ロシアの大統領プーチンは、柔道の大ファンとして知られています。プーチンにとって柔道が持つ意味について考えていきながら、柔道の山下泰裕との関係も見ていきます。
2000年に初めてロシアの大統領へ就任後、2008年5月〜2012年5月までの首相期間を挟み、現在までロシアの大統領として君臨しているウラジーミル・プーチンは、事実上、ロシアの最高権力者であり、現代のロシア皇帝とさえ呼ばれる人物。
一方で、大の柔道好きであり、世界的にも有名な柔道家という側面も持っており、柔道がプーチンに与えた影響は実は計り知れないものがあるかもしれません。
そこで、プーチンと柔道というテーマで、プーチンにとって柔道はどのような存在なのかを考えていこうと思います。
また後半では、近代日本が誇る柔道家、山下泰裕さんとの友情や、プーチンの柔道好きが分かる動画も紹介しています。
まずは、どれほどプーチンが柔道に対して造詣深いのかを確認することから始めていきましょう。
柔道8段を持つプーチン大統領
近代ロシアの顔とも言っていいプーチン大統領は、柔道をこよなく愛する柔道家。
(出典:RUSSIAN REALITY)
例えば大統領に就任してからまだ日が浅いにも関わらず、2001年には、ナショナル・パブリック・ラジオ(National Public Raido:NPR)に対し、柔道は「哲学でもあり、その理念は相手を尊重し、敬意をもって接することの教えでもある。楽しみながら柔道に取り組んでおり、継続して練習に励むようにしている」と、その柔道愛についてコメントしています。
また、プーチンのモスクワにある別邸には、柔道の始祖である嘉納治五郎の銅像があると言われており、柔道に対する尊敬の念さえ伺い知れます。
さらに、2005年12月よりヨーロッパ柔道連盟の名誉会長を勤め、2008年からは国際柔道連盟の名誉会長の称号を与えられ、2012年にはロシア人として初めて8段を授与されており、柔道の精神や考え方を世界に広める柔道界における大使的な存在でもあるのです。
プーチンにとっての柔道
世界的にも数少ない柔道8段の段位を持つプーチン大統領。プーチンにとって柔道とはどのような存在なのでしょうか?
ここからはプーチンにとっての柔道という視点から、両者の関係を見ていきたいと思います。
プーチン外交においては武器ともなる柔道
2012年6月、ウラジミール・プーチン大統領は、メキシコで開催されたG20サミットに合わせて行われた、当時のイギリス首相デーヴィッド・キャメロンとの会談後に、翌月からロンドンで開催が予定されている夏季オリンピックを訪問し、競技の観戦を検討している意向を伝えました。
実はこれ、当時としては非常に驚くアナウンスだったんです。
というのも当時、特に2006年ロンドンにてKGBの元職員であったアレクサンドル・リトビネンコ氏が殺害された事件が起きてからは、二国の間には緊張した関係が続いていたから。
そんな時、プーチン大統領の報道官、ドミトリー・ペスコフ氏がプーチンのイギリス訪問に関して発表し、また、柔道競技の観戦のためにも、プーチンがオリンピック(ロンドンオリンピック)訪問を検討している旨を明らかにします。
自身も黒帯を持つ柔道家プーチンとしての顔を考えると、本音はどうであれ「柔道を観戦したいからイギリスを訪問する」と言うのは非常に自然な口実であり、二国間の緊張状態の中で、プーチンのイギリス訪問を自然と受け入れる世論が作られ、実際の訪問が実現することになったのです。
このように、プーチンにとって柔道と言うのは、外交上の武器として価値があると言えるかもしれません。
例えば他にも2003年、長引く二国間の北方領土問題を協議するため、公式に日本を訪れた際には、柔道の総本山である講道館にて道着姿で技を披露し、日本人との融和ムードをアピールしていたりします。
柔道はプーチンにとってはスポーツ以上の存在
柔道はプーチン大統領にとって、スポーツ以上の存在であるようです。
まず興味深いのが、プーチンが柔道を始めた理由。
プーチンは幼い頃から小説や英語に出てくるスパイに憧れていたと有名ですが、当時ソ連の秘密諜報機関であったKGB(ソ連国家保安委員会)に入るためには、格闘技を身につけるた方が良いと考えた結果、始めたのが柔道だと言われています。
つまり、プーチンにとって柔道というのは、現在の大統領にまで繋がるキャリアの礎となったことの一つだと言えるのかもしれません。
そして、「強い大統領」として自らをブランディングするために、柔道家としての一面を常に表に出している点も忘れてはなりません。
プーチン大統領は、マッチョで強いイメージを高めるため、バイカル湖でのダイビング、上半身を露出してのフィッシング、麻酔銃で虎をしとめる姿、柔道着を来て技を決める姿などを公開してきました。
これは、特に「強い指導者」や「頼れる指導者」として、「プーチンこそが西側諸国に負けないロシアを引っ張っていける指導者である」というイメージを作り、国内の支持基盤を整え、ロシア最大の権力の座に長期で居座り続けるにはとても役立っていると思います。
ちなみに、その強い指導者としてのイメージもあってか、過去にはA Man Like Putinというプーチンの男らしさを賛美する歌も出ています。
柔道が政界におけるプーチンの仕事ぶりに反映されている?
相手の技からの素早い回避、相手の力を利用して相手を制す術、忍耐と容赦なさを合わせもつなどの柔道の教えを、プーチンは政界でのキャリアに反映しているといっても過言ではないかもしれません。
例えば、プーチン政権に反対する大規模なデモンストレーションが2012年に起きた時、プーチンは反対勢力によるデモを意図的に見逃し、力尽きるまで対応を見送っていたと言われています。
結果、エネルギーを使い果たした反対勢力は、その後半年にわたって、活動方針や方向性、リーダーシップなどを明確にすることが出来ず、まとまった活動も上手くいかず、大きくつまずくことになります。
プーチンは数ある柔道の技の中でも、相手を腰に乗せて脚で払いあげて投げる「払い腰」が得意技であることが知られていますが、払い腰は投げる前に相手が横に動いて技から逃げるのを防ぐ動きから生まれた技。
2012年の大規模デモに対して見せたプーチンの行動は、まさに、相手が八方塞がりになって逃げられないようにした、柔道仕込みの作戦だったのかもしれません。
プーチン大統領と柔道の山下泰裕
見てきたように、プーチンにとって柔道は、ただのスポーツを超えた存在とも言えるとても大事なものであることは確かですが、日本の柔道家である山下泰裕さんとの仲も有名です。
山下泰裕とは?
「柔道の山下」と言えば知っている人もいるであろう山下泰裕さんは、ロサンゼルスオリンピック無差別級で金メダルを獲得しており、外国人選手には負けたことがないという、近代柔道の伝説的存在で、全日本柔道のコーチ、国際柔道連盟理事、日本オリンピック委員会理事などの経歴を持つ人物。
昔は丸大食品のハムやソーセージのCMなどに起用されていたので、当時のCMを覚えている人も多いかもしれません。
プーチンと山下泰裕との仲
1999年、山下さんの友人であるウラジミール・シェスタコフから、「ウラジミール・プーチン氏に柔道着をプレゼントして欲しい」と手紙が送られてきます。
そして、山下さんはこのお願いを快諾。
しかし、山下さん自身はこの「ウラジミール・プーチン」が、あのプーチンだとは想像していなかったようです。
ともかく、山下さんからプーチンへ柔道着をプレゼントする形になったのが、両者の出会いのきっかけとなり、現在も続く友情へと発展していきます。
また、山下さんご本人は否定されていますが、日本とロシアの外交において山下さんは「キーマン」と考えられることもあるそう。
例えば、ウクライナ南部のクリミア半島をロシアが実行支配して一方的にロシア側へ併合した際、ロシアの行動に反対するように経済制裁を決めた欧米側に日本が回った結果、プーチンの安倍首相に対する心情は悪化してしまいます。
そんな時でも、プーチンは山下さんに対して「あなたが日露関係に加わることは非常にいいことだ」と笑顔で親指を立てて話されるなど、山下さんは自然な流れでプーチンと日本側の政治的な架け橋としての役割も担ってしまっています。
ちなみに、ロシアと日本という距離にも関わらず、山下さんはプーチンと20回以上会ってることは間違いないと言っており、プーチンと山下さんの親密な仲が伺い知れます(参照:産経ニュース)。
プーチンの柔道動画
最後にプーチンの柔道愛が分かる動画をいくつか掲載しておきます。
プーチンの柔道動画①
プーチン主導で作られた柔道の動画。プーチンが好きな柔道の動きがたくさん紹介されており、それぞれの技を学べるようになっています。
プーチンの柔道動画②
ロシアのソチで行われたロシアの柔道代表チームのトレーニングへ、プーチンが参加した時の動画。
後半では女子選手と乱取りをやっているプーチンが見れます。
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プーチンと柔道の影響力|山下泰裕との友情や段位に関しても見てみようのまとめ
プーチンにとっての柔道という視点で、両者の関係を探ってきました。
柔道に出会っていなかったとしたら、今のカリスマを持ったプーチンは存在しておらず、またプーチン政権も短命で終わっていたかもしれません。
柔道がプーチンに与えた影響は、とてもつもなく強大なのかもしれません!
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