発展途上国の問題を一覧として紹介してきます。多くの発展途上国が共通して抱える政治の腐敗や内戦など、12個の問題を簡単に見ていきましょう。
経済発展や開発水準が低い発展途上国には、あらゆる種類の問題が存在します。
そして、経済的にも制度的にも十分に発展していなからこそ多くの問題が生じてしまう一方、抱える問題のせいで国は発展しないという悪循環のジレンマに発展途上国は陥っています。
この記事では、多くの発展途上国に共通して存在する12の問題を簡単にまとめていこうかと思います。
発展途上国について基本的な知識を増やしたい人は参考にしてみてください。
発展途上国の多くが共通して抱える12の問題の一覧を確認していこう
発展途上国の問題1:飢餓と貧困
これは一人当たりの収入が少ない発展途上国にとっては当たり前の問題かもしれませんが、あえて見つめ直す必要がある問題です。
国の発展は健全な社会があるからこそ成し遂げられることを考えると、国民が皆、飢えること無く生活し、病気になった時は医療を受け、子供を学校へ通わせ、また時には余暇を楽しむことはとても大切です。
しかし残念ながら、発展途上国では多くの国民が飢餓や貧困に喘いでおり、経済の発展に欠かせない人的資源の効率性を低下させてしまっています。
発展途上国の問題2:汚職(政治的腐敗)
発展途上国の多くが共通して持つ問題の一つが汚職または政治的腐敗。
汚職問題は発展途上国において、長年、各国の発展を妨げる大きな要因の一つとなってきました。
縁故主義、犯罪行為、贈収賄などがあっては財源の効率的な利用は容易ではありません。
例えば、一見すると民主主義を唱えている国であっても、汚職にまみれた国では政治家が選挙に勝つために癒着した企業から莫大な受け取り、宣伝費用に使います。
そして、このような状況下で当選した政治家は通常、自身と資金提供者の保身が第一で、有権者を将来的な危機から守ることや国全体の発展などは二の次です。
そのため、国民の生活へ大きな影を落としていくことになります。
実際、国際的組織やNGOによって発表される汚職を測る指数では、常に発展途上国が上位を占めます。
この悪習は多くの発展途上国で当たり前のこととなっており、根深く解決が難しい問題なのです。
発展途上国の問題3:貧弱なガバナンス
ガバナンスとは、「国の安定や発展に向けて、その国の資源を国民の意識を反映出来る形で効率的に動員、配分、管理するための政府の機構制度や意思決定のあり方」など。
このガバナンスが正常に機能すれば良いものの、多くの発展途上国では政府によるガバナンスが不十分となってしまっている問題が存在します。
すると、海外からの投資を惹きつけられなくなるだけでなく、国民も政府に対して不信感を覚え、経済は停滞して国内は不安定になっていき、貧困につながる様々な問題が発生していくことになるのです。
また、貧弱なガバナンスと関連して、発展途上国では「法の支配」が確立・実行されていなことも多く、一般市民にとって不公平で危険な状態を作り上げています。
発展途上国の問題4:内戦
発展途上国の経済発展や国内の安定化を妨げる問題の一つとして、「内戦」も挙げることが出来るでしょう。
内戦とは、一つの国の内部で起こる武力衝突であり、歴史的に見てもその目的は常に「権力奪取」。
現在先進国となっている多くの国が内戦を避けてきた一方で、長期に渡って発展途上国として苦しんでいる国は、政治的野心のために内戦を利用してきた歴史を持つことがほとんどです。
この内戦が起こると国内は疲弊し、政治的な統治能力も一時的に失われ、国内が混乱したことで治安は悪化して経済状況も悪化します。
例えば、シリア内戦などは非常に分かりやすい例です。
そして、発展途上国の中でも特に貧しいアフリカの最貧国などで内戦が何度も繰り返されてきた歴史も、このことを物語っていると言えます。
発展途上国の問題5:民族・宗教問題
また、上の内戦に関連することとして、これら内戦が起きやすい国では、民族問題や宗教問題を抱えていることがほとんど。
例えば、シリア内戦ではイスラム教のスンニ派とシーア派の対立や、少数民族クルド人に関する問題などが入り混じって未曾有の内戦になってしまっています。
また、未だに後発発展途上国(開発途上国の中でも特に開発が遅れている国々)の状態から抜け出せない国が多いアフリカ大陸には、多様な民族が住んでおり、それが原因で内戦が勃発してしまうことが良くあります。
例えば、ソマリアやスーダン(※最終的には南スーダンが独立したが)が良い例でしょう。
一国の中に様々な民族が暮らしていることで、特定の民族が他を支配しようとして、または支配され続けた政治体制に反旗を翻そうとして内戦が起きます。
宗教や民族問題は多くの発展途上国を苦しめているのです。
発展途上国の問題6:基礎学力の欠如
質の良い教育は国の発展において非常に重要。
先進国は義務教育制度を導入することによって成長を遂げてきました。
また、義務教育を終了した中でも聡明な人間には、その後にも高度教育を提供する制度や枠組みを構築し、国を率いる有能なリーダー達を育成してきたのです。
しかし、発展途上国の一部では、未だに現代的な教育制度はまだ取り入れられておらず、多くの市民が先進国で言うところの義務教育さえも受けられない状態となっています。
また、国として教育に力を入れつつある発展途上国もありますが、そのような国々の中には未だに特定のカテゴリーに属する人々(例:女性など)が、平等に教育を受けられないという事実も存在します。
例えば、インドではカースト制度による差別は制度上で禁止されているものの、実際には未だに差別が横行しており、カースト制度上で最下層に属するシュードラの人や、アウトカースト(不可触民)と言われるダリットに属する人々に対して、十分な教育が与えられていない状況が存在します。
発展途上国の問題7:公衆衛生の欠如
発展途上国や後発発展途上国のほとんどは、アフリカやアジアに集中していますが、これらの国々の共通点の一つが公衆衛生の欠如。
それによって、病気が発生しやすく、感染病が発生するとパンデミック(感染症の全国的・世界的な大流行)が起こりやすい状況になっています。
例えば、2014年に西アフリカで起きたエボラ出血熱のパンデミックは記憶に新しいでしょう。
結果、病気に対して後手後手に回り、経済を立て直すことよりも病気の対処へ、多くの時間とお金が必要になる上、労働力が犠牲になり、国の発展が難しくなってしまうのです。
ここで一つインドと中国の比較例を挙げておきましょう。
1960年当時、インドと中国の平均寿命はそれぞれ41.74歳と43.725歳とそこまで大きな差はありませんでした。
しかし中国はその後、公衆衛生に対して大幅な予算の増額を決めて整備してきました。
その結果、2016年のインドの平均寿命は68.56歳なのに対して、中国の平均寿命は76.252歳と、その差は8歳近く開いてしまっています(参照:World Bank)。
発展途上国の問題8:インフラの不足
発展途上国が抱える共通の問題として、インフラの欠如があります。
これには、道路、鉄道、港湾、空港、灌漑設備などの経済的なインフラはもちろん、電力、水、住居、上下水道などの基本的なインフラの欠如も含まれます。
発展途上国の特に農村部では道路網が無く、電話などのコミュニケーション設備も欠如しているため、経済的に圧倒的に不利な状態へ置かれており、地域全体の発展をも妨げることになってしまっています。
また、基本的なインフラが欠如している場合は、人間としての尊厳もないような極貧状態に置かれ、その悪循環は世代を超えて繰り返していき、いつまでも貧困から抜け出せなくなってしまいます。
このようなことから、発展途上国が抱えるインフラの問題は、国全体の発展だけでなく、人々の生活水準を底上げするためにも解決するべきことなのです。
発展途上国の問題9:高い失業率
経済が貧しくて仕事もない発展途上国だからこそ、高い失業率と言うのはどこも共通して抱える問題。
そしてこの問題は、
- 内戦や政治的不安定によって海外企業が進出してこない
- 教育水準が低いため生活を支えるに十分な仕事にありつけない
- インフラが不足しているため仕事を見つけることすらも出来ない
- 民族・宗教的差別によって仕事が得られない
- 汚職によって公平な競争が起こらない
- 企業が育たないため雇用が増えない
- コネを持たない者は仕事を見つけるのが困難
など、これまで挙げてきた様々な問題が絡み合っています。
公共のサービスもない発展途上国で長期間失業状態が続けば、おのずと生活が成り立たなくなり、貧困へ突き落とされることになります。
発展途上国の問題10:海外からの援助への過度な依存
発展途上国の中には、「自国の発展の為には海外からの寄付や援助に頼らなければならない」と言う概念から未だに抜け出せていない国が存在します。
海外からの援助が必要な場合もありますが、最終的には自国の資産や資源を使って、自分たちで発展していけるようにならなければ、いつまでも外国に頼った貧しい国のままになってしまいます。
しかし、一部の発展途上国の指導者達は、自国の制度を改革したり国民を動かすよりも、手っ取り早い外国からの援助を求め、さらに酷い場合には、自らが潤うために援助の一部を着服したり関係機関に優先的に回すといったことを続けています。
発展途上国の問題11:起業家を生む構造基盤が十分でない
また、あまり触れられることはないかもしれませんが、「起業家を生み出す構造的な基盤が十分でない」という点も、多くの発展途上国に共通する問題かと思います。
国が発展するには政府も重要ですが、同時に民間から企業が生まれていかなくては、いつまでも経済が発展せず、国民の生活は苦しいままです。
しかし、多くの発展途上国は、
- 制度の未整備
- 道路の不足
- コミュニケーションインフラの不足
- 電話
- 高速インターネット回線 など
- 投資家の不足
- 国内に投資家が少ないだけでなく、政治的不安定な発展途上国の場合、海外の投資家から出資を募るも難しい
といった状況下にあり、現地の人間が豊かになるための経済活動を一向に始めることが出来ないジレンマが存在します。
発展途上国の問題12:安全な水へのアクセスが制限されている
水は人間の生命維持に欠かせない超基本的なもの。また、食料生産やその他の経済活動にとっても重要です。
しかし発展途上国によっては、安全な飲料水へすぐにアクセス出来ない多くの国民を抱えており、それが原因で下痢やコレラなどの病気に掛かって年間50万人が死亡していると言われます(参照:JICA)。
また、安全な飲料水へアクセス出来ない状況下で暮らしている人々は、全世界で8億4400万人いると言われ、そのほとんどが発展途上国で暮らしています(参照:World Vision)。
このような安全な水を飲めないという問題も、発展途上国の多くが共通して抱える問題なのです。
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発展途上国の問題一覧|政治の腐敗や内戦など後進国によくある12の問題のまとめ
発展途上国の多くは、触れてきた問題の多くを抱えています。
これらの問題が相互に絡み合い、経済の発展や社会の安定化が妨げられることとなり、いつまで経っても発展途上国のままとなっているのです。