サウジアラビアの石油について見ていきます。埋蔵量から産油量、他にも今後の展望に見通しに加えて、石油王に関しても簡単に議論していきます。
石油大国といったらサウジアラビア。
石油大国としての存在感を発揮しながら、国際政治やビジネスの舞台でも影響力を持つ中東の国です。
そのサウジアラビアの石油について確認してみましょう。
公表されている原油埋蔵量や生産量を始め、石油大国としての戦略を考えた場合に思う埋蔵量や生産量データの信ぴょう性、そして、サウジアラビアの石油王とは誰なのかまでを見ていきます。
サウジアラビアと石油(原油)生産量
サウジアラビアの原油埋蔵量
サウジアラビアは石油大国の名に恥じることなく、原油確認埋蔵量は世界第2位の推定約2,700億バレルを誇ります。
これは、サウジアラビアとクウェートの間の中立地帯に埋蔵されている、25億バレルの原油(中立地帯には50億バレル以上の原油があるとされ、この場合は両国が権利を分け合う)を含む数字です。
また、サウジアラビアの原油は、限られた大規模油田に存在していたり、埋蔵されている場所が主に東部州であるという特徴があります。
石油大国としてのイメージが強いサウジアラビアの所以
一般的に、サウジアラビアは世界最大の石油大国というイメージがありますが、これは、2011年1月にベネズエラの原油確認埋蔵量がおよそ3000億バレルに増加したと発表されるまで、サウジアラビアの原油確認埋蔵量は世界1位だったから。
とは言え、現在でもサウジアラビアの原油埋蔵量は世界中の原油確認埋蔵量全体の約5分の1を占めるとされるため、世界でも稀に見る石油大国であることは代わりありません。
さらに、2000年に行われた米国地質調査所(the US Geological Survey)の評価によると、サウジアラビアにおける未発見の原油は、推定でまだ900億バレル近いともされているため、今後新たな原油が確認されれば、再び原油埋蔵量において世界一に躍りでる可能性も十分に持っています。
サウジアラビアと石油(原油)生産
石油のスイングプロデューサーとして機能するサウジアラビア
サウジアラビアは昔から世界で最も重要な、石油のスイング・プロデューサー(需要の変化に応じて原油生産を増減させ、価格の安定を図るために調整役を担う産油国)と認識されている国。
スイング・プロデューサーとして安定した価格を保つために、サウジアラビア政府は石油の生産量を調整しており、その結果、国際ビジネスや外交の面で特別な存在感を持っているのです。
サウジアラビアの原油(石油)生産量
サウジアラビアの原油(石油)生産量は、1980年には日量1,030万バレル、2006年には日量1,060万バレルを記録、そして、2009年までには日量約1250万バレルへ引き上げるという計画が発表されます。
計画が発表されてからすぐにその目標に達することはなかったものの、2016年には日量1234.9万バレルを達成(出典:外務省)。
2017年には前年より多少下がったものの、日量1195.1万バレルの水準を維持しており、アメリカに次いで2番目に大きな原油生産量を誇っています(参照:BP Statistical Review of World Energy, 2018)。
アメリカは2016年に日量1236.6万バレル、2017年に日量1305.7万バレルを記録。サウジアラビアに次いで原油生産量が多いのはロシアで、それぞれ日量1126.9万バレルと1125.7万バレル。
サウジアラビアの原油生産量に対する懸念と実際の状況
サウジアラビアは過去何十年も、石油大国として大量の原油を生産しているため、その原油生産の持続性に対して懸念の声が上がることもしばしば起きています。
例えば、2008年1月、当時のアメリカ大統領、ジョージ・W・ブッシュがサウジアラビアを訪問した際、原油生産量の増産を要請しましたがサウジアラビアはそれを拒否。
対してブッシュ大統領は「サウジアラビアには、もはや石油を増産する能力はないのか?」と問いただします。
そしてその年の8月、サウジアラビアは日量50万バレルの原油生産を追加する計画を発表。
しかし、専門家の中にも「サウジアラビアの石油生産は2008年時点ですでにピークに達しているか、もしくは近い将来にピークを迎える」と考える人がおり、実際、多くの人がサウジアラビアの原油生産能力とその持続性に懸念を覚えたのです。
一方でサウジアラビア側は2015年4月、アリ・アル・ヌアイミ石油鉱物資源相(当時)を通して、「2015年3月のサウジアラビアの石油生産量は日量1030万バレルで、これは1980年代前半以降最大の量であり、その前の生産ピークは2013年8月で日量1020万バレルである。」と述べます。
そして、先述した通り、直近では2016年に日量1250万バレルに近づいたことからも分かる通り、サウジアラアは原油生産能力の懸念を払拭するかのように、その生産量を伸ばしています。
石油大国としての立場から考えたサウジアラビアの原油生産量や埋蔵量に関する信ぴょう性
サウジアラビアは埋蔵量や生産量が非常に大きく、結果、石油大国として国際政治の舞台でも戦略的にその影響力を発揮することが出来る国。
そのため、サウジアラビアの経済が原油に依存している限りは、その影響力を維持するためにも、原油の埋蔵量や生産量を大きく維持し続けることが重要になってきます。
一方、1982年以降、サウジアラビアは石油埋蔵量についての詳細なデータを公表してこなかったため、外部の専門家たちにとって、サウジアラビアが発表している埋蔵量や産出量が、正確であるかどうかを検証することが難しい状況が作られています。
これはつまり、石油大国として大きな影響力を維持したい意思がサウジアラビアにあるのであれば好都合と言える状況です。
また、そのことが原因でサウジアラビアの油田の現状に関しては常に疑問を抱く人が存在するのも確かです。
ウィキリークス(WikiLeaks)事件によって暴露されたサウジアラビアの石油に関する情報
2010年11月28日を境に、ウィキリークス(WikiLeaks)でアメリカ合衆国の機密文書が次々と公開される「アメリカ外交公電ウィキリークス事件」が起こります。
そして、このアメリカ外交公電ウィキリークス事件の中で2011年、サウジアラビアの(国営)石油独占企業であるサウジアラムコの元油田開発・生産責任者、サダド・イブラヒム・アル・フセイニがアメリカに対して、「サウジアラビアが公表している確認埋蔵量は、40%も過大報告されている可能性がある」と触れたことが暴露されています。
サウジアラビアの石油についての疑問は完全には払拭出来ない
石油大国という立場を戦略的に使いたいとサウジアラビアが考えているのであれば、上述したような状況から、もしかしたらサウジアラビアの原油埋蔵量や産出量は異なってくる可能性も完全には否定出来ない可能性があると言えるのではないでしょうか。
サウジアラビアの石油王って?
「サウジアラビアは石油大国だから石油王がいるはず!」と思う人もいるかもしれません。
そこで、サウジアラビアの石油王と言える人とはどのような人物なのか、ここで簡単に議論してみたいと思います。
まず、サウジアラビアには、世界で最大の保有原油埋蔵量、原油生産量、そして原油輸出量を誇る「サウジアラムコ」という会社があるわけなんですが、世界No1ということは、このサウジアラムコのオーナー=サウジアラビアの石油王と考えて問題ないはずです。
サウジアラムコは国有企業
そして、サウジアラムコはサウジアラビアが国として所有する国有企業。
つまり、オーナーはサウジアラビア自体というわけ。
一方で、サウジアラビアは日本のような民主国家ではなく、サウード家を国王に戴く、絶対君主制の国家です。
(5リアルの紙面に描かれるサルマーン国王)
よって、サウジアラムコのオーナーであるサウジアラビアの頂点に立つサウジアラビアの現国王こそが、サウジアラビアの石油王と言って問題ないはず。
よって、現在の国王である「サルマーン・ビン・アブドゥルアズィーズ」が、サウジアラビアの石油王だと言えそうです。
「ムハンマド・ビン・サルマーン」が実質的にはサウジアラビアの石油王なのではないか?
しかし、2018年現在、サルマーン国王の息子であるムハンマド・ビン・サルマーン皇太子が王位継承者として指名されており、サウジアラビアは実質的にサルマーン皇太子によって仕切られているという状況になっています。
また、サウジアラムコが管轄下として置かれている経済開発評議会には、その経済開発評議会議長としてムハンマド皇太子が就任しています。
よって、表向きにはサルマーン国王がサウジアラビアの石油王であることは間違いないですが、実質的にはムハンマド・ビン・サルマーン皇太子がサウジアラビアの石油王であると言った方が正しいのかもしれません。
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