオムカデとは?
別名ペルーオオムカデやギガスオオムカデと呼ばれるペルビアンジャイアントオオムカデとは、節足動物として知られるムカデの一種であり、同時に「世界最大のムカデ種」として知られるムカデ。
南アメリカ大陸のペルーやブラジルなどに広がる熱帯雨林、特にアマゾンの熱帯雨林に生息し(他にもトリニダード島、キュラソー島にも生息している)、そのサイズを表現するならば
- 人の前腕ほどの大きさに及ぶ
と言えるほど大きく、通常でも20〜30cm、巨大な個体は40cmを超えるとされる超巨大種です。
他のムカデ同様、ペルビアンジャイアントオオムカデの体は、その姿から確認出来る21から23もの節に分かれており、東部の色は赤で胴体はワインレッド、そして脚は黄色という非常に派手な警告色を持つのが特徴。
その体のサイズから想定出来る通り、牙の威力は強力で、また毒と非常に獰猛な性格を持ち合わせ、現地では人々に恐怖を引き起こす生き物の1つに数えられます。
洞窟などの暗い湿地で生活し、それぞれの節からは対となる脚が伸びており、この脚は迅速な動作に対応することが出来るように素早く動かすことが可能であるため、ペルビアンジャイアントオオムカデは非常に俊敏に動くことが出来、さらに、様々な壁をよじ登っていくことも出来ます。
さらに、頭部からは対となる触角と、頭部の次の胴部第1節には毒腺を持ち、顎のような形になった捕食用の「顎肢」が伸び、この顎肢の先端は鋭いかぎつめとなっています。
獰猛な肉食生物であるペルビアンジャイアントオオムカデ
ペルビアンジャイアントオオムカデは肉食性の生き物として知られます。
ただし、獲物の狩りに関しては少し特徴的だと言えるでしょう。
というのも、この世界最大のムカデの視力は「光と影のみ感じることが出来る程度」であるため、獲物を捕獲する際には視覚や嗅覚を使うのではなく、獲物との接触または自らがもつ化学受容体によって行われるからです。
結果、ペルビアンジャイアントオオムカデによる獲物の捕獲は、一般的に他の多くの動物の動きが鈍くなる日没後に行われます。
頭部の触角が暗闇を誘導し、獲物を探していくのです。
そして、ペルビアンジャイアントオオムカデに触れたものには大小問わず容赦なく噛みつくと同時に、一瞬の動きで顎肢を使って獲物の体へ毒を注入し、この毒は毒性が強いため、大型の動物でない限り獲物は抵抗することなく息絶え、獲物として捕食されてしまうことがほとんどなのです。
コオロギ、蠕虫(ぜんちゅう)、カタツムリ、タランチュラを含むクモ、そしてサソリなどの虫は日常的に食され、無脊椎動物以外にもトカゲやネズミ、ツバメなどの小型の鳥、カエルやヘビなどを含む小型の脊椎動物も食します。
空中を飛行するコウモリを捕らえるほど獰猛なペルビアンジャイアントオオムカデ
また、ペルビアンジャイアントオオムカデの獰猛性や捕食力を理解する上では、アマゾンの熱帯雨林にある洞窟で確認される、彼らの捕食行動を知るのが良いでしょう。
洞窟に生息するペルビアンジャイアントオオムカデが持つ獲物の捕食力は見事なものです。
これら洞窟には多くのコウモリが天井からぶら下がるようにしてくつろぎ、また、洞窟内を飛び回って住んでいますが、ペルビアンジャイアントオオムカデは、天井にぶら下がって寝ているコウモリだけでなく、飛び回るコウモリさえも捕らえてしまうのです。
コウモリを捕らえるため、ペルビアンジャイアントオオムカデは洞窟の壁をつたい、天井に体を移動します。
そして、体の後部にのびる6対の太くしっかりとした脚を使って天井へ体を固定。
これらの脚の先端には鋭い大きなかぎつめがあり、それにより天井にしっかりと後部を固定させることが出来るのです。
そこからペルビアンジャイアントオオムカデは、前身を空中に離して揺らし、寝ぐらについたコウモリのみならず、飛行するコウモリを狙います。
飛行しながら接近してくるコウモリを射止めて食すのです。
ペルビアンジャイアントオオムカデの顎肢に潜む毒について
強力な噛みつき以上に、ペルビアンジャイアントオオムカデの最も重要な攻撃手段は、顎肢が持つ毒がによるものです。
猛毒であるこの毒素には10から62のたんぱく質が含まれ、プロテアーゼ、アセチルコリン、ヒスタミン、鎮痛に作用するセロトニンが合わさったものであるこの毒は、心抑制作用を発揮。
小型の動物や生き物の心拍を停止させることが出来、ペルビアンジャイアントオオムカデが捕らえるほとんどの生物に対して致命的なものとなります。
一方で、人間の成人に対して死に至らしめることはほとんどないと考えられています。
ただし、強い痛みを引き起こし、発熱やめまい、心臓障害や呼吸困難を引き起こすことがあります。
また、子供には大きな影響を与える可能性もあるとされ、過去にはペルビアンジャイアントオオムカデと思われるムカデによって子供が死亡するケースが確認されていたり、アレルギーのある人々にとってはペルビアンジャイアントオオムカデに刺されることが致命傷となる可能性も指摘されています。
実はベットとしても飼われているペルビアンジャイアントオオムカデ
見てきたように、世界最大のムカデであるペルビアンジャイアントオオムカデは、猛毒を持つ顎肢で刺すことにより、大きさが自らの体の15倍ほどにもおよぶ生物さえも捕らえることが出来、多くの人に恐れられています。
しかし、中にはムカデ愛好家として、ペルビアンジャイアントオオムカデをペットして飼っている人もいます。
そして稀に、ほぼ放し飼いと言える自由に動き回ることができる環境を提供するような飼い主もいます。
ただ、そうは言ってもやはり危険な生き物であることには変わりがないため、ペルビアンジャイアントオオムカデをペットとして飼育するためには、外へ出てしまうことを完全に防ぐ容器が必要です。
そして、ムカデの仲間たちは「わずかな隙間からでも脱出する」ことを得意としており、飼い主もこれを注意しながら飼育にあたる必要があります。
また、ムカデは極めて「非社会的」な生物であるため、一匹ずつに分かれて飼育されなくてはなりません。
(豆知識)ペルビアンジャイアントオオムカデを超えるムカデが見つかった!?
世界最大のムカデとして知られるペルビアンジャイアントオオムカデには、40cmを超えるような個体も現れると言われますが、実はこれまで、公式に計測され、ギネス世界記録に登録されたことはありません。
そのため、現在のところ、公式な記録として世界最大のムカデとなるのは、26cmのペルビアンジャイアントオオムカデとされています。
このような状況の中、2018年に、ペルビアンジャイアントオオムカデを超える大きなムカデがハワイで見つかったことが報告されました。
(出典:BuzzFeedNews)
そのムカデを発見した人物は、ハワイのビッグ・アイランドに住んでいる「クレイトン・カンブラ」という人物で、彼がある日、家の後ろの森の中を這いまわっている大きなムカデを見つけて大きなバケツで捕獲。
すると、その19リットルのバケツの中で大きなムカデはコブラのように立ちあがって直立し、さらに、4回か5回ぐらいバケツから這い出してきたと言います。
その後、なんとかこのムカデをプラスチックの容器に入れて冷凍庫で凍らせ、ムカデが死んでから冷凍庫から取り出して解凍。
次の日、発泡スチロールの板の上にピン留めしてから観賞用の標本にするためにホルムアルデヒドを注射し、体のサイズを計測したところ、36.8cmものサイズがあったというのです。
そして後日、ハワイ大学昆虫博物館の館長であるダン・ルビノフは、ハワイ・トリビューン・ヘラルドの取材に対して、カンブラ氏が発見したムカデは「ベトナムオオムカデ」ではないかと述べました。
ベトナムオオムカデは、ベルビアンジャイアントオオムカデと同様に、ムカデの中でも大きなタイプに属する種で、東南アジアに主にいるものの、ハワイでも見つかっているムカデです。
いずれにせよ、世界最大のムカデと言われるベルビアンジャイアントオオムカデの大型個体がこれまでギネス世界記録に登録されてこなかったことで、このハワイで見つかったベトナムオオムカデの個体が、ギネス世界記録に世界最大のムカデとして登録される可能性が浮上したのです。
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世界最大のムカデ【ペルビアンジャイアントオオムカデ】とは?のまとめ
世界最大のムカデとされるペルビアンジャイアントオオムカデについて詳しくみてきました。
最後にちょっとしたお話。
ペルビアンジャイアントオオムカデは、サンゴヘビなどの猛毒のヘビに勝ることもあると言います。
その一例は2014年に行われた研究の一部として、まだ成長段階にあったクサリヘビが、ペルビアンジャイアントオオムカデの成虫の獲物となったという記録で確認出来ます。
20cmにもおよぶクサリヘビが、15cmのペルビアンジャイアントオオムカデを飲み込みました。
しかし、ヘビの餌食となるはずであったペルビアンジャイアントオオムカデが、クサリヘビの内臓そして皮膚を蝕み、体外へ脱出したというのです。