世界三大宗教と世界最大宗教を見ていきます。日本で使われる「世界三大宗教」という概念と、人口規模を基にしたトップ10の宗教を確認し、共通点や違いなども見つけて比較してみましょう。
世界中には大小合わせると無数の宗教が存在していますが、中でも規模の大きな宗教は、全て南アジア、東アジア、中東地域に起源を持つのが特徴。
例えば、有名なキリスト教、イスラム教、仏教は上に挙げたいずれかの地域を起源に持ちます。
では、それら規模が大きな宗教の中でも、日本国内で言われる「世界三大宗教」や「人口規模を基にした世界最大宗教トップ10」にはどのような宗教が含まれるか知っていますか?
この記事では世界の宗教を知るためにも、「世界三大宗教」と「世界最大宗教トップ10」に焦点を当てて紹介していきたいと思います。
共通点や違いなども見つけて比較しながら確認してみましょう。
世界三大宗教とは?
まずは日本人にとって馴染みの深い「世界三大宗教」について。
「日本で言う」世界三大宗教とは、
- キリスト教
- イスラム教
- 仏教
の3つを指すもので、それぞれの信徒の人口数はおおよそ24億人、18億人、5億人。
一方、純粋な信徒の数だけで見た場合、ヒンドゥー教が11億人を抱えているため、5億人の仏教ではなく「キリスト教、イスラム教、ヒンドュー教」の3つが三大宗教になるはずです。
しかし、上述した際、かぎかっこ付きで強調したように、この世界三大宗教と言うのは、あくまでも日本人の間における概念で世界的には一般的でありません。
ヒンドゥー教は「信徒の大多数の地域がインドやネパールに限られている」こと、加えて「日本ではヒンドゥー教はあまり知られていない」ことから、日本では代わりに仏教を加えて世界三大宗教と呼ぶのです。
つまり、
- ①キリスト教(世界三大宗教)
- 信徒数:24億人
- ②イスラム教(世界三大宗教)
- 信徒数:18億人
- ヒンドゥー教
- 信徒数:11億人
- ③仏教(世界三大宗教)
- 信徒数:5億人
といった感じです。
人口数を基にした世界最大宗教トップ10!共通項や違いを比較してみよう!
一方で、世界では「世界最大宗教」として、その信徒の人口を基にしたトップ5やトップ10を挙げることが一般であるため、以下では信徒の人口数を基にした世界最大宗教トップ10を紹介していきたいと思います。
世界最大宗教トップ10:カオダイ教(人口約650万人)
カオダイ教は、ベトナムを起源に1926年に始まった新しい宗教で、ベトナムの国家主義的な思想も含まれているのが特徴。
この宗教の開祖は、ゴ・ヴァン・チェウ(Ngo Van Chieu)という元々は何の変哲も無かったと言われる人。
ゴ・ヴァン・チェウ降霊術を受けた際に、神から自らが『至高の存在』であると啓示を受けたことで開眼し、カオダイ教が始まったとされます。
一方、カオダイ教は、キリスト教、仏教、儒教、イスラム教、道教の五教を土台として、世界中の宗教から様々な要素を取り込んでいる宗教であり、正式な宗教名の「Ngô Minh Chiêu」を翻訳すると『三回目の人類救済への偉大な信仰』となり、東西の諸宗教をまとめて人類救済を目指すという大きな思想が根本に存在しています。
また信徒達は唯一の至高の存在、つまり「神」を信じ、同時に正義、愛、平和、寛容などの普遍的な概念を大変重視しています。
世界最大宗教トップ9:ムーソク(人口約1000万人)
ムーソク(巫俗)は「韓国のシャーマニズム」としても知られ、韓国の文化や歴史と深い関りを持った宗教。
その起源ははるか先史時代にまで遡るとされます。
近年韓国においてムーソクの復興が目覚ましく、また、全体主義の政治統治下にある北朝鮮国内でもおよそ16%の国民が、このムーソクを程度の差こそあれ信仰していると言われます。
このムーソクの重要な要素は、霊魂、精霊、神の存在で、これらは全て霊界に住んでいると考えており、その霊界の存在と人間との仲介を行うのが、主に女性が務める「ムーダン」と呼ばれる精神的なリーダー、言い換えればシャーマン的存在の人なのです。
(※戦前は地域によって男性のムーダンが多いこともあったとされる)
世界最大宗教トップ8:ユダヤ教(人口約1700万人)
ユダヤ教には、様々な物語を背景にした長い歴史があり、確認できる限り、紀元前8世紀頃まで歴史を遡ることが出来ます。
ユダヤ教は「一神教(ヤハウェが神)」の宗教で中東地域を起源とし、3つの「主流」と呼べる宗派からなります。
具体的には、
- 正統派ユダヤ教(オーソドックス)
- 保守派ユダヤ教(コンサバティブ)
- 改革派ユダヤ教(リフォーム)
の3つで、上から順に最も厳格な宗派からより寛容な宗派の順に並んでいます。
これらの3宗派は同じ信仰を基礎としていますが、それぞれ聖書に関する原理に異なった解釈を持っており、独自のしきたりを実践しています。
また、ユダヤ教においてはシナゴーグ(ユダヤ教の会堂)が信仰の中心として、また礼拝所として重要な役割を持っており、それぞれがラビ(宗教的指導者)によって統括されています。
加えてシナゴーグは信徒同志が交流を持つ為に、定期的に集まる機会を作ったり、祝賀の機会を用意したりなど、コミュニティーュニティーセンターの様な役割も持っています。
世界最大宗教トップ7:シーク教(人口約3000万人)
インドを発祥とするこの宗教は、導師(グル)ナーナクと、その10人の後継者の教えを基礎としている宗教で、16世紀に興ったことから比較的新しいと言えるもの。
シーク教はヒンドゥー教におけるカースト制度や、古来インドの宗教で行われることが多かった苦行などを否定。
一方で、世俗の仕事に対して真撃に励むことこそ良しとし、また、最終目標として輪廻転生を何度も繰り返した後にはムクティ(神との合一)を目指すというのが、仏教やヒンドュー教との大きな違いです。
そしてそのためにも、神を究極の導師として仰ぎ、世俗の生活でも修行していくことが素晴らしいとされます。
このシーク教徒の大多数はインド北部に分布しますが、長年にわたり多くの信者が、カナダ、米国、南アフリカ、オーストラリア、英国を含む、その他多くの国へ教徒移住しており、比較的多くの地域でその信徒を見ることが出来ます。
加えて、シーク教は歴史的に地方政治の場において重要な役割を果たし、また1947年のインド独立に際しても非常に大きな影響を与えました。
ちなみに、シーク教徒の男性はターバンを頭に巻いていることでも有名です。
世界最大宗教トップ6:道教(1億人弱)
道教は2000年程前に中国を発祥とする宗教で、有名な「陰陽」の思想などを基礎とする、超自然的で形而上学的な思考が特徴的な信仰。
一般的に道教の信徒は、思想的には自由主義者に近く、また、政治的な干渉や規制、他にも制裁などを嫌い、同時に謙虚であることを良しと考える人が多い傾向にあります。
加えて、健全な肉体と精神に関しての意識の高さから、道教の哲学に沿った生活を実践する者にとって食事は非常に重要な要素で、修練中は断食や動物性タンパク質を一切摂取しないような人もいるほどです。
また、道教は中国の武道である太極拳の根底を成す考えであり、その考えは有名な故ブルースリーが創設したジークンドーでも垣間見れます。
ちなみに道教は、中国や日本、韓国、ベトナムなどを中心に、現在では世界的に広く信徒を抱えているため、具体的な信徒の数が把握しきれていません。
一般的にその人口数は1億人未満だと言われますが、1億人を大幅に上回るという主張もあり、その場合は次に紹介する神道を上回り、世界最大宗教トップ5にランクインすると言えます。
世界最大宗教トップ5:神道 (人口約1億500万人)
神道は我々日本人にとっては文化や習慣にも深く結びついた宗教で、その起源は古事記が完成した8世紀よりもずっと以前に遡ると言われる日本古来の宗教。
神話、八百万の神、自然や自然現象などに基づく多神教で、開祖もいないとされるのが最大の特徴。
日本国内にはおよそ85,000の神社が登録されており、また、新年にそれら神社へ行って初詣をする行いはこの神道の行事に当たるため、知ってか知らずかおよそ80〜85%の日本人が神道に属すると言われています。
また、日本の象徴である天皇は、神道における最高神官で、その一つの仕事として「祈り」があります。
世界最大宗教トップ4:仏教(人口約5億人)
仏教はおよそ2,500年程前のインドを起源とし、ブッダとして知られるゴータマ・シッダールタを開祖とする宗教。
ヒンドゥー教における永遠に続く輪廻転生の考えに対して、「解脱」という教えを説き、この解脱によって迷いと苦しみの世界である輪廻から抜け出すことが出来るとしているのが特徴。
また、輪廻転生と解脱に加えて教義の中心には、
- 非暴力
- 道徳的・倫理的な行動
- 因果応報
- 物事の成立には原因と結果があるという考え
などが強調されており、心を落ち着かせて物事を正しく見るための瞑想法などは有名です。
また、仏教は、
- 上座部仏教(小乗仏教)
- 東南アジアを中心に広まった宗派
- 大乗仏教
- ユーラシア大陸の中央部から東部にかけて信仰されてきた宗派
の二つの主だった宗派に分かれ、日本へ伝来したものは基本的に大乗仏教の系統のものになります。
世界最大宗教トップ3:ヒンドゥー教(人口約18億人)
ヒンドゥー教(ヒンズー教)は人口の上では世界で三番目の規模を抱える宗教で、その信徒は主に南アジアの国々、インドやネパール、そしてインドネシアなどに居住しています。
特にインドとネパールではそれぞれ人口の約80%がヒンドゥー教徒であるとされ、その社会機構や人々の生活、そして考えなどにも大きく影響を与えている宗教です。
元々は紀元前15世紀から紀元前5世紀までに形作られていったバラモン教(古代ヒンドゥー教)が基になっており、頂点にバラモン(人間と神々の橋渡し的存在)を置く、4つの階級から成るカースト制度を基盤とするのが特徴。
また、因果応報や輪廻転生という概念の大元はバラモン教、つまりヒンドゥー教の源流にまで遡り、ヒンドゥー教では「現世の階級は前世の行いが原因である」と説明されます。
世界最大宗教トップ2:イスラム教(人口18億人)
イスラム教は7世紀頃に、中東のメッカにて預言者ムハンマドが神(アッラー)の啓示を受けたと主張したことから始まる宗教。
唯一神「アッラー」を崇め、また、他の宗教と異なり偶像崇拝が徹底的に排除されているのが特徴。
そのアっラーの教えは聖典「コーラン」に記されており、イスラム教徒(ムスリム)にとっては精神的な柱として、また、正しい行いへ導いてくれる道しるべとして重要です。
そして、イスラム教を信じるムスリムが取るべき信仰行為として、
- 信仰告白(シャハーダ)
- 礼拝(サラート)
- 喜捨(ザカート)
- 断食(サウム)
- 巡礼(ハッジ)
の五行(五柱)があり、「礼拝(メッカのカアバ神殿の方角を向いて1日に5回行う)」と「断食(一年に決まった月に世界中のムスリムが行う)」は一般的にも知られています。
また、イスラム教には2つの主流があり、それぞれは以下の通りです。
- スンニ派
- 世界中でおよそ80%のイスラム教徒が属する最大宗派
- シーア派
- 世界中でおよそ15%のイスラム教徒が属する宗派
この他にも少数派として、イバード派やアフマディーヤ派、その他の宗派も存在します。
さらに現在、イスラム教は世界中で最も急速に信者の絶対数を増やしている宗教です。
世界最大宗教トップ1:キリスト教(人口24億人)
キリスト教の起源は2千年以上前に遡り、その教義はイエス・キリストの教えを基礎とするもの。
ユダヤ教から枝分かれした宗教として、当初は非常につつましい存在だったものの、その後の歴史の中で世界中に信徒が増えることとなり、現在、世界最大の宗教にまで成長しています。
その特徴として、キリスト教では「神」の存在を信じ、また神の子とされる「イエス・キリスト」は、邪悪と地獄から人類を救うために送られた救世主(メシア)と信じられており、生まれた環境や民族に関係なく、
- 罪を悔う
- 信仰と行動を通してイエス・キリストを神、救い主として受け入れる
ことで個々人が救済されるという考えに基づいています。
またこのことが、ユダヤ人限定のユダヤ教に対してキリスト教が大きく規模を拡大していった一つの理由だと言えます。
ちなみにキリスト教の影響力は非常に大きく、特にキリスト教が主流派を占める国家では、社会の有り様や政策にさえも、その影響が見受けられます。
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世界三大宗教と世界最大宗教|人口規模を基にしたトップ10の共通点や違いを比較してみては?のまとめ
世界三大宗教と世界最大宗教トップ10について見てきました。
最後にちょっと興味深い共通点を一つ。
この世界最大宗教の大半は、アブラハム系の宗教(イスラム教、キリスト教、ユダヤ教、バハーイ教など:聖書の預言者アブラハムの宗教的伝統を受け継ぐと称する宗教群)と、インド系の宗教(ヒンズー教、仏教、シーク教、ジャイナ教など)に分かれます。
そのため、これら中東や南アジアを探っていくことは、世界の宗教を理解する上でも面白いかもしれません。