インド経済の成長について見ていきます。特に、今後の成長に影響を与えるであろう国内経済の特徴を中心に、理解を深めていきましょう。
南アジアに位置する大国インドは、中国に次いで第2位の人口規模を誇ると同時に、2018年現在では世界第7位の経済規模を持つ経済大国の一つです。
2016年後半に導入された高額紙幣の廃止や、2017年の夏頃から始まったGTS税によって、一時は経済成長の鈍化などが懸念されたものの、蓋を開けてみれば、2018年も引き続き力強い経済成長を見せており、今後も経済成長は加速していくと予想されています。
今後の成長に関して影響を与える、国内経済に関するいくつかの特徴を中心に、インド経済に関しての理解を深めていきたいと思います。
まずは、今後数年に渡って予想される、インド経済成長状況について確認していくことから始めていきましょう。
今後の成長が予想されるインド経済
2018年6月に世界銀行が発表したところによると、インド経済を停滞させていた要因(注)が薄れた結果、2018~19年には7.3%、その先の2年間では7.5%の国内総生産(GDP)の成長率をインド経済は見せ、世界で最も急成長している新興経済国の座を維持すると予想されています。
これは特に、個人消費の堅調さと投資拡大を反映することが要因。
またインド経済が成長することで、南アジア地域全体の成長率も、2018年に6.9%、2019年には7.1%に上昇すると予測されています。
一方で、経済発展著しい新興国として世界経済を牽引してきた中国は、2017年の6.9%から、2018年には6.5%に、2019年には6.3%、そして2020年には6.2%と、徐々にですが減速していくと見られています。
そのため、今後数年の間、インドは世界経済において、非常に強い位置を維持するであろうことが分かります。
では、今後の経済成長を支えていくであろうインド経済の特徴には、どのようなものがあるのでしょうか?
以下で、いくつかのポイントを簡単に挙げていきたいと思います。
(注釈)
2017年にインド経済の成長を鈍化させるかもしれないと考えられた要因は、高額紙幣の流通中止(通貨廃止)と、GST税(物品サービス税:消費税のようなもの)の導入という二つ。
この2つのインド経済の構造的変更によって引き起こされた混乱は収束しつつあり、それにともなって国内需要に対する楽観論が沸き起こっている。
そしてこの楽観論のおかげで、世界経済における保護貿易主義の拡大や、原油の高騰、不安定なマーケットといった状況にも関わらず、インドは予想よりも速い経済成長を遂げようとしている。
インド経済の成長を今後加速させるであろう5つの特徴
インド経済成長に関する特徴① 国内環境の改善
高額紙幣の廃止とGST税導入による悪影響は収まりつつあり、国内需要についての楽観論が高まりを見せているわけですが、この楽観論が消費行動の活性化や中小企業の活動の活発化といった形をとって、インドの国内経済にプラスの影響を与え初めています。
この状況はまた、海外直接投資が増えるという結果にもつながっており、国内市場の活況が海外からマネーを呼び込むことにも繋がっています。
加えて世界銀行が発表している「ビジネス環境ランキング」におけるインドの評価上昇も、インド経済に対する投資家のマインドに良い影響を与えており、インド経済の成長に一役買っているのです。
また、当初は混乱を招いたものの、GST税を導入したおかげで、インド経済はゆっくりとではありますが、着実に整ったものとなってきている点もポジティブな要素として挙げられます。
インド経済成長に関する特徴② インフラ投資の増加
インド経済を成長させるポジティブな特徴として、インフラ開発への関心が高まってきている点も言及しておくべきでしょう。
インフラ整備に関しての予算は、2017年度に4.94兆ルピーであったのに対して、2018年の国家予算では、実に5.97兆ルピーを割り振っていくと発表されています。
その計画によると、2022年の3月までに8万km以上の舗装道路を完成させる予定とのこと。
さらに、国際的なパートナーシップを拡大して、インフラ整備のプロセスを加速させる準備を既に始めています。
近い将来、インド国内のインフラが改善することで、生産や流通の効率が高まり、経済成長の底上げに繋がると考えられるのです。
インド経済成長に関する特徴③ 政治的腐敗に対する一定の改善
世界経済フォーラムが出版する年次報告書「世界競争力報告(Global Competitiveness Report)」の2017年度版によると、インド経済の成長を妨げる要因として、未だに国内の政治的腐敗が最大の要素になっているものの、一定の改善が見られていると報告されています。
この改善は、2014年に現インド首相「ナレンドラ・ダモダルダス・モディ」が首相に選ばれてから続いており、特に、公共支出に関しては全世界の国の中でも23位にランクインするほどまでに改善してきているとしています。
政治的腐敗は経済成長を妨げる大きな要因となる点を考えると、このことはインド経済の成長にとってポジティブな特徴ではないでしょうか。
インド経済成長に関する特徴④ 人口増加
インドの人口規模は2017年の時点で13億3900万人と、中国の14億1000万人に次いで世界第2位。
そして、この人口規模に関しては2024年までに中国を追い抜いて世界最大になると予想されています。
さらに、今後高齢化が進んでいくと予想される中国と異なり、インドは世界で最も若者の人口が多い国であり、生産年齢人口(生産活動についている中核の労働力となる年齢の人口)も世界最大規模。
しかも人口増加に伴ってその生産年齢人口はさらに増え、合わせて国内の経済規模も拡大するため、経済成長の面では非常にポジティブな要因となっています。
一方で、インド国内の若者の30%以上は、就学・就労・職業訓練のいずれも行っていない、いわゆるニート(Neets)状態であるため、インド経済の潜在的な成長の足枷となってしまっています。
インド経済成長に関する特徴⑤ 改善されれば強い成長要因となる女性達
インドは今まで女性があまり経済活動に参加出来ていない状況が続いており、また、同じ経済活動における男性と女性間のギャップも大きな問題となっています。
しかし、世界経済フォーラムの世界男女格差レポートによると、健康や教育から、経済や政治への参加などにおいて、一定の改善が見られるとしています。
インド国内においては、女性教育の就学率などをもっと高めていく必要がありますが、この改善が続いていけば、将来的なインド経済の成長を底上げする要因になってくると考えられるのではないでしょうか。
インド経済の成長にとって追い風となる世界的な需要の高まり
インド経済に関しては国内的な要因だけでなく、世界的な需要の高まりが追い風になっているという側面もあります。
世界経済は危機を脱し、2016年の後半からは着実な需要の高まりを見せており、この流れは今後、加速する見込みであると考えられるわけですが、このことは、インドにとってもチャンスです。
インド経済の特徴として、他の多くの国の経済に比べて、国際的な貿易や資本移動への依存度が低かったことが、2008年から続いた世界経済危機を耐え凌ぐ上で有利に働き、他の国が停滞している間に、国内経済の力を底上げすることが可能になったと言えます。
そして、今後予想される世界経済の需要の高まりは、インドに対する需要をも伸ばしていくことになり、インド経済の成長をさらに後押ししていくことになるでしょう。
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インド経済の成長と今後に影響を与えるいくつかの特徴|世界最大規模の人口を抱える成長市場についてのまとめ
中期的にみると、インド経済は国内需要が堅調に推移する中、引き続き著しい成長を続けていくことが見込まれています。
一方で、下降リスクも引き続き存在します。
それは財政崩壊の可能性、財務の脆弱性を解消するための改革の遅れ、世界的な金融状況の予想以上の緊縮化の可能性などです。
しかし、そのようなリスクはあるものの、成長し続けるインド経済は今後も注視していくべできしょう。
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